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星野源『いのちの車窓から』読了

日ごろから、じぶんの好きだと思った文章は
「書き写す」ことにしている。
本当は硯を出してきて、
筆でしたためることができたら
最高なんだけどねぇ。
現代人にはいろいろ都合があるので、
そういうことはしません。
実際はキーボードでカタカタ打つだけだから、
あっという間に終わってしまう。
(↑タッチタイピング、速度は速め)

こうすると、著者の大事にしていることが
見える気がして。
少しだけ、著者の気持ちに近づける気がして。

それで先日、久しぶりに
本の一章を、書き写したのだ。

星野源を知ったのは
SAKEROCKというバンドで、
彼のいくつかある才能の音楽から入った。
音楽のほかにお芝居をして、
文章も書いて‥‥ということは
いまとなっては、多くの人が知ることとなった。

それで、書き写したのは星野源の新刊
『いのちの車窓から』だった。
『ダ・ヴィンチ』での連載をまとめた本のようだが
そのなかで、本作に書き下ろされた
「柴犬」という章がある。

はじめてこの章にでくわしたとき、
すぐに妄想するタイプの患者は、
感情移入とともに、笑いが込み上げた。
わりとパブリックな空間で読んでいたので、
爆笑は許されない。
息を止めて、天を仰いで、必死で感情と戦う。

本の中で、星野源も自分の感情を必死に抑えていた。
カフェで出逢った柴犬に、テンションが
上がりきっていた。なぜなら、犬が猛烈にかわいいから。
大好きでかわいいやつが、すぐそばにいるから。
でも、星野源はその気持ちを抑え込んでいた。

本を読みながら笑顔をかみ殺している
じぶんと、本の星野源を勝手にリンクし、
余計に笑い地獄へ突き落された。
本の中の彼がしたように、自分の顔を手で覆った。
笑いの神様は、容赦なくオレをくすぐってくる。
神様、かんべんしてください。

深呼吸をして、慎重に読み進めるにつれ
本に出てくる柴犬は、どんどん愛くるしい姿を披露する。

とにかく、源くんが柴犬を好きだということは
よく理解できた。
おそらく、よく世間で耳にする会話
「柴犬ってかわいいよねー」程度のレベルではない。
彼は常日頃から、積極的に柴犬が出てくる
動画を見ているという。
実物がそばにくると、こんなにも喜んでしまう。
もうあれですよ。やっぱり
柴犬、飼ったほうがいいのではないでしょうか。
たぶん柴犬も、星野源に飼われたら喜ぶでしょうよ。
(誰ですか、ワタシが
その柴犬になりたいって言っている人は)

星野源ほどのアーティストであれば、
経済面での心配は不要でしょう。
犬は思わぬ病気もするし、
飼い主不在の時はシッターなんかも、必要かもしれない。
相当な費用がかさんだとしても、
そこは心配無用だと思う。
そしてきっと、源くんなら犬といい関係を
築くことであろう。(個人の勝手な想像です)

でも、星野源は「好きだからこそ飼わない」という。
それって、すごくわかるし、
そっちを選択する人だという点で、
全面的に彼のことが信用できる。

犬が好きなら、なんとかして
飼える方法を考えるものだけどね。
犬との生活は本当に楽しいし。
(フレンチブルドッグを10年飼っておりました)
でも一緒に生活できるかどうかは、
好きとは別問題なんだよね。

カフェで出逢ったかわいこちゃんに、
彼は声をかけることすらしなかった。
とにかく自分の存在を消して、
ただゆるされた時間を、沈黙のなか
柴犬への観察に使った。
知らぬふりをつらぬきながらも、
心のなかでは、やつの腹を撫でまわしていた。

それでこそ源くんだよ!と、勝手な
感想を抱く一方で
こっちは、また犬が飼いたくなってきた。
まだまだじぶんの精進が足りないことを
思い知らされた話だった。



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