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なぜコロナ禍に新しい音楽ジャンルが爆誕しなかったのか?

ペストによってルネサンスが起きたと言われています。
教会で祈りを捧げることが逆効果となり感染が拡大しました。ヨーロッパで2500万人が亡くなったと言われます。

人々は恐怖の中、それまでのキリスト教を中心とした考えから解放され、文化的発展へと繋がりました。
ギリシアやローマの文化を取り入れたり、人の身体や、人の視点を重要視するなど、ルネサンスは絵画・彫刻・建築・音楽など様々な分野で発展を起こしました。


ではなぜコロナ禍にルネサンスは起きなかったのでしょう?

新たなジャンルが発展するキッカケ

社会に急激な変化が訪れた時、これまでの歴史で様々な音楽が生まれてきました。

・フランス革命→ロマン派
王族や貴族の時代が終焉し、市民社会へとクラシック音楽が解放されました。
ベートーヴェンは古典派ながらメッセージ性の強い楽曲を作りました。その影響を受け、彼の死後には感性的で個の尊重を求めたロマン主義が発展しました。


・黒人奴隷→ゴスペル・黒人霊歌
キリスト教への改宗を行う過程で、文字が読めなかった黒人奴隷たちが、即興性やコールアンドレスポンスを取り入れ、来世への祈りを込めた癒しの音楽を歌ったのが黒人霊歌です。旧約聖書に見立て、北部へ逃げるためのメッセージを歌詞に忍ばせるなどしていました。
さらに独自の教会を手に入れた黒人たちは、手拍子や打楽器などで激しさを増し、キリストを称える解放の音楽、ゴスペルを生みました。
黒人解放運動との親和性も高く、キング牧師の有名な演説ではマヘリア・ジャクソンが、黒人霊歌とゴスペルを一曲ずつ歌っていました。


・禁酒法→ジャズ
禁酒法が作られた1920代はジャズエイジと呼ばれています。マフィアが密造酒を出しジャズを演奏する「スピークイージー」という違法バーが蔓延っており、ジャズが発展するキッカケとなりました。
当時のジャズは一般大衆向けのダンスミュージックとしての側面が強いスウィングジャズでした。


・クラック流行→ヒップホップ
安価なコカイン、クラックの流行により、ヒスパニック系やアフリカ系のニューヨークの貧困街で犯罪が急増し、格差が広がりました。
さらに1986年の薬物乱用防止法により差別的な取締が強まり、貧困を抜け出せない構造が出来上がりました。そこでギャングスタラップ、コンシャスヒップホップなどのメッセージ性の強いラップが発展しました。


これらのムーブメントとの違いは何だったのでしょう?

1. 新たな音楽は、密な空間で生まれる

音楽が発展した場所に注目すると、クラシックやゴスペルには教会が、ジャズにはスピークイージーが、ヒップホップにはサイファーという特有のコミュニティがありました。

しかしコロナ禍において、物理的な距離だけでなく、ソーシャルディスタンスの文字通り社会との距離を生む必要があり、コミュニティ形成が希薄となりました。

濃度が薄まると化学反応の速度が落ちるのは理科で習いましたね。安宅和人さんのシンニホンでも「風の谷のナウシカ」のような開疎化を称えられてましたが、イノベーションとの相性は悪いのかもしれません。


おうち時間でウクレレやギターの売り上げが倍増し、趣味として楽器を始める人が増えても、独創的な音楽を育む空間がなかったのです。


2. ニューノーマルを履き違えた

ニューノーマルは、元々一人ひとりが違う多様性を許容する社会へ向けた希望のコトバでした。

しかし現実は、リモートにZoomを使って、飲食店ではアクリル板を敷くという、個人を檻に囲ったような画一的な社会となり1年以上が経過しました。
現状を打開するのでなく、最適化させるというマインドになっているのではないでしょうか。

音楽業界も配信ライブを行うだけで、何か新たな一体感を付加することもなく、劣化版を生むだけでした。
かつてのボカロブームのような一部のネットが爆発することもなく、入門動画ばかりがYouTubeに溢れる始末に。

いつか戻ってくる日常への待機期間のようで、いち早く感染の落ち着いた台湾やニュージーランドのフェスに感動すら感じてしまいます。


今後の可能性はテクノロジーにある?

コロナでは危機が起こっても、それを復興へドライブさせる空間が足りていませんでした。
そこで今から新たな可能性を起こす鍵はテクノロジーの活用にあるのではないでしょうか。

米津玄師さんがフォートナイト上でライブを行うなど、3Dゲーム空間での盛り上がりはVRの発展と共にどんどん加熱していくでしょう。

様々なデジタルテクノロジーが普及してきて、まだまだメディアアートの域を出ないものも多いですが、非常に興味深いですね。
何か新しい音楽が出てくる前夜な気がしてなりません。ルネサンスを起こしてやる!

よむよむ。

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