コミュニティスペース01

「コミュニティ重視型」への想い

1月に入ってから雪が降る日が多く、境港・水木しげるロードは前年以上に「閑散期」に突入しています。
大手の観光冊子などで「リニューアル工事」が取り上げられていますが、この大半が「リニューアル後を見据えたもの」になっており「工事中の“今”を楽しむ」広報がなされていないのも影響しているかもしれません。「世界妖怪会議」やライトアップなど、宣伝・告知不足は課題です。

リニューアル後は、マスコミが取り上げて“ブーム”をつくろうとするでしょうから、団体ツアーや「ブームに乗っかりたい人」が増えるとは思います。また、県はインバウンドにかなり力を注いでおり、とにかく「外国人観光客の受け入れ」に熱心です(いろんな形で「外国人を取り込んでほしい」という斡旋話が来ます)。
しかし、私個人としては「旅そのものと境港・水木しげるロードを楽しむ」をコンセプトに「境港のまちづくりの原点」を守り伝える「コミュニティ重視型」の宿という方向性を明確にしていますので、水木作品や水木先生のことを知らず「町」への関心ががない団体ツアーや、外国人観光客の宿泊を増加させたいとは思っていません。「数」よりも「コミュニティ」を大切にしていきたい、と考えています。

「旅宿」の運営を始めて、1年と5か月。
思惑の違いや想定外のことが、いろいろありました。

当初、うちに宿泊される人は「大半が水木しげるロードの観光か、隠岐・美保関などへ渡る人」で「ビジネス利用や、移動拠点としての利用はほとんどない」と思っていました。そして「公共交通機関で来る人」がもっと主になるとも思っていました。
「平日・閑散期」と「土曜日・繁忙期」の傾向、「境港までの交通機関」「境港に泊まる理由や目的」――など、女性客は概ね想定通りなのですが、ほかは、かなり思惑と違っています。

子ども連れのご家族に思いのほか多くご利用いただけているのは、うれしい誤算ですが、一方で特に男性客から「子どもがコミュニティスで遊ぶ雰囲気」に対して「思っていたゲストハウスと違う」と言われてしまうことが多々あり「ゲストハウスの捉え方」の違いに苛まれました。「子ども不可」のゲストハウスが多いのは確かですが・・・、思った以上に男性客が「子どもが遊べるコミュニティスペースの雰囲気」を嫌がるのは想定していませんでした。とは言え、男性客は「ホームページを読んでいない当日予約」が多く、読んでもらっていたら起こらないことなので、ちょっと虚しさが残ります。

自分は「当日予約」をほとんどしないので「隠岐フェリーや米子空港便が欠航になった場合くらいしか当日予約はないだろう」と思っていたのですが、男性客は半数以上が当日の電話予約。ホームページを読んでいないとコンセプトを伝えるのも難しく、対応に悩み、うまくいかないこともありました。
「境港・水木しげるロードの観光振興」という視点から子ども連れのご家族は増やしていきたいですし、やはり「思っていたゲストハウスと違う」と言われるほうが困るので、ここは中途半端にしない、とルールを定めました(男性の割合は若干下がった程度で、一方で「コミュニティ」が崩れることがなくなりました)。

もっとも、思惑どおりでないとか想定外だと思ってしまうのは、自分が「『ゲストハウス』イコール『旅宿』」と捉えていたからかもしれません。
自分の場合、「①旅の目的地を決める」→「②目的地に対してアクセスのよい場所に宿を定める(ゲストハウスには固執しない、基本的に連泊)」→「③旅プランの詳細を考える」といった流れなので、当日予約はまずないですし、「まず『旅の目的地』があって、そこに自分に合うゲストハウスがあれば泊まる」という感じ。「ゲストハウス」を基準に旅の行程を決める人が多いのには驚きました(春以降は方向性を明確にしたので、こういった“マニア層”は減り、女性だけでなく男性の初心者率も上がりました)。
つまり、観光地型ばかり利用してきて都市型には泊まったことがないので、ユースホステルや観光地の民宿などと同じように捉えていました(札幌や仙台では泊まっていますが、祭りやイベント時のため目的が似通った人ばかりでした)。

「ゲストハウス」を「安宿」と捉える日ともいれば「交流宿」と捉える人もいます。ゲストハウスの分布を見ていると都市型のほうが多いですし、特に新しく誕生するのは、観光地よりも中核都市や中継点として生かせる地などが多いようで、「旅宿」と捉えない人のほうが多いのかもしれません。「空き家対策」などから「地域交流」を主とする農山村型も増えています。
実際「定義」となると難しく、「王道」「邪道」などと言われても何が正解かは単純に語れなくなっているのではないでしょうか。多様化が進んでいる現状において「固定観念」は持たないでほしいとは思います。

いろいろある中で試行錯誤しながら、少しずつ「予約ルール」を厳しめにしていきました。「簡単に予約できる」とは言えませんし、ホームページの文章量も、ほかの宿よりは確実に多めです(普段から文章に接し慣れている自分からすれば、大した量だとは思っていないのですが・・・)。
コンセプトを明確にしていることで、「否定的」だと思われることも、「制約」という言葉で片付けられてしまうことも、「ゲストハウスらしくない」と言われることもあります(なのでホームページなどは「ゲストハウス様式の宿」という表記を採っています。こういうニュアンスの違いも読み解いていただけると助かります)。

しかし、その裏には「コミュニティ重視型」への挑戦があります。
それは「境港・水木しげるロード」を楽しむ空間として、自分の旅の「目的」と同じく「場所」に拘ってのことです。

何度か記していますが「鶏が先か、卵が先か」の論。
つまり「境港に泊まる必然性」。
「水木しげるロードを楽しみたいから、境港に泊まる」を基調として、そのうえで調べて来てくださる人が集えばコミュニティは保てると思っていますし、「観光地としての水木しげるロードのまちづくり」が好きで移住した“想い”であり、「この町で運営している理由」でもあります。

不特定多数の人を受け入れるのが当たり前なうえ、日ごとに「人が入れ替わる」のも当たり前の「宿」という空間にコミュニティを持ち込むのは無謀かもしれませんが、それが「個性」であり「特徴」だと捉えていただけると幸いです。

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