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おやこのきろく:感情

7歳の息子と、
これまで感情と感情のぶつかり合いが多かった。
剝き出しの、
丸裸の、
感情 を、
どうにか言葉にして見せ合う。

それは言葉じゃなくても良かった。
まるで野生動物のように、
キーキーギャーギャーという音でも良かった。
大げさに言うと、そのような。

昨日、片付けのことで揉めた。
「かたずけけん」を使ったのに、
妹に転売して彼女に半分(いや半分以上)やらせようとしたから、
思わず口を出してしまった。

息子の口がとんがった。
ぎゅっと固く結ばれた。
解けた途端、
目からは涙が、口からは大声が。
文字にすると本当に、
わーんと泣くのだ。

私は意地悪に、
兄の泣きには慣れた妹に向け、
「片付けしててて偉いねー!」
と声をかけてしまう。

すると息子が言った。
「おかーさんは僕を褒めてくれない。褒めてくれたらやる気が出るんだ」
「文句ばっか言われると何にもしたくなくなるんだ」

わお、と思った。
育児書で読んだことのあるような言葉を、
彼は誰から聞いたわけでもなく、
自分の気持ちとして口にしたのだ。

褒められる→やる気につながる
怒られる→自己肯定感さがってモチベーションにならない

この「褒めて育てる」っていう、
単純な構図だけれど、
毎日向き合ってる親にとって、
完遂したくてもなかなかできない難題。

息子に直に提示されるとは。

息子の言葉はもはや、
感情ではなかった。
思考の上の、正しい理論の上の、
訴えであり意見だった。

そりゃそうだよね。
正しい。
そうとしか言えなくなった。

どんな育児本より、
どんな研究者より、
息子からの言葉は真実味があって、
素直に受け取らざるをえない強力さがあった。

彼の言葉に多分に反省しつつ、
でもこちらの言い分も聞いてもらわなくては!と、
やってもらいたいことを結局また言い過ぎて伝えてしまう私。

ただその言葉には驚いたから、
そんなに考えられるなんて凄いよとめちゃくちゃ褒めた。

そして、
誰よりも彼のことを考えているということ。

初めての子育てだから、
一人目の子供だから、
大切すぎて、
考えすぎて、
だからこそ時々言い過ぎてしまって、
あなたにとっては負担だよねと。

でも同じ時間離れていても、
いもうとよりあなたのことを考える時間がおかーさんは多い。
誰よりもあなたのことを考えているから、
それは覚えていてねと。
(これはもちろんいもうとには聞かせられないけど)

彼のアーモンド型の可愛い目が、
きらっと輝いた。
口元がほんとに自然な、
私にはもう出来ないんじゃないかと思うほど自然な動きで、
緩んだ。

安心したように笑った息子の顔に、
かなり心を打たれた。

感情と感情のぶつけ合いではなくて、
思考と思考のぶつけ合いへ。

少しずつ、ちゃんと成長する。
彼と、私。

まだまだヒートアップしてしまう時もあるけど、
いつかはもっと、
静かに穏やかに、
思考と思考を、
ぶつけ合うんじゃなくて、
渡し合うくらいになれるだろうか。
そして今日みたいなはっとするような言葉の煌めきを、
彼は私にくれるんだろう。

それってかなり、楽しみだ。

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