見出し画像

【Bistrot du Maquis】毎晩ここでいい

今宵はBistrot du Maquisへ。
https://www.bistrotdumaquis.com/

モンマルトルのミシュラン掲載店。
一度目の訪問でうっとり魅了された話はすでに書いた。

初めて訪れて気に入った店に二回目に行くときは緊張する。
二度目はそれほどおいしくないことも珍しくない。
「恋」は気のせいかもしれない。
興覚めしたらどうしよう。
ついつい、そんな思いがよぎる。

しかし今日はそういう心配はない。
すでに確信している。
この店は本物だ。

予約した通り19:30に入店。
中国出身の女性が出迎えてくれる。
オーナーシェフの奥様Shuquinさんだ。
顔を覚えてくれていたのだろう、小さな笑顔をくれる。
そんなささやかな交流に心が和む。

奥様の友人らしきあの中国人男性もいる。
働き始めて間もないのだろう、前回行ったときはワインを注ぐのもおっかなびっくりだった。
その彼が、今宵はすっかり堂々としている。
店の成熟を感じて、ひとり嬉しくなる。

黒板に書かれたメニューが運ばれてくる。
前回はこの黒板をiPadで撮影してiPadごと運ばれてきたのだが、今回は黒板そのものだ。

メニューは前回と比べて半分くらい入れ替わっている感じだろうか。

前菜は帆立のブルターニュ風を注文する。

この季節、パリのビストロはとにかく帆立・ほたて・ホタテ。
少々飽きてきたのだが、信頼するMaquisの帆立料理を食べてみたい。

ブルターニュ風というのがどういうものなのかわからなかったが、運ばれてきたものには見覚えがある。

帆立にホワイトソースをかけて、チーズをふってグラタン風に焼き上げたもの。
フレンチではよくみるやつだ。

キノコがたっぷり。
春雨のようなものも入っていた。まさかフカヒレではなかろう。

子どもの頃に母親がよく作ってくれた料理だ。
そういう麗しい記憶を思い出させてくれる優しい味。
気取らず気負わず、ただおいしさを純粋に追求した料理。
この店の料理には、そういう一貫性がある。

メインには仔羊を注文する。
仔羊も、他の店で何回か食べたけれど、この店の味を知りたい。
仔牛もあるようだけれど、仔牛はおいしいに決まっている。
少しクセの強い仔羊をどのように調理するのかを味わってみたい。
ああ、なんて贅沢な賭けだろうか。
いや、賭けではない。
成功が約束されているのだから。

最上級の料理には共通点がある。
穏やか。
マイルド。
奇をてらわず、味覚のど真ん中を射抜いてくる。
嫌な味が一切なくて、ハンモックに揺られているような、絶対的な安心感のなかで時間が過ぎる。

この皿もまさにそういう味。

付け合わせはこちら。
最初おからかと思ったけれど、おからのはずはなかろう。
クスクスの一種だと思われる。

夢中になってパクパク食べてしまい、感慨に浸る間もなくペロリと平らげてしまった。

今日は欲張ってデザートまで頼もう。
マンゴーとマスカルポーネ。

おいしかったけれど、冷蔵庫から出したての冷たさ。
僕のためにいま作ってくれた、という感じがするものではなかったけれど、贅沢を言ってはいけない。

なにせ前菜、メイン、デザートで42ユーロ(ドリンクは別)。
こんなにおいしい料理が5,000円強で食べられることの幸せをかみしめる。

料理の値段は食材の値段に左右される。
おいしいかどうかと価格とは、基本的には連動しない。
高い店がおいしいとは限らないし、超高級店でなくてもおいしい店はある。
「料理人の腕」に値段がつかないのは、不条理でもあるなと思った。

ともあれ、Bistrot du Maquisのシェフ André Le Lettyの腕は最上だ。







この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?