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夏の熱

「あれ?同じ高校だったよね?」

街で突然そう声をかけられた。
少し見上げて顔を確認すると、確かに、いや間違いなく同じ高校の同じ学年の別のクラスだった山下君だった。
同じ高校とはいえ、高校生の時には話をしたこともなかった。
どこかのアイドルグループにいそうな爽やかな笑顔に、あの頃の私は密かに憧れていた。
登校時や学校の廊下や下校時、山下君の数メートル後ろにはいつも女子たちがまるでSPのようにその動きを片時も見逃さないように見守っていた。
私の順番は決してまわってくることはないだろうと“SP”に気付かれない距離で私はただ心の中に気持ちをしまい込んだ。
まさかそんな山下君が私の顔を知っていたとは夢にも思わなかった。

「あ、確かそうですよね」
同じ学年とはいえ、話したこともない山下君に私は距離を保ちつつそう答えた。
「実はあの頃、ちょっと気になってたんだ。でも、声をかける勇気がなくて」
山下君の口からこぼれたまさかの言葉に、平静を装いつつ心の中は地上から30cmほど浮き上がってふわふわと揺れていた。
「ここでまた出会ったのって、なんか意味があるような気がするから、せっかくだからお茶でもしない?」
「え?あ、うん」

アイドルのような顔に抱いていたイメージとは少し違い、山下君はいわゆる少し“天然”なところがあったけれど、新たに知ったそんなところも案外良かった。

その後、私と山下君は友達としてまたお茶をして、ドライブに行く約束をした。
「なんかさ、こういう時間がこの先もずっと続くのかなって、そんな気がして…」
「うん、私も」


45リットルの市指定のゴミ袋を私は2階の窓から下の道路へと次々と投げ落とした。
服やCD、なんでもかんでも一緒に詰め込んだその袋を拾い集めて車に積み込んでいく彼の母親。
浮かれたままトントン拍子で私たちは結婚をし、私の実家の2階で新婚生活をはじめた。
けれど、間違いだった。
彼の話は何から何までぜんぶ嘘だった。
たった2か月の結婚、そして離婚歴が現実として残った。
顔だけで恋をした10代の気持ちにまた引っ張られてしまうなんて全くうっかりしていた。


さらりと通り過ぎて忘れてしまいそうなくらい、初めて会った頃の佐藤さんはなんでもないような人だった。
けれど、やたらと“運命”みたいなことを言わないところが信用できる気がした。
少しずつ、ゆっくりと合流していくような時間の流れが今はここちいい。



【焼き緑ナス】
=材料=
緑ナス
大根
かいわれ大根
ごま油
麺つゆ

=作り方=
1.緑ナスを1cmほどの厚さにスライスし、ごま油を引いたフライパンで両面焼きます。
2.1をお皿にもり、大根おろしとかいわれ大根をのせて麺つゆをかけます。


見た目にはほぼ白っぽい緑ナスというものをみかけて買ってみした。
味気無さそうでいて、焼くととろりとしてほんのり甘くておいしいナスでした。
暑い夏に大げさに熱は使いたくないけれど、このくらいの焼き物なら簡単でいいかも。
おいしいおつまみに今夜もごきげんです。

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