ヘッダーその5

こんな絵のポスターいかがです?(本屋編)

 ある日の午前中、ぼくはいつものように机に向かい、先をかりかりにとがらせた鉛筆で絵を描いていると、ピンポーンとチャイムがなりました。

 ちょっとびっくりしたけど(絵を描くのに夢中になっていたし、そもそもチャイムなんてめったになったことがないからね)、ぼくは鉛筆をおきドアを開けると、そこにはツイードスーツに黄色い帽子の知らない紳士がたっていて、ぼくを見るなり目を大きくまんまるにして言いました。


「はじめまして、まつぐさん!私、ヴィッケン通りで本屋を営んでいるガーベリーと申します。突然やってきて申し訳ない。あなたの絵をnoteで見ていてもたってもいられず、はるばるやって来たんだ!すこし話をしたいんだが構わんかな?」

(*注意 今回は全くの妄想です)


 勢いに押されて「あ、はい。」と返事をするとずかずか部屋に入り、ついさっきまで描いていた絵を覗き込んで「ほっほお。」と言いました。突然のことでびっくりしたけれど、このずうずうしさには文句を言ってもいいくらいだ!と気付いたのと同時に、ガーベリーさんはもそもそ、胸ポケットからとりだした名刺をぼくに差し出し話し始めました。


「さっきも申しましたが私、ヴィッケン通りでフォー・クロウズ・ブックスという本屋を営んでおります。かねがね店をなんとかもっと楽しくしたいと考えてましてな、あなたの絵を見て自分でもよく分からんが「これだ!」と思ったんです。是非ともまつぐさんの絵で私の店を楽しくしてもらえんかと!……すまんがのどがからからなんじゃ。お水かお茶で構わんからもらえんかね。」

 

『勝手にやってきてずかずかアトリエに上がり込み、その上のどが渇いたから飲み物を出せだって?なんとあつかましい!』と、ぼくが思ったと思うかい?

とんでもない!


 ぼくはカフェやレストラン、パン屋とかケーキ屋、帽子屋、文房具、雑貨屋、もちろん本屋もぼくの好きなものを売っているお店の前を通るたびにぼくの絵でもっとこのお店を楽しく出来るのにって思いながら歩いてるんだ。

 
 だから今度はぼくが興奮する番。だけどまえのめりは危険だ!何度かうまい話には痛い目にあってる。
 いやいや、心配ご無用!
 どうしてかって?
 それはね、ぼくはそんなときちゃんと自分に言い聞かせるために「おとしあなのうた」を作っているから。

 

 頭の中で何度もこの「おとしあなのうた」をうたいながら、ぼくは大急ぎでお茶をグラスに注ぎガーベリーさんのところにもっていきました。

 ガーベリーさんはぐびっと飲み干し「ぷはー」と息を吐くと、またすごい勢いで話し始めました。

「私の本屋をもっと楽しく生まれ変わらせたいんだ!もっと物語や世界観があって、そう!絵本の中の本屋さんみたいな。そうだ、絵本の中の本屋さんだ!それこそ世界でたったひとつのフォー・クロウズ・ブックスだ!」
 ガーベリーさんはやっとぴったりの言葉が見つかってとても興奮しそれから何度も何度も「絵本の中の本屋さんだ!」と言いました。


「どうしてあなたの絵にこれだ!と思ったか今分かったよ。きっと私の頭の中の絵本の絵があなたの絵だったんだ。素晴らしい、なぞがとけた!是非ともフォー・クロウズ・ブックスの絵描きさんになっていただきたい。世界でたったひとつの本屋さんをいっしょに作ろうじゃないか!まずはブックカバーやしおりや紙袋、カフェもあるからそこのメニューももっと楽しくして欲しいな。いやいやそれだけじゃないぞ!店のあちこちに物語があるんじゃ!いっしょに作ろう!とにかく、とにかくだ、お金の心配なんかいらんからまつぐさんの作りたいもの片っ端から作ってもらえればいい!」


 「おとしあなのうた」はどこへやら、あっという間にぼくの頭の中は絵本の中の本屋づくりでぎゅうぎゅう詰めになりました。

                 *

 そうだな、ガーベリーさんも言ってたけど、まず手始めに「ブックカバーおかけしましょうか?」っていつも店員さんが声をかけてくれる単行本用のブックカバーだ!

 もちろん絵柄は何種類か用意したいな。……クリスマス用とか。

 そうだ!栞も何種類か用意しよう。
これも何種類かあってさ……。やっぱり細長いのがいいのかな?だったら最近灯台の絵が描きたいから灯台シリーズとか、全然違うけどキリンも細長くていいなあ。いやいや、細長くなくてもいいかも。

 
 でもいろんなお客さんいるからおしつけちゃあいけないな。だったら「ブックカバーと栞おつけしましょうか?」って聞いてもらえばいいんだ。でもやっぱりみんなそれが欲しくてこの本屋に買いに来るんだ!
 もしかしたらキャラクターもいるかも。やっぱりカラス……作っちゃおうかな。それなら「本を読む」シリーズの人形も作ってあちこちに飾ろう。素敵な人が本を読んでいたら「何を読んでいるんだろう?」って気にならないかい?きっと素敵な人形が本を読んでいたらきっとみんな「何を読んでいるのかな?」って気になるさ。そうなったらこっちのもの。一気に物語に引き込むさ!

 あ!そうだ。絵本のコーナーにはどこかのもりのかいじゅうずかんをひろげておいてもらおう。

そうだ!こんな絵のポスターいかがだろう?

本に関する名言ポスターっていうのは。

売り場ごとにそれに合った絵がいいよね。
だったら女の子向きの売り場だったら、こんなのは?
ワンピースが似合って、かかとをこつんとあわせて
バレーを習っていたのかな?
そんな佇まいの女の子。

やっぱり子ども向けの本売り場には怪獣!

こわいかな……って。



「ハァ・・・」

ぼくはため息をつき、かりかりにとがった鉛筆でまた絵を描き始めました。ガーベリーさんはいつやって来るんだろう?って考えながら。

いつかそんな日が来ることをねがって

(おしまい)

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