見出し画像

「必要な介護が見える」介護教育アプリの社会実装に向けた活動

私、青木吾郎(通称:ごろべぇ)は、東北大学ロボティクス専攻の博士課程に在籍しています。医療福祉分野への貢献を目指し、Mixed Reality(MR)技術を用いた介護教育システムの研究開発および事業化に取り組んでいます。MR技術では、現実空間に3D CGを重ねることであたかもそこに存在しているかのようにみせることができます。私たちが研究開発しているシステムでは、介護初心者がゴーグル型デバイスを装着し、現実の空間に重ねられたCGアニメーションを通じて、適切な介護手順を学びます。本記事では、介護教育アプリの社会実装に向けた取り組みを紹介します。

こちらは私たちが開発しているシステムの概要です。このシステムでは、介護者がMixed Reality(MR)デバイス、すなわち現実世界とデジタル情報が融合した映像を映し出す特別なゴーグルを装着します。MRデバイスを使用することで、介護者は被介護者の実際の姿の上にコンピュータ生成のアニメーションを重ねて表示させることができます。このアニメーションは、理想的な介護動作を示しており、介護者は実際の環境で適切な介護方法を直感的に学ぶことができます。

介護教育アプリの研究を始めたきっかけ

私は15歳で明石高専に進学して以来、技術開発に取り組んできました。高専入学時から技術を通じて社会貢献したいと強く考えていました。また、医療福祉分野で活躍する友人たちの姿に触れて、「医療福祉分野に貢献したい」という思いを強くしました。

現在私が所属する研究室では、先生方は介護現場で実際に役立てられるシステムの研究開発を行うために、多くの医療福祉分野の方々と議論を行っています。その活動や情熱に惹かれて、私は介護支援システムの研究に取り組むことを決めました。

私も研究開発を進める中で、介護現場で働く方々へのヒアリングを重ねてきました。そこで感じたのは、介護関係者の方々が抱く「利用者さんにとって、よりよい介護を実現したい」という強い思いです。

ありがたいことに、ヒアリングを行う中で、「介護教育システムを実際の現場で活用したい」とお声がけを頂くこともありました。その声をきっかけに、「何とかして、介護教育システムを社会実装し、医療福祉分野の方々に貢献したい」と決意し、事業化に向けた活動を始めました。

東北大学ビジネスアイデアコンテスト 優秀賞

事業化活動を始める決心をしましたが、始めるにあたって何から手を付けていいかわからない状態でした。そこで、東北大学スタートアップ事業化センターの方々にご相談したところ、「東北大学ビジネスアイデアコンテストに挑戦してみてはどうか」とご提案を頂きました。このご提案をきっかけに、医療福祉分野の研究を行う学生たちとチームを結成し、コンテストへの出場を決意しました。

ビジネスアイデアコンテストへの準備では、ヒアリングによるニーズの深掘り、市場調査、ビジネスモデルの作成など、研究室では触れることのなかったビジネスの側面に挑戦しました。未経験の領域でしたが、チームメンバーと共に様々な課題に取り組みました。私たちは、ヒアリング結果を基に何度も資料の推敲を重ね、発表練習を繰り返しました。

コンテスト当日、学会とは全く異なる雰囲気の中でのプレゼンテーションには大きな緊張を感じましたが、覚悟を決めて舞台に立ちました。そして、私たちの努力が実を結び、優秀賞を受賞することができました。自分たちの取り組みが形となって認められたことに、大きな喜びを感じました。

ビジネスアイデアコンテストに向けて行ったヒアリングの中で、私たちはシステムのデモンストレーションも同時に実施しました。このデモンストレーションでは、参加者にMRデバイスを実際に装着してもらい、その使用感を体験していただきました。ここで得たシステムに関するフィードバックから、介護現場で求められる介護教育システムについての理解が深まりました。この貴重な体験は、今後の研究開発に非常に重要な参考資料となりました。そして何より、この経験が私たちの研究開発へのモチベーションを大きく高めることとなりました。

チームメンバーと共に、優秀賞を授与して頂いている様子です!

国際学会(SII 2023) への採択

研究成果をまとめた原稿が査読を通過し、採択して頂きましたので、国際会議でプレゼンテーションを行いました(特許仮出願済み)。英語での発表と質疑応答にはかなりの緊張を感じましたが、入念な準備のおかげで、無事に発表を終えることができました。ロボット分野の専門家の方々からの様々なフィードバックを頂くことができ、これは私たちにとって非常に刺激的な経験でした。今後も学会や論文誌での発表を通じて、研究開発を深めていく大きなモチベーションに繋がりました。

国際学会「SII 2023」の看板との記念写真です!

東北大学ビジネス・インキュベーション・プログラムへの採択

私たちのプロジェクトは、東北大学ビジネス・インキュベーション・プログラムに採択して頂きました。このプログラムは「大学発スタートアップ創出に向けた事業性検証や技術のブラッシュアップによりビジネスモデルの確立を目指す支援プログラム」です。学生によるプロジェクトの採択は珍しいことで、今回は11件の申請の中からわずか2件が選ばれました。このプログラムにより、私たちは事業化活動をより一層強化することが可能になり、大きなやりがいを感じています。

このプログラムなどを通して東北大学や、仙台の事業化支援をなされている方々をはじめとして、これまで多くの方々から、事業化に関するご支援を頂いております。いつも非常に助かっております。本当にありがとうございます。

これまでに行ったヒアリング

多くの介護関係者の方々に、ヒアリングのご協力を頂いております。そのどれもが、私たちにとって非常に有意義なものでした。ご協力いただいた皆様には、心から感謝申し上げます。以下は、敬称を省略させていただいておりますが、ご協力していただいた方々の詳細となっております。

  • 介護教育の研究者:2名

  • 介護施設職員:14名

  • 介護系学校の職員:9名

  • 介護系学校の学生:15名

  • 事業化支援施設:1施設

活動を始める前と比べ、医療福祉現場についての理解が深まってきたと感じています。これからもさらなる学びと成長を続けていきたいと思います。今後ともご指導とご支援をよろしくお願いいたします。

今後の抱負

私は、「介護教育システムの社会実装を通じて、一人一人に寄り添う介護を実現する」というビジョンを持っています。この目標を達成するために、医療福祉現場の声に耳を傾け、現場に必要とされるシステムの社会実装に尽力していきたいと考えています。

私が目指すのは、医療福祉分野に深く根差した支援システムを次々と世の中に送り出す研究者です。医療福祉分野における技術応用を加速させるためのキーパーソンとなることを目標としています。

今後とも私たちの活動にご注目いただき、引き続きご支援を賜りますようお願い申し上げます。

この記事が参加している募集

熟成下書き

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?