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銀河フェニックス物語 <番外編>  今日やったこと ショートショート

 銀河フェニックス物語 <番外編> 朝のルーティーン の続きです

 きょうは、仕事も任務もなんも入ってねぇ日曜日。

 朝起きて、まずは相場をチェックする。
 裏情報通りに地方星系の中央銀行が為替介入したな。よし、危ねぇところは切り抜けた。
 ティリーさんのふくれっ面が頭に浮かぶ。言ったら怒るだろうな。卑怯者って。

 前に、任務で関わった企業の株を売って儲けた時には、アーサーの奴が青筋を立てて噛みついてきた

n32上向き@3軍服後ろ目怒り

 将軍家には銀河中の情報が集まってくる。資金運用に使わなきゃもったいねぇだろが。

 さて、ぐうたらしたいところだが、きょうはここフェニックス号へティリーさんが遊びに来る。会うのは一週間ぶりだ。
 二人で小惑星帯をぶっ飛ばして、きょうこそ『あの感覚』にたどり着きてぇ。俺の思い通りに船が動く全知全能な『あの感覚』。あれを扱えれば俺は真の『銀河一の操縦士』になれる。

 格納庫にあるガレガレの小型機はよくできてる。俺のヘビーな改造によく耐えてる。船をいじれば金がかかる。やっぱ違法じゃねぇ金集めは許してもらわねぇとな。

 夕飯はどうするかな。
 ティリーさんは今週、取引先と揉めて仕事に追われてたから、ろくなものを食ってねぇ。めんどくさがって、職場でサプリメントかゼリー飲料ってところだろう。きょうは 調理師免許を持っている俺が、おいしい肉でも焼いてやるか。

 いい肉を調達し、つけ合わせの青菜を船内の野菜工場で収穫する。よしよし、よく育ってる。

 と、その時ティリーさんから連絡が入った。一目見ていい話じゃねぇことがわかった。
「ごめん、取引先に呼び出されて、これから仕事になっちゃった」

n13ティリー3s@泣きそうむ

 ガレガレの船の飛ばしにつきあってほしかったが、しょうがねぇ。
「じゃあ、夕飯、食いに来いよ」
「それが……本当にごめんなさい。仕事終わったらみんなでお肉を食べに行こうって話になってて。今週忙しかったうえに休日出勤になっちゃったから、憂さ晴らししようって」
 よりによって肉かよ。
「ほう、そりゃよございましたな。ちょうど俺も上等な肉を手に入れたところでしてね。どうぞ、楽しんでいらしてください」
「怒ってる?」
「怒ってねぇよ」
「来週、代休取れたら会いに行くから」
「へいへい」
 不機嫌さを隠さずに返事をする。ティリーさんが申し訳なさそうに眉間にしわを寄せた。
 俺だって仕事を断れねぇことはわかってる。職場仲間とのコミュニケーションも大切だ。
 ま、ティリーさんの優等生の元カレなら「がんばっておいで」と笑って送り出すんだろうが、俺はそんなに聞き分けはよくねぇ。きょう死んだら、来週は会えねぇんだよ。

 イライラしながらアステロイドベルトを一人でぶっ飛ばす。
 苛立ちは集中を高める。いつもより小惑星にぶつかるギリギリまで攻め込む。タイムが更新される。
 ティリーさんが助手席にいたら、喜びが二倍になるのにな。普段は口喧嘩ばかりしてるが、気持ちの共有ってやつは感情を増幅する。

 一方で、俺はティリーさんという歯止めが必要だということを忘れてた。

 一人で操縦桿を握ってると、昔の飛ばしが近づいてくる時がある。このまま死んでも構やしねぇって感覚。

壁ぎわバックなし

 恐怖心の欠如が注意力の欠如につながる。

「やべっ!」
 思わず声に出した。

 小惑星の裏から岩石が飛んできた。
 操縦桿を思いっきり切りながら補助ブースターを逆噴射させる。規定量を超えるエネルギーをぶち込んで反転。
 ふぅ。すれすれのところで直径一メートルの岩石が通り過ぎていく。ぶつかったらヤバかった。

 近くで誰か事故ったな。
 ぶっ壊しとくか。
 慣性で飛び続ける岩石をレーザー弾で粉砕する。

 ティリーさんが乗ってねぇから、集中するために警告レーダー切ってたんだった。
 ちっ、補助ブースターが動かねぇぞ。負荷かけ過ぎたな。帰るのに問題はねぇが、出費いくらだよ。今朝の儲けは確実に吹っ飛んだな。

 夕飯の肉はお預け、青菜炒めで我慢だ。これが今日、俺がやったことかよ。さえねぇな。

 ま、生きてるから来週はティリーさんに会える。よしとするか。   (おしまい)

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<出会い編>第一話「永世中立星の叛乱」→物語のスタート版
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ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」