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おバイク一人旅~福島→秋田(1日目)2019.7.29

2019年の7月、突然、ぽんっと数日の時間が空いた。
まるで神様に、旅に出ておいで、と言われているかのように。
それならお言葉に甘えましょうと、以前から行ってみたかった秋田県へ、愛機と旅に出ることにした。
本当は数日をかけて、秋田全体を回りたかったけれど、経済的理由とペットの世話の都合で、どう考えても2泊3日が限度。そのため、今回は男鹿半島をメインに、ルートを考えようと決めた。
距離を考えると、男鹿半島は2日目に回ることとして、初日は一気に秋田市まで入ってしまうのがベストだ。でも、移動だけでは寂しいので、田沢湖に寄り道をすることにした。

出発の朝は薄曇り。
磐越道から郡山ジャンクションで東北道に出て、岩手県の盛岡インターまで北上したのだが、夏が始まった高速道路は、息苦しくなるほど暑かった!
しかし、メッシュジャケットの下に着た、冷感インナーの優秀さのおかげか、30℃超えの気温の中を走るうちに、暑さがだんだん楽しくなってきた。私はマラソンの経験はないが、ランナーズハイとはこんな感じなのだろうと思いつつ、脱水だけは起こさないよう、こまめに休憩を取りながら走り続けた。
岩手県内の東北道には、最高速度120kmの区間があり、普段は高速道路を時速100km程度で走る私も、試しに120kmまで出してみた。道路の段差やひびをタイヤが拾ってしまったり、何度もトラックを追い越さなければならなかったり、快適とまでは思えなかったけれど。
その後、紫波(しわ)サービスエリアで、美味しいと聞いていた塩チーズソフトクリームを堪能し(噂に違わずの美味!)、熱中症を起こすこともなく、無事に盛岡インターで高速を下りた。今度は、秋田街道と呼ばれる、R46で進路を西に変え、田沢湖を目指す。
途中、道の駅雫石あねっこに立ち寄り、昼食のカレーを食べつつ、長めの休憩。その頃には、暑さはかなり和らいでいたが、代わりに曇り空の灰色が強くなっていた。
R46は、山間を走る国道なので、緑濃いその景色は、非日常を強く感じさせてくれる。工事による片側交互通行に、快適さを削がれる場所もあったが、旅に出たという実感を楽しみながら、田沢湖に到着した。

田沢湖の第一印象は「なんて不思議な色!」だった。
湖面全体は、それまで見たことがなかったような瑠璃色をたたえ、陸との境目は淡い緑のグラデーションで彩られている。雲の隙間から差し込む光が、そよ風に波打つ湖面を、弾くようにきらきらと輝かせる光景は、見入ってしまう程の美しさだ。
平日のせいか、田沢湖を囲むように続く湖畔の道には、ほとんど車通りがなく、美しい景色を独り占めしながら走るのは、本当に本当に気持ちが良かった。
うーん、秋田はいい選択だったな、田沢湖を外さなかったのは、我ながら上出来だわ。そんなことを思いながら、田沢湖ブルーを思う存分満喫することができた。

しかし。
快適なツーリングは、ここまでだった。

有名な金色のたつこ像に挨拶をして、田沢湖を離れると、曇り空はどんどん、機嫌の悪い色に変わっていった。
おまけに、私は山道で迷子になってしまったのだ。
仕方なく、ヘルメットに取り付けたインカム(通信機のようなもの)とスマホをBluetoothでつなぎ、ナビの音声を聞こえるようにして、宿を取った秋田市を目的地にセットした。
そして、トラックだらけの道を走っていると、今度は突然の土砂降りが!
シートバッグの中にカッパは入っていたが、それを取り出す暇もなく、あっという間にずぶ濡れになってしまった。もう、そうなったらどうしようもない。濡れて行くだけのことだ。
もともと重度の方向音痴の私は、かなり迷子慣れをしているのだが、知らない山道でトラックに囲まれ、雨の中を走るという状況には、心を折られそうだった。
けれど、行くしかない。
これが旅、これぞ旅。私は長距離ライダーだ、なんてったって女は度胸!
そう自分に言い聞かせ、また、奮い立たせながら走り続け、なんとか目指す秋田市に着いた時は、街の風景と車の多さが嬉しく、気が緩みそうになった。
これは危ない、絶対事故るな油断するなと、また自分に喝を入れ、無事、宿にたどり着くことができた。

その日の宿はユースホステルだったので、屋根付きの駐輪場などはないのだが、警備員さんが私のバイクを見て、雨の当たらない軒下に停めさせてくれた。
夕飯は外に出ようと思い、あえて宿を素泊まりにしたのだが、チェックインをして部屋に入ると、湿った服で外食に行くのが嫌になり、コンビニのお弁当で済ませてしまった。
食後、大浴場の広い湯船に浸かった途端、たちまち疲れと眠気が襲ってきた。明日は男鹿半島に行くんだな、と考えたことは覚えているけれど、大浴場から部屋に戻り、ベッドに潜り込んだことは、まったく記憶にない。それほど、あっという間に眠りに落ちていた。

2日目(前半)はこちら


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