ピンチをチャンスにを超えて、ピンチをエンタメにして超えたV6

【四半世紀のアイドルファンが想うこと★V6★ vol.60】


人生、いいこともあればピンチも来る。
学生ならテスト範囲を間違えて勉強したり、会社なら肝心な連絡を漏らしていたり。
ピンチをチャンスに、とはよく言うが、ピンチにはどう対応したらよいのだろうか。



V6には、ファンから見て特大級のピンチはなかったが、メンバーのケガ、特に骨折はしばしばあった。
メンバー全員がバック転ができるアクロバティックなグループだから、メンバーも注意しているだろうが、芸歴が長いと起こってしまうことでもあった。

アイドルは、骨折があったからといって、ゆっくり休んではいられない。
それに、魅せる仕事だ。暗いところを表に出せない。


ではどうしたか。ピンチをチャンスにとはよく言うが、それどころか、彼らはピンチをエンタメにしてしまった。


坂本くんは、1997年に舞台で骨折したことがある。そのためその時分は普通に踊ることができなかった。
その時ちょうど、テレビの「ミュージックステーション」、そしてV6のコンサートが控えていた。

「ミュージックステーション」では、踊れない坂本くんには椅子に座ってもらって、その坂本くんを真ん中にして、周りを他の5人のメンバーが踊った。
坂本くんは座りながら笑顔で歌う。そして周りのメンバーも、坂本くんを中心にして笑顔で踊って坂本くんをもり立てていた。
ああ何という仲の良さ。


コンサートでは、ジャニーズはアリーナクラスの箱を使う上、コンサート中には衣装もいくつも替える。他のメンバーは衣装替えの場所に移動できるが、坂本くんはそうは動けない。
そこで、ステージの中央に、坂本ドームなるものが置かれた。一人用の小さなキャンプテントみたいな感じだ。もちろん中は見えないが、ドーム自体はファンから丸見え。坂本くんはそこで次の曲の準備をする。
私もその節のコンサートを見に行ったが、ステージ上にちょこんとある坂本ドームを可愛らしくて、不謹慎だがめったに見られない光景がまた楽しかった。そのドームから出たり入ったりしていじらしく頑張ってる坂本くんに、むしろファンは愛すべき眼差しを送って盛り上がっていた。
おかげで、数あるコンサートの中でも懐かしコンサートで、今でもすぐに思い出すことができる。



人の怪我を楽しんではいけないのだろうが、こうやって、V6は見事に坂本くんの骨折というピンチを、見せ方を工夫して、ファンを楽しませるエンタメに昇華したのである。


企業については、ピンチをエンタメにと言ったら怒られる向きもあるかもしれない。
でも、大阪府にある「太陽パーツ株式会社」では、失敗した社員を表彰する「大失敗賞」なるものがある。"太陽パーツ""大失敗賞"で検索するとたくさん出てくるが、かつて年間利益が吹っ飛ぶくらいの失敗をした社員の方がいて、社内が暗くなった。その時、経営者の方がこのままではいけないということで、その社員に「大失敗賞」を上げて盛り上げた。すると、社内も明るくなり、失敗した社員の方は、ようし頑張るぞ、とその後の仕事で大きな成功を収めたとのことだ。
これは、大失敗賞によるピンチのエンタメ化だ。



V6は芸能界、太陽パーツさんは会社で一見違うようだが、どちらもピンチを見える化する(可視化する)というのでは共通だ。

V6は、坂本くんの骨折をファンにわからないようにこっそり治させるのではなく、歌番組でもコンサートでも見せてしまって、むしろ演出の一つとした。ある意味極限の開き直りかもしれないが、それがかえってグループの仲の良さを引き立てたり、珍しい経験としてファンの心に残ったりしている。

太陽パーツさんも、ピンチを大失敗賞で本人のみならず全社員に見える化して、全社員に問題意識を共有することができた。


ピンチをチャンスにとはよく言うが、それは、ピンチで倒れたままではダメだよ、立ち上がろうねということだと思う。
ピンチをエンタメにするというのは、それを超えて、元気とイマジネーションが溢れ出す状況を作り出すことなんだろうな。

コロナで、エンタメは生活に必要じゃないとか言われているが、人間は狩猟採取の時から歌って踊ってきた。エンタメがなければ人間は長生きできないだろう。
ピンチにすら、エンタメが人間に与えるパワーは大きい。

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