銀河フェニックス物語<出会い編> 第二話(23/25) 緑の森の闇の向こうに
<これまでのあらすじ> 環境保護テロ組織の軍用ヘリはレイターを載せたまま森の奥のアジトに到着した。ヘリから降りたテロリストのゴドはレイターに向けて電子鞭をしならせた。(1)~(22)
ゴド支部長が電子鞭をしならせながらレイターに言った。
「まだ、手がしびれているんだよ。先ほどの借りを返させてもらおうか」「いや、ちゃらにしてやる。返さなくていいぜ」
「うるさい!」
ビッシーン
レイターの右肩を思いっきり叩く。
「うっ」
右肩だけでなく全身に衝撃と痛みが走る。体中が痺れて立っているのがやっとだ。
「ほぅ、流石3Aだな、一撃では気を失わないのか」
ビシーン。
今度は左肩を打った。
心臓が締め付けられるような痛みが走る。誰だ、電子鞭の衝撃は弱いって言った奴。今度、電子鞭でぶったたいてやる。
「お前のせいで、NR本部から命じられた計画が狂ったんだ」
ビシーン、ビシーン
レイターの肩や胴、を次々と連続して叩く。
痛みに耐えながらレイターは思った。こいつ、さっき銃で撃っちまえば良かった。
「ホテルの砲撃から逃がしたのもお前だな?」
「お仕事だからな」
ビッシ、ビッシーン
ゴド支部長はいらだちをレイターにぶつける。
こいつのせいで俺は。
立っていられなくなったレイターが片ひざを付いた。
このまま倒れちまえば楽だ。だが、まだだ・・・。
レイターは肩で息をしながら、ゴド支部長をにらみつけて言った。
「クロノス本社は、工場の拡張に、慎重だ。あんたらさえ、出て、こなけりゃ・・・丸く、収まったんだ・・・」
「黙れ、黙れ! お前のせいで俺は本部から叱責を受けたんだ」
中央部へ昇進するはずだったのに、幹部の声は冷たく最悪のタイミングだった。
昇進どころかどんな制裁が待っているか。
こいつのせいだ、こいつの。
怒りにまかせてレイターの背中をレーザー鞭で繰り返し打つ。
「くっ・・・」
ぐらりとレイターの体が傾き地面に倒れた。ゴド支部長の息も上がっていた。
「ふぅ、気を失ったか。作戦変更だ。こいつを人質にして交渉する」
ゴドが基地へ入ろうと向きを変えた、その時。
基地の中から長身の男が銃を構えて出てきた。連邦軍の制服に身を包み、長い黒髪を後ろで束ねた男。
「連邦軍特命諜報部です。NRパキ星支部長ゴド・ドアール。あなたに逮捕状が出ています」
一目見てゴドはこの男が何者か理解した。アーサー殿下だ。
銀河連邦で知らぬ者はいない。将軍家の御曹司で次期将軍。この男はアーサー・トライムス少佐。
「ど、どういうことだ」
ゴドは事態が把握できなかった。
「この基地は連邦軍が占拠しました」
い、一体いつの間に。
「こいつがどうなってもいいのか」
ゴドはあわてて足元に転がっているレイターに銃を向けた。
その瞬間、レイターが目を開いて言った。
「アーサーに聞いたって『どうなってもいい』って答えるだけだぜ」
バシッツ。
ゴドが引き金を引くより早く、レイターがゴドのすねを蹴り飛ばした。
はずみで電子鞭が転がる。
レイターは手錠からするりと腕を抜くと電子鞭をつかんだ。倒れた体勢のまま鞭をしならせる。
「お返しのお返しだ」
ビッシーン。
電子鞭で打たれたゴドの体が地面へと倒れた。
*
「立てるか」
レイターにアーサーが手を差し出した。
その手を掴んで立ち上がりながらレイターは文句を言った。
「親切なふりしたってわかってんだよ。ったく、あんた、俺が叩かれてるの止めもせずにゆっくり見てただろが。相っ変わらず性格悪りぃな」
レイターの指摘をアーサーは否定しなかった。
レイターが倒れずに時間を稼いでくれたのもわかっている。
「いいリハビリになっただろう?」
「はぁ?」
怒っていいのか、呆れた方がいいのか反応に困るレイターにアーサーは笑顔で言った。
「冗談だ」
「あんたの冗談が面白かった試しがねぇよ」
「まだ本調子じゃないところ、悪かった」
「悪いと思ってる奴がこんなハードな仕事当てるかよ。ったく、礼も詫びもいらねぇから、その分手当てをはずめよ」 (24)へ続く
ティリー「サポートしていただけたらうれしいです」 レイター「船を維持するにゃ、カネがかかるんだよな」 ティリー「フェニックス号のためじゃないです。この世界を維持するためです」 レイター「なんか、すげぇな……」