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人生はサヨナラから始まる!

この記事はイタリア映画「はじまりの街」の内容を書いたものです。

複数の登場人物は何らかの問題を抱えています。「はじまりの街」は新たな出会いをもたらし、そこから醸成されるWinーWinの関係が彼らの問題を次々と解決していきます。この映画はその過程を淡々と描くことで「人生はサヨナラから始まる」ことを教えてくれます。

一番問題を抱えているのは父親や友達から突然引き離されたアンナの息子13歳のヴァレリオです。その原因がパパのママに対するDVであることは理解しつつもママの取った行動に不満を持ちローマでの生活にサヨナラができずにいました。トリノでの日々は孤独です。彼はサッカー少年ですが同じアパートに住むサッカー少年のグループにプッシュすることさえできずにいました。

それを後押ししたのはアパートの向かいにある食堂の主人でフランス人のマチュー・ジャリでした。彼はセリエAの選手でしたが交通事故で子どもを死なせてしまったため引退しました。そのことで近所の子ども達に嫌われ嫌がらせを受けていました。

ヴァレリオは違いました。マチューに対する偏見を持っていなかったのです。マチューに自転車のチェーンを修理してもらった時に事故のことを質問しました。「突然、飛び出して来た。真っ暗でね。どうすることもできず・・・」。苦悩を浮かべるマチューに親近感を覚えたヴァレリオは身の上話を始めました。「ローマからママと逃げて来た。パパがママを殴るから。ママの額の傷を見たでしょ。パパがテーブルに叩きつけた。」

マチューはママを殴りませんでした。殴った相手は間借りしているママの親友カルラが出演している舞台の演出家でした。ママに嫌らしく付きまとった男はマチューを警察に訴えました。

ヴァレリオがマチューにサッカーの手解きを受けているとき警察が来て彼を連行して行きました。幸いにもこの一部始終を同じアパートに住むサッカー少年が見ていました。

アンナが警察に出向き証言したためマチューはすぐに釈放されました。

信頼を勝ち得たマチューはヴァレリオの良き相談相手となりました。

相談事の一つ目は公園で出会った外国人のラリッサのことでした。彼女は怪我をしたヴァレリオの傷の手当てしてあげました。彼女に淡い恋心を抱いたヴァレリオは彼女が娼婦であることを知りつつ現場を目撃して彼女の心を傷つけてしまいました。そんな自分が許せずママに八つ当たりしてしまいました。これが二つ目の相談事でした。

「友達もいない!友達ができない!何もない!バカみたいに自転車で走り回るだけ!引きこもる部屋もない!失せろ!大嫌いだ!」

マチューはママに対しては謝るように、ラリッサに対しては手紙を書くように勧めました。ヴァレリオは手紙にこう書きました。「傷つける気はなかった・・・遊園地、最高だった。絶対に忘れないよ」と。この出来事はラリッサに何らかの変化をもたらすかもしれません。

アンナはヴァレリオが引き込めるようにアパートを探します。カルラはヴァレリオがサッカー観戦できるように嫌いだったテレビを買うと言い出します。そして捨て犬も。

テレビと犬が揃った家に少年が訪ねて来ました。ドアを開けたカルラに少年が「息子さんは?」と聞くと彼女は「息子じゃない。待って。ヴァレリオ!甥っ子なの」と答えました。彼女は念願の家族を得たのです。

そしてヴァレリオはサッカーに誘われました。少年達は有能な助っ人を得ることになります。ヴァレリオにとっては待ちに待った瞬間でした。それはママにとっても幸せをもたらす吉報でした。

今後、ヴァレリオを通してマチューは少年サッカーのコーチになるかもしれません。そしてヴァレリオのパパになるかも?

それにはアンナのローマとのサヨナラが欠かせません!

吸い込まれそうな澄みきった瞳を持つ美男のアンドレア・ピットリーノの陰影に富んだヴァレリオはとても魅力的で一見の価値ありです。

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