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じっとしていられない病 | 0220-25



2月20日(火)

冬と春の狭間でねむる


春だ。紛うことなき春だ。

『春眠 暁を覚えず』とはよく言ったもので、今日はとにかく瞼が重い。しかし春は始まりの季節とも言うので、特にこれといった記念日でもないけど日記を書いてみる。重い瞼にムチ打ちながら自転車でアルバイト先まで走ると、生温い風が心地よい。
ほら見ろ、やっぱり春だ。なんて誰に否定された訳でもないのに主張を繰り返した。

新人ちゃんとの距離をほんの少し詰めてから、再びチャリに乗る。もう上着無しでもなんてことないなと思ったのも束の間。ペダルを漕ぎ始めた瞬間、冷たい風が吹き付ける。
やっぱりまだ冬の気配は残っている。でもまあ、これはこれで好きだから、もう暫くは居残りでお願いします。



2月21日(水)

ああ、嬉しいなあ ×30


「覚えてないと思うんだけど……」

研究室に見知った顔がいたので、恐る恐る話しかけてみる。5年前の4月、新入生オリエンテーションで少し話した子だ。あれから私は休学をしたり転学科をしたりして学年は変わってしまったけれど、まさかこんなところで再会を果たすとは。
「え、覚えてる!しずちゃんだよね!?」
「わあ〜〜〜〜!?!?」
揃って大声を出して、教授に怪訝な顔で振り向かれる。どうやら相手の子も「覚えてないだろな……」と思っていたらしい。
ああ、嬉しいなあ。今日の午後だけで30回は頭に浮かんだ。あまりにも嬉しいので、かの有名な塩トリュフパンを買って帰る。
帰宅するなり「ねえちょっと聞いて!?」と母へ報告。私の口癖は今日も健在。懲りずに話を聞いてくれる母へ密かに感謝をしつつ話した結果、いつのまにか話題は人生における選択のことに飛んでいた。

卒業まで(おそらく)あと1年、
正直言って、今がいちばん楽しい。


2月22日(木)

虚空でたゆたう


3日連続雨予報のうちの2日目。さらに1日挟んで雨予報とのこと。まだまだ先は長い。心がスカッとするような春の日差しは暫くお預けらしい。

人事との面談で、適性検査のフィードバックを受ける。『表』の自分は、自分でも笑ってしまうくらいの完璧人間だった。さすが短所に『完璧主義』を挙げる人間だ。しっかり自己分析できていることを褒められながらも、その分析した自分は一体何者なんだろうと考える。知らぬまに虚空を作り上げているのかもしれない。その虚空は、果たして未来の自分が埋めてくれるのだろうか。

とあるバンドのツアーがあると聞いて、ダメ元で申し込んでみる。高校生の頃、仲の良かった人が好きだったバンドだ。今でも曲を聴くと、あの人の顔を思い出す。
彼に抱いた感情がなんだったのか、実はまだよく分からない。ただ、私はあれからずっと、曲を聴くたびに顔を思い出す呪いにかけられている。


2月23日(金・祝)

二大・人生でキレた話


最高気温8℃、雨の日のパン屋にはまったく客が来ない。裏の作業場で手を動かすフリをしながら店長と後輩と3人で口を動かす。後輩、と呼ぶのもなんだかしっくり来ない。これからも日記に登場しそうな彼女のことは、梅ちゃんと呼ぶことにする。

作業場にはニッポン放送のラジオが一日中流れている。今日のテーマは『後悔している話』だったので、「店長が後悔していることはなんですか?」と訊いてみる。レアものの自転車を、元妻に言われるがままに売ってしまった、とのこと。
梅ちゃんにも訊くと中学時代について返ってきたので、そのまま中学の部活の話題に移る。わたしが『二大・人生でキレた話』を披露すると、お腹を抱えて笑ってくれた。この話そんなに面白いか……?と疑問に感じつつ、どうせ過去について語るなら笑ってもらったほうが気持ちいい。自慢話ではなく、失敗談で笑ってもらえる大人になろうと誓った。


2月24日(土)

ホルモンバランスと酒


「若い子を見たほうがホルモンバランスが整うからさ〜」
作業場に入るなり聞こえたパートさん達の声に、一体なんの話をしてるんだと笑いが込み上げてくる。詳しく訊いてみると『若い子とイケおじ、どっちを見たほうが健康に良いか』について議論を交わしていたらしく、聞いておいてなんだけど理解したような出来ないような、不思議な感情が湧き起こる。

晴れ間の今日は、昨日と違い客足が途絶えなかったのでひたすらレジを打つ。それでも合間に梅ちゃんと語り合いつつ、バタバタと退勤。バタバタと帰宅して、バタバタと着替えて、バタバタと家族で夕飯に行く。

私の酒飲みモチベーション(通称:呑みベ)の高さは、完全に父親のものを受け継いでいる。「飲むじゃろ?飲むじゃろ?」と互いに確認しつつ、父はビール、私は白ワインを飲みに飲む。
ちなみに、酔っ払ったらこくりと寝るのも父親譲りである。夜中3時、リビングのソファで目が覚めて、今この日記を書いている。



2月25日(日)

じっとしていられない病

店長いわくじっとしていられない病の私は、友達との予定がキャンセルになったのをいいことに街へ繰り出す。典型的な『内向型アクティブ』なのだ。そんな私に母は常日頃から口酸っぱく「一週間に一度は何もしない日を作りなさい」と言うが、昨日の午前中にゆっくりしたということで落とし所をつける。

高円寺の書店を二軒巡り、念願のアール座読書館へ。極寒の雨日ということもあって無事に座れたので、買った本を早速読む。

読書記録はインスタにて

こういう喫茶店に行くと、わたしはいつも接客とは何かについて考えてしまう。寡黙で無愛想な店員さんは、存在だけで喫茶店の情緒を底上げしているようだけど、ふとチェーン店の鍛錬された「ありがとうございます!」という作り物の笑顔が恋しくなってしまう。別に店主や店員が無愛想だからと言って二度と行かないわけじゃない。ただし他店での「ありがとうございます!」があってこその情緒だよなあ、とは思う。

その後(しれっと古着を買ってから)西荻窪へ。
BREWBOOKSというビールが飲める書店で一杯。
本当は気になっていた立ち飲み屋があったのだけど、明日こそ友達と会うので今日は我慢しておく。

日々は続いていく。
わたしがそうと決めたなら、その日が記念日だ。



インスタ(読書とことばの記録)も
併せてよろしくお願いします。

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