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衆人皆酔えるに、我独り醒めたり〜2021大河の胡散臭さ考

 今年の『青天を衝け』の胡散臭さでも。

渋沢栄一をSDGsで持ち上げられることはもはやジョーク!

 渋沢栄一を無理矢理SDGsと結びつけたり、彼ならきっと環境対策を打ち出せると持ち上げる記事もありますが、通じない理屈です。帝国主義の資本家なんて、環境に関する知識は薄いし、そんなことより儲けろと言ったもの。渋沢は足尾銅山の元凶に援助しておりますから、問題外の人物です。

「私たちは絶滅に向かっているのに、あなた方が話すことはお金の話か、永遠に続く経済成長というおとぎ話ばかりです」

 グレタ・トゥーンベリさんはそう言いました。まさしくこうしたおとぎ話をふりまいていたのが、渋沢栄一のような商人だということはお忘れなく。

 グレタさんに共感する本物の若い世代は、渋沢栄一を素直に称賛しないであろうことも、考えておきたいものです。十年後には色褪せるかもしれない、そんな顕彰をやらせるってどういうつもりですか?

衆人皆酔えるに、我独り醒めたり

 SNSのハッシュタグが盛り上がっているから成功です! それはどうかな?

 アルゴリズムって結局は人間が考えるものですよ。どうしたって作為は入るし、その仕組みを覚えたらトレンドは取れますからね。何が言いたいかって? 大河では毎週ハッシュタグはトレンド入りするけど、それが信じられるか、ってことです。

 私は極力、作品名ハッシュタグを大河では使えない。その気持ちを屈原の言葉で言いますとね。

衆人皆酔えるに、我独り醒めたり。

 オリンピックの開会式と閉会式を見ていて、どうして酔えないのか答え合わせはできた気がしますよ!

 あの薄寒いノリ。既視感があった。まあ、一瞬だけ見てやめてあとは情報拾っただけだけど。

◆竹中直人が「五輪開会式」出演を前日に辞退  理由は「放送禁止テレビ」 #スクープ速報 #週刊文春 #文春オンライン https://bunshun.jp/articles/-/47423

 なんと斉昭公が! これは残念でしたね。もし実現していたら「快なり!」とさぞや大河ファンは盛り上がったでしょうね。かえって出なくてよかったとか? いろいろ胡散臭いんですよね。こんな文春砲を放たれてますよ。

◆“森案件”の市川海老蔵、小池の“火消しと木遣り”…東京五輪の開会式は「政治利用」の答え合わせがたまらなかった! #文春オンライン https://bunshun.jp/articles/-/47374

 そしてこちらでも。

◆五輪開会式、「90年代的なるもの」と森山未來の意味:朝日新聞デジタル https://www.asahi.com/articles/ASP7V4DYQP7TUCVL00P.html

開会式のクリエーターのラインアップが発表された時に、1990年代から2000年代初頭ぐらいに活躍した人の名前が多く見られたので、なんらかの意味で「90年代感」のある演出になるのではないかと予想しました。(中略)

その頃にノスタルジーがある、現在40代ぐらいの人たちが選定になんらかの形でコミットしている、あるいは一番最初に声をかけられた人たちの中にいるということなのかなと思ったんです。

 開会式と『青天を衝け』のノリは似ている。内向きで、1990年代から2000年代のサブカル趣味を味わった日本人にばかりウケるノリだらけです。

 広告代理店手法と言いますが、1990年代のノリを思い出します。大河ドラマもあの時代は砕けすぎて、模索の時期に入ったのですが、本作は時計の針を巻き戻したかのような雰囲気は感じます。

「おかしれぇ!」「胸がぐるぐるする!」

 こういう決め台詞が好きなあたりとか。顔芸がすごいとか、イケメンとか。やたらとふんどしや裸を見せつけるところとか。久々に再開した妻に子作りをしたいと笑顔で言い切るとか。そういうデリカシーのなさ、ハラスメントとジョークの区別が薄いあたり、独特の薄寒い軽薄さがあるんですよね。

