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二杯のビールを飲みながら【エッセイ】

仕事が終わり、帰宅した。
ビールのプルタブを開けて、缶を持ち上げる。
自分で自分のコップに注ぎ、一口、飲んだ。
「うまい」


初めて、ビールを飲んだのはいつだったか。
ティーンエィジャーの昭和の時代で間違いないはず。
率直に苦い、まずいであり、大人たちはよくこんなものを飲めるなと思った。

当時は、キリンラガービールを飲む人が多かった。
味、香り、苦みがしっかりしてビールらしいビール。
父が毎日、すごく飲んでいた。

はたち前後で、甘味のあるチューハイを飲むようになる。
アルコールによる酔いは楽しい。
いつしか、ビールも飲むようになる。
友達と居酒屋に行けば、とりあえず、ビールからみたいな空気があったり、うまいと言ってるのと聞くと、そうなのかと思い始めたのだ。

苦いと思ったビールも飲み始めたら、悪くはない。
むしろ、苦みは特徴であり、それがビールのうまさでもある。

キレに極振りしているようなアサヒスーパードライ、同様にコクのサッポロ 生ビール 黒ラベル、値段は少し高いが旨味あふれるヱビスビール。
その他、様々なビールを飲んでいると違いが分かり始める。
自分は同じ銘柄を飲み続けるタイプではなく、気分や体調によって、色々変えている。

数年経つと、ローソンから「ゴールドマスター」というビールも産まれる。
(正確にいえば、発泡酒だが分類上は、ビールになっている)
飲んでみると、まずくはないがおいしいといえない。ビール初心者向き。
値段が安いだけでビール風味の酒。

ノンアルコールビールというビールが発売される。
?? ビールだけど、アルコールがない。
飲んでみると、まずい。というか、存在理由がわからない。


一杯目のキリンラガービールを飲み終えると、缶にある麒麟を見た。
亡き父を思い出す。ビールの飲み過ぎが遠因だった。
ビールは悪くない。酒に呑まれた父が悪い。
キリンラガービールは、昭和の風味がする。懐かしい。
二杯目のゴールドマスター生を取り出し、飲み始める。「生」になり、少しおいしくなったか。
これの良い所は、まず値段が安い。懐事情が厳しいときにありがたい。
そして、まずいのが良いのだよ。三杯目を抑えてくれる効果がある。
飲み過ぎは良くないからね。
先日、友達の家に遊びに行ったら、ノンアルコールビールが箱買いで置いてある。買う人いるんだと驚いた。
最近のノンアルコールビールは、レベルが上がってうまいと言う。
アルコールは摂取したくないが、ビール味が好きな自分にはピッタリだと。
飲ませてもらうと確かにおいしかった。


若いときは、判断基準がすべて自分であった。
歳を取るとわかってきたのが、モノの見方は多様であり、目線により評価は変わる。
他人だけでなく、自分の中にある、見方と目線を変えることで、物事の世界は変わるということ。
歳を取るのは、老化という意味で悪いことばかりではない。
世の中のことが少しづつ理解できて、今までのことがリンクすることが多くなり、そのことで楽しいと思えることも出てくるのであった。

(終)

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