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記憶のカケラを集めてみる④

先生は、定年でいなくなった。私がつくっていた壁に、間違いなく風穴を開けていった。少なくともクラスの子と話しをすることが、苦痛ではなくなった。1年近く、畑仕事をして、みんなで協力することを学んだ。

先生が去る時、家まで挨拶に行った。先生ありがとうと、一言伝えた。先生は、力いっぱい抱きしめてくれた。あなたは、美しくて、強い子。あなたには、良いところがいっぱいあるのよ。草むしりも水やりも、一度もさぼらなかった。熱があるのに、最後まであきらめずに山登ったね。頑張り屋さん。でも1人で頑張らなくてもいいのよって、先生は泣いていた。

私も泣いた。母と暮らす事を諦めて以来、いじめにあっても、事故にあっても泣くことはなかった。先生の言葉が、とても暖かくて、心の琴線に触れてしまったんだと思う。自分の事を、見てくれていたんだと、安心したのかもしれない。


6年生に上がって、また新しい先生がくる。クラスはそのまま。とても不安だった。でも、その不安はあっという間に払拭された。

始業式の朝、正門に見たことのない新しい先生が立っていた。笑顔で、おはよう!と話しかけてきた。何を話したか覚えてないけど、この先生が担任だったらいいなーって思った。始業式で、校長先生が新しい先生を紹介して、あの先生が担任だと、クラスのみんなで喜んだ。

先生は、あらかじめ、これから受け持つ子供達の写真を前任の先生から見せてもらっていたそうだ。そして、朝正門で全員に声をかけていた。

教室に入ると、先生は全員の名前を顔を見ながら読み上げた。すごい、全員の名前、もう知ってるんだと思った。

二人目の恩師。

この6年生の時の1年間は、わざわざ思いだす必要がない。大切な1年間。今の私の半分はこの頃に出来上がったと思う。

イメージとしては、前任の先生が丁寧に畑を耕して、肥料を混ぜ、良い土、良い土台を作り、そこち小さな種をまいて芽が出てきた、、新しい先生が大切な芽が枯れないように、大きな花が咲くように、試行錯誤しながら育てた、、って感じなのかな?あくまでも私のイメージだけど、そんな感じでクラスが出来上がっていった。

先生は、絵と音楽に長けていた。とくに絵に関しては、普段はとても優しい先生が、鬼のようになる。めっちゃ恐かった。何枚も練習の絵を描いた。下描きは、割り箸と墨で描く。色は、三原色以外、使ってはいけない。三原色を混ぜて、色んな色を作り出す。それが、人でも花でも景色であっても変わらない。そんな色を制限された絵なんか描いた事がなかったから、みんな初めはどうしていいもんか悩みに悩んでた。練習していくうちに、だんだんとその手法に慣れてきた。先生の目的は、大きなコンクールに出展することだった。全員。

初めてのコンクールの絵。もう、地獄のような日々だった笑 毎日毎日、昼休みも放課後も、少し色を入れては、先生に見せて、なんでここはこの色なの?一番日の光が当たってるとこだよね?ちゃんと見てごらん!とダメ出しされ、、1週間ほど経つと誰も何も喋らなくなり、みんな必死で絵と向き合っていた。

よその学年の子や、隣のクラスの子も、何ごとかと、教室をのぞきこんでいた。

10日か2週間ほど経つと、みんなの絵が完成してきた。先生の、よし、これでいこう!って言う声が完成の合図。私は、なかなかokがもらえなかったけど、よし、これでいこう!が聞こえた時、ものすごい、達成感を味わった。今までにない達成感。

その時の絵は、クラスのほとんどが入選した。入選した絵はしばらく戻ってこない。残念ながら落選した子の絵も、職員室の前に展示されていた。

独特な色使い、独特な絵。学校内では6年2組の絵が有名になった。

何かを最後まで、完成させること。先生は、色んな事を私たちに経験させてくれた。絵の次に厳しかった合奏も、最後の一音まで気を抜くな!と、ガチ切れしてたっけ。完成させる、やり遂げるということを繰り返した。この事が、私たちに大きな自信をもたせた。ほんとに出来過ぎなくらい、よくできたクラスだった。5年の時につくった芋畑は、その年の5年生が引き継いでくれたけど、その年は焼き芋大会はなかった、、

最後までやり遂げる難しさ、、あらためて、成功体験を数多くさせてくれた、先生、すごい人だったんだね、、

出来がよく、男女仲良しだったが故に、こじれた時はとてつもなくやっかいだった。先生が土曜日に、1週間の出来事を新聞にしてくれた。男子と女子が揉めて、全く口を聞かなくなってしまうまでこじれてしまったので、双方の言い分を新聞に載せた。

通称、サンドウィッチ事件 笑

今から思えば、かわいらしい、なんてことのない出来事。家庭科の時間に、サンドウィッチを作った。2組が1、2時間目で、1組が3、4時間目。2組の男子が、自分達より後の1組の女子からサンドウィッチをもらって、2組の女子が作ったのより美味しい、、と言ったらしい 笑

それを聞いた子が激怒して、サイテーとなったらしい 笑

贔屓目ではなく、1組男子より2組男子の方がカッコイイ子が多かったから、きっと1組女子も、2組男子の中に好きな子がいたんだと思う。食べて欲しかったんだろうね 笑

この事件が、新聞に掲載されて、学活の時に話し合いがされた。男子は最終的には、女子に平謝り。2組の女子が作ったサンドウィッチがまずかったわけではなく、普段はあまり話さない1組女子からもらったので、うれしくて、つい、、とのことだった。いつの時代も男って、、笑

それでも女子達は、そんな事言ったら2組の女子が傷つくっておもわなかったの?ひどいよね!なんて、わめいていたっけ 笑

ほんとに、何でもない、平和な日常。こんな日常ですら、私にとってはキラキラした、小学生らしい大切な思い出。

沢山の事を経験して、友達をつくるということを経験して、小学生の最後の1年は充実した1年になった。忘れられない恩師と共に。

#思い出 #書くこと





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