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私の音楽の四方山話(2)

テナーサックスの続きの話ですが、結論から言うと、やめました。今も全然吹けません。楽器店に寄ると、ついついサックスを見てしまいます。サックスは姿がなんといっても美しいし、音色も色気があって魅力的です。それなのに何でやめたか、と言うと、ちょうど、進路変更の時期と重なってしまったからです。

私は2年間勤めた会社を辞めることにしました。次のステップの準備のため、テナーサックスはあきらめ、売却しました。

それから何年かは学生とバイトの生活で忙しく、音楽とは無縁でした。
そんな中、暮れも押し迫る、ある日のこと、いつものようにバイトに励んでいたら、第九が聞こえてきました。そしたら無性に第九が聴きたくなって、テナーサックスの時と同じように、バイトを早々と切り上げて、新宿厚生年金会館に乗り込んでいました。

第九はオーケストラの稼ぎ頭ですから、年末は、ほぼ毎日、公演があります。でも、公演はあってもチケットがあるとは限りません。ご多分に漏れず、当日券もキャンセル待ちの状態でした。

ここのまま帰るのも癪だったので、当日券売り場に並びました。程なくして、一人の男性が私に近付いて来て、こう言いました。

「1枚チケットがあります。良かったら譲ります。どうですか?」

この男性は、いわゆるダフ屋ではなく、正規の値段で譲ってくれました。どうしても聴きたかった第九。果たして私の期待に応えてくれるのでしょうか?
その心配は杞憂に終わりました。
指揮は、NHK交響楽団名誉指揮者のオトマール・スウィトナー。オーケストラを生で聴く初めての体験でした。これを境に好きが高じて、毎年、第九をはしごするようになりました。

私の性分からいっても、第九だけで満足するはずがありません。東京文化会館にはよく通いました。長い間、東京交響楽団の年間会員にもなりました。東京交響楽団の演奏は音楽に真摯に向き合う姿勢が常にあり聴衆の期待を裏切ることがありませんでした。

特に素晴らしいと思ったのは、NHKの番組で放送された、サントリーホールでのモーツァルトの交響曲第41番の演奏です。指揮は、東響桂冠指揮者のユベール・スダーンで、ノンビブラートの響きがことのほか美しく、その美しさの中で紡ぎ出されるモーツァルトの揺れ動く旋律とふくよかさを見事な指揮ぶりで表現し、団員もそれに応えて気迫のこもった演奏を繰り広げました。

演奏を聴き続けるうちに沸き上がってくるのが、楽器への興味です。勿論、それはオーケストラで使われる楽器です。そこで、私が一番最初に思いついたのはサックスでした。でも、オーケストラでサックスが使われるのは、ドビュッシー以降の曲からなので活躍する場面はほとんどありません。熟考の末、私が出した結論はバイオリンでした。この後、「嗚呼、やってしまった😵💧」と思い知らされることになることも知らずに。

(See you)