見出し画像

夢の中と現実がシンクロした話

自室の椅子に座って、くつろいでいた。
ハッとして時計を見る。「うわっ、遅刻だ」
まわしは、すでに締めていて、急いで稽古場に向かった。

武蔵川部屋の朝稽古の始まる時間には、すでに10分が過ぎている。
中に入ると、先輩力士から罵声を浴びた。
「遅刻は三日連続だぞ。いい度胸してるな!」
「てめえ、いい加減にしろよ!」
「すみません」 平謝りするしかなかった。

師匠である武蔵川光偉 みつひで (第67代横綱 武蔵丸 むさしまる)がこちらを見ている。
ただ、何も言わず、悲しそうな目をしていた。

異国のアメリカ、ハワイから日本にやってきて、言葉や習慣の違いに苦労して、当時、強豪力士がひしめき合っていた中、大変な努力を重ねて横綱になった人。自分は遅刻を重ねてしまうことに情けなくなってしまった。下を向いて、泣きだしそうになる。

近くにいた力士が「しっかりせいや!」と言いながら、僕の背中を平手でバシっと叩いた。

夢から めた。さっきまでの夢は覚えている。
なぜ、力士になっていたんだ?
それより、本当に背中が痛いんだが……。

そこは仕事場の昼の休憩室で、椅子に座って前かがみになって寝ていたらしい。休憩時間が迫っていて、起こすために同僚が豪快に背中を平手でバシっと叩いたのが真相。
夢と現実がシンクロするなんて奇妙な体験である。

(終)

ぜひ、サポートにご協力ください。 サポートは評価の一つですので本当に嬉しいです。サポートは創作のアイデア探しに充てさせていただきます。