いちょう並木と潰れたぎんなんの話

小学校から大学までずっと、通学路にいちょう並木があった。

だから毎年この時期は、ぎんなんを拾う近所のおばさまを尻目に、登下校を繰り返した。

ぎんなんの実を踏まないように、踏まないように。

潰しでもしたら、家までずっとぎんなんの匂いを付けて帰ることになる。

ぎんなんは臭いと言うけれど、そんなこんなで16年間いちょう並木を往復し続けた私からすると、潰れたぎんなんの匂いは秋の香り。

金木犀よりもずっと秋を感じさせる。

赤や茶やオレンジに色づき始めた山々を見て、ここにはいちょう並木がないなと、寂しくなった。

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