多分、忘れるための恋。
先日の1年前に付き合っていた元彼の話に一瞬登場した、マッチングアプリで出会った人との話を。
初めての出会い方、初デートの困惑
彼は私より2つ歳上だった。
彼とはサンリオの某ソロアイドル犬キャラクターが好きという、まあ男女では珍しい共通点があった。
それがきっかけでメッセージのやり取りをするようになり、大阪であるリリースイベントに行かないか、と誘ったのは確か彼の方だった。
サンリオの人気は侮れないもので、行くとなると早朝から並ぶことになる。
最初こそ渋ったものの、やはりキャラクターに直接会えてツーショットまで撮れる数少ない機会を逃したくないという欲には抗えず、一緒に行くことになった。
そしてイベントの1週間前。
作戦会議をする、という名目で、初めてのデート。
第一印象としては、まあとにかくイケメン。
くっきり二重にマスクをしていてもわかる高い鼻。
とにかく目鼻立ちが整っていることが一目瞭然。
そしてもうひとつ、女慣れしてそう(これはイケメンという印象を受けて一層感じたことかもしれないが)という印象も受けた。
それからカフェに行って他愛のない話をした。
話してみた感想としてはいたって普通。楽しかった。
彼が引き出し上手でたくさん質問をしてくれて、気まずい時間もなかった。
問題だったのはそのあとである。
お互いにまだ時間があるということで、スターバックスでコーヒーを飲みなおすことにした。
そのときに言われたことが問題だった。
「写真詐欺多いのに、写真よりもかわいくてびっくりした」「マスクしてない方が好き」「めっちゃタイプ」「歳下って幼い印象あったけど、もぐちゃんは考え方も大人っぽくてしっかりしてるから、歳下の子で初めて付き合いたいなって思った」
…などなど。要は口説かれたわけだ。
嫌ってわけじゃない、けど。
なんで私?イケメンが?私を口説いてる?え?なんで?
当時の心境としてはこんな感じ。
戸惑いと驚きが入り交じった状態で、告白にすぐ応えることはできなかった。
返事を保留した状態でスターバックスから出ると、サラッと手を掬われて、気が付けば繋がれていたことは忘れもしない。それにドキドキしなかったと言えば嘘になる。
その後何人かの友達にも相談したものの、最終的には彼が言っていた「付き合ってみて合わなかったら別れたらいいし、お試しくらいの感じでもいいから」という言葉(というより、押し)に負けて付き合うことになったのだが。
とにかく男友達が少なく男慣れしていない私は、付き合った経験も人並みにあって女慣れしてそうな彼が少し怖かった。
男慣れしていないことを見透かされて遊ばれているんじゃないか、とか、どうせ付き合っても抱くだけ抱いてポイするんじゃないか、とか。
いろんな考えと感情が渦巻いた。
初回のデートで口説いてくるあたりどうなんだ、というのが私の正直な感想ではあったが、話していて楽しかったし、顔もタイプ。
告白だって嬉しかった。
嫌ってわけじゃない、けど。
どうしてこのとき、嫌じゃないのに告白を受け入れられなかったのか。
それは、付き合うことに対する私の考えがあった。
そもそも付き合うとは何なのか
私にとって、付き合うことは幸せになるための選択肢のひとつだった。
私はひとりっ子であることもあってか、元来1人でも平気な人間だ。
別に彼氏彼女がいなくたって死ぬわけじゃない。
ひとりでも現状が幸せだと思えているならそれでいいと思っている。
大学入学以前は恋人らしい恋人がいなかったが、 今と変わらず充実していたうえ、恋人がいても辛い思いをしている友人が身近にいたことから、恋人がいるから幸せであるとは限らないと感じていた。
この人と付き合って私は幸せになれるのか。
はたまた付き合わない方が幸せなのか。
そんなことをぐるぐると考えつつも、その当時の私は1人でも平気ではなかった。幸せではなかった。
なぜなら、当時の私には癒えきっていない夏に付き合っていた元彼の穴があったから。
元彼の穴
私にとって元彼は、付き合う前から付き合っている間、そして別れてから今に至るまで、大学で知り合った人の中で数少ない、本音でなんでも話せる友人だった。(元彼との話はこちらから。)
そんな相手が恋人だったからこそ、その穴はより大きく深かった。
返事を保留している間、友達に相談したと前述したが、その「友達」には彼も含まれている。
その当時の私はアプリを始めていて、彼を見かけても話しても胸が痛むことがなくなったために、彼のことを完全に吹っ切ったつもりでいた。
今思えばそんなことは全くなく、復縁したいほどの恋心はなかったものの、心の内ではまだ僅かながら恋心が残っていた。
とはいえ、恋愛相談をする程度には吹っ切れていたが。
たった数か月で完全に吹っ切るには、彼の存在は私にとってあまりにも大きすぎた。
だから、とにかくその穴を埋めて、彼のことを「友達」として昇華させたかったのだと思う。
彼に初デートの一部始終を話して、付き合うか悩んでることを告げれば、
「もぐの性格的に、少しはいいと思ってるから悩んでるんやろ?まあ、仮に付き合ってあかんかったとしても、いい恋愛経験やん」
と、誰目線だかわからないことを言われた。
誰目線?と笑って突っ込みながらも、少し胸がキュッとした。
彼のこういう、どんなことも前向きに、経験として捉えられるところが好きだったんだな、と思わされた。
この穴はどうにもこうにも塞がりそうになくて、結果として押しに押され負ける形で、私の心の内では穴を埋めるために、付き合うことになった。
多分、忘れるための恋。
本当に自分本位な最低女だと我ながら思う。
元彼の存在を心の内にちいさく抱えたまま、それを黙ったまま、彼と付き合った。
そのツケなのか何なのか、その後の付き合いは楽しいときもあったものの、精神的に不安定になって体調を崩すほど、辛い期間を過ごすことになったのだが。
今思えばこれは私にとって、大きくなりすぎた元彼の存在を忘れるための恋だったのだろう。
今となってはすっかり昇華された想いだが、それもアプリで出会った彼に、良くも悪くも翻弄されているうちにどうにかなった結果だ。
結果として辛いことが多くあったけれど、アプリで出会った彼と過ごした時間も、今となってはいい思い出である。
恋の穴を埋めるには、やっぱり恋しか効果がないのかもしれないと思った出来事だった。
届かぬ私信
私をよく理解してくれた元彼へ
たくさん迷惑かけてごめん。
きっとこれからもたくさん迷惑をかけるだろうけど。
厄介女の私を見放さずにいてくれてありがとう。
君の優しすぎるところとか、自分にストイックすぎるところとか。
ときどき心配になるけど、そういうところが君の魅力だなって思うし尊敬してます。
これからもどうぞよろしく。
アプリで出会った元彼へ
元彼を忘れるためなんかに利用してごめん。
辛いことも多かったけれど、あなたと言葉を交わして過ごす時間があの頃の私は好きでした。
私にしかないものなんてないって思ってたけど、最後に教えてくれてありがとう。
私に歩み寄ろうとしてくれてありがとう。
でも正直、あなたに傷付けられることが多すぎたので、タンスの角に何度も足の小指を引っかけたり、何もないところで盛大に転んで恥ずかしい思いをしたり、ちょっとした痛い目を見てほしいなって思ってます。
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