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#レコーディング
020. ストレスをかけない録音計画を
「いい画を撮りたい」「いい音で録りたい」、これが技術者の性なわけですが、主役は音楽家、演奏者であることを忘れてはなりません。その昔、とある音楽祭の公式録音に参画していて、通常の録音チームに加え放送局による収録が重なった現場がありました。マイクロフォンは通常の2倍量となり、本当に「林立」という言葉がふさわしい状況。当時は録ることで頭がいっぱいでしたが、今思い返せば、奏者のみなさんにとっては(収録に慣
もっとみる2021年5月末で、マガジンを廃刊します
マガジンを購読くださっているみなさま、いつもお読みいただきありがとうございます。しかしながらタイトルの通り、廃刊することを決めました。
記事番号が3桁であることからもおわかりいただけるかと思いますが、創刊当初は長く続けようと意気込んでいました。お伝えしたいことは、まだまだたくさんあります。
ところが変化の早い時代、予期せぬお仕事をいただき、執筆のための時間を確保することがいよいよ難しくなり……
019. リバーブを足すか否か
「響かないホールだから、リバーブを足しましょう」
こう考えるレコーディング・エンジニアは少なからずいて(いや、むしろ大半がそうかも知れません)、それが親切心であったりもするわけですが、果たして
人工的な(に)響きを加えることは、良いことなのでしょうか?
今でこそ様々な “プラグイン” でリバーブを加えることができますが、機材がなかった頃は「エコールーム」と呼ばれる風呂のような “響く部屋”
018. ケーブルの巻き方
私が「8の字巻き」を知ったのは、大学生になってからでした。その画期的な巻き方に感動し、掃除機のコードをわざわざ巻いたりして練習したものです。
大学のサークルの先輩から教わった方法で巻き続けてきたわけですが、実は別のアプローチがあると知ったのはその何年も後。“手の返し方” が違うんです。今ではケーブルの硬さによって使い分けていますが、後で知った方法の方が早く巻けるので、大学時代に知ったアプローチは
016. L と R を確認する
これ、かんたんなようでいて、うっかり間違えやすいんです。私も幾度となく間違えてますので(後で気づきますが)、失敗しないための工夫を共有したいと思います!
「L と R」は、いうまでもなく「左と右」のこと。
ワンポイント・ステレオ録音なら、左側(下手側)のマイクロフォンを L ch に、右側(上手側)のマイクロフォンを R ch に、といったようなことですね。
「……なんのことはない、間違える
015. 基準信号(いわゆる1kHz)について
配信担当の方から「音声さん、1k(いちけー)ください!」のように言われることがあります。
この「1k」とは、1kHz = 1000Hz(ヘルツ)のサイン波(正弦波)のこと。
近年は(ラウドネスメーターを使うようになったこともあり)VU(ブイユー)メーターを載せた機材をあまり見かけなくなりましたが、このメーターが「0(ゼロ)VU」を指す「ピー」という「1k」を出力することで、
014. モニターは 「鏡」
生配信やライブ・レコーディングの現場では、録った音を演奏者がその場で聴くことは滅多にありませんが、いわゆる「セッション録音」は、“録っては聴き” を繰り返しながら進むことが多いです。
となると、音を聴くための環境も整える必要があります。コンサートホールはレコーディング・スタジオではありませんから、大きめの楽屋に録音室を仮設したり、録音車(機材一式を備えた大きなトラック)を横付けしたりします。それ
013. 「先読み力」を養う訓練
この「録音note寺子屋」は「音を見る」というテーマから始まりましたが、「目に見えない音をいかに捉えるか」は録音の肝といえます。
では、見えないものを捉えるには、どうすれば良いと思いますか?
やはり、感覚を研ぎ澄ませる必要がありますよね。
未来の天気を知りたいとき、空を眺め雲の動きを見て、湿度や風の流れを感じて判断できるでしょうか? 天気予報のアプリを立ち上げるだけで済ませているのが現実かと
012. スポット・マイクロフォン
室内楽やオーケストラの録音における「マルチ・マイク収録」では、主たるマイクロフォンと、補助的に使う「スポット・マイクロフォン」を用います。
そもそも、なぜ複数のマイクロフォン(以下、マイク)が必要になるのでしょうか。私の録音の師の、そのまた師であるオノ・スコルツェ氏は、フィリップス・クラシックスの録音を支えたバランス・エンジニア。晩年は「ワンポイント・ステレオ録音」に辿り着き、「この2本で録れる
011. マイクロフォンを動かすか否か
前回は「オーケストラや室内楽を録る際に最も重要なこと」でしたが、今回も中々に重要な内容です。
とあるレコーディング・セッションで、テスト録音を聴き返したところ、低域が豊かすぎる――つまり、もわっとした音になっていたのです。
そこで、とある演奏家から、「マイクの位置を少し下げたらどうか」と提案がありました……的確な判断に私は関心しましたが、とても傲慢とも思いました。たしかに低域はスッキリするでし
010. オーケストラや室内楽を録る際に最も重要なこと
前回は、「砂漠が、単なる “砂場” になってしまいます」という意味不明なタイトルでした。“正解” として習ってきたことが、時と場合によっては正解でなくなる――こういったことは割とたくさんあって、それらは「目からウロコ」であったり「新しい視点」であったりするわけです。
私が「新しい視点」と出会うキッカケとなったのが、とある1枚のディスク(SACD)でした。その録音に感銘を受け、ブックレットのクレジ