 トレンディドラマとサブカルを混ぜあせて雑に作っていて、ある年代は直撃する作風ですね! 馬鹿馬鹿しいほどの楽観主義。ヘラヘラ笑ってテキトーなことをいう。ストーリーはスカスカ、史実はさして入れない。それなのに隙間を埋めるように演出過多な演技。見ている間はケラケラ笑えるけど、見終えたあとで覚えているのかどうか? ましてや幕末の本を読もうと思えるのか。ピザをストロングゼロで流し込むような,栄養ゼロだけど楽しい味わいが特徴でしょうね。

 そんなことはない! そんな反論も想像できますって。本作にはなろう小説じみた工夫もある。ああいう作品って、有能な冒険者や魔王になるでしょ? 決断を下し、組織を管理し、意見を形成し、勝負に挑む。そういうバーチャル統治者気分を味わえる工夫はあります。ドラマの感想をハッシュタグをつけてつぶやき、歴史のうんちくを語れば、博識者というアピールができます。SNSでバズれて楽しいですよね。

  そこにあるのは、作品を応援というよりもマウンティング心理かも。

 はっきり申しますけどね、今年の大河は成功した『花燃ゆ』と『西郷どん』ですよ。イケメンと薄寒いジョークで釣るあたり一致しているでしょ?

 まちがっても『八重の桜』とまとめて佐幕派に入れないように。会津藩と徳川慶喜は意見が一致していたとも限らないし、渋沢栄一はステルス倒幕派です。テロ容疑者になって平岡円四郎に匿われ、ぶっちゃけノリで幕臣になっただけ、明治以降は長州閥とつるんで金を儲けた「弍臣」ですよ。

李下に冠を正さず

 とはいえこのドラマは「傑作」扱いをされています。史実も無茶苦茶だし、問題は山ほどあるし、手抜きだし、視聴率もそこまでよろしくない。

 答えは簡単かもしれませんよ! 渋沢栄一の子孫に長谷川三千子氏がおります。どんな方か? NHKが紹介しています。

◆ NHK経営委員に仰天「安倍人事」 百田尚樹、長谷川三千子氏ら「保守派論客」メンバー https://www.j-cast.com/2013/10/25187271.html #NHK経営委員会 #百田尚樹 #長谷川三千子
◆経営委員紹介 長谷川三千子 https://www.nhk.or.jp/keiei-iinkai/member/m_hasegawa.html
世界に向けて説得力のある発信をすることが、今の日本にとって、ぜひ必要なことです。そのためにNHKの果たすべき役割は大きいと思っております。

 いやあ、素晴らしいですね! こんな上司の覚えめでたい大河を手掛けたら、そりゃ出世間違いなしだ! 宣伝にもそりゃ気合を入れることでしょうね。

 『花燃ゆ』と『西郷どん』と『青天を衝け』の違いといえば、そういう宣伝戦略のうまさでしょう。こなれてきた。封じ込めるのがうまくなっていた。2015年よりも2018年はそういう巧妙さがあがったと思っておりましたが、2019年を経て2021年ともなれば、匠の技に到達するというわけです。

 NHKは公共放送が建前です。

 その公共放送が、本人はおろか子孫まで政財官にバッチリ絡んでいる渋沢栄一礼賛を能天気に放送する。NHKの存在意義すら揺らぎかねないことをする。どういうことでしょうか?

 ついでに言えば、なぜ本作を褒める記事が多いかということも説明がつきますよ。これは渋沢栄一生前からあった傾向ですが、褒めれば利益があるとなれば絶賛するでしょう。

 明智光秀を褒めたって、そりゃある程度大河便乗はできて旨みはあるけれども、限界はあります。しかし渋沢栄一を褒めたら旨みがあることくらい想像はつきます。

 賢い人ならば、そりゃそうしますよね。私はご存知の通りバカだからそんなことできないけど。

 どうせ陰謀論の類だと言われることでしょう。けれどもトランプ再選論よりは説得力あると思えますけどね。

 それにこんな言葉もありまして。

李下に冠を正さず。

 スモモの木の下で冠を直すと、いかにも盗んじゃったみたいだよね。冤罪だろうと疑われちゃう。ならそういうことはやめておこう。そういう意味でして。公共放送ならもっとそこはガードすべきではありませんか?

あまりに迂闊で、ちょっと洒落になりませんて!

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