バカと無知
橘 玲の「バカと無知」を読んだ。
橘さんの本はいくつか読んだことがあるが一番読んでいて楽しかった気がする。
本書は
PartⅠ:正義は最大の娯楽である
PartⅡ:バカと無知
PartⅢ:やっかいな自尊心
PartⅣ:「差別と偏見」の迷宮
PartⅤ:すべとの記憶は「偽物」である
の5章立てであった。
それぞれにさまざまな小項目があり、簡潔に根拠や要点が書かれていて読みやすかった。
PartⅠの部分での、脳は自分より優れた者に対しては「損失」、自分より劣った者に対しては「報酬」を感じるというのがおもしろかった。
その働きが人間関係でのストレスなどにも繋がっているんだなと思った。
また、そこに「正義」が加わった時には、自分より上のものに対しては正義によって叩きのめす、自分より下のものに対しては正義を振りかざしてマウントを取るというのは、興味深く説得力があった。
本のタイトルと同様の題のPartⅡでは、バカについて、バカがいることについての影響などが淡々と書かれていた。
出された問題に対してバカと利口が話し合って回答すると、利口が一人で考えるときよりも正答率が下がるという事例を挙げ、バカに引きずられる効果が説明されていた。
本書にも書かれていたが、中国などに比べて民主主義の国がうまくいかない部分があるのは、このバカに引きづられていることが関係しているというのはあるのかもしれない。
Part4での差別や偏見、思い込みなどについていろいろな事例を交えて書かれていてとても興味深かった。
一般的に良いと思われている期待や信頼、道徳によるよくない側面がそれぞれ書かれていてなんともいえない感じがあった。
特に道徳の貯金ができると差別的になるというのは驚いた。
善行(+)により道徳に貯金ができると、次に悪行(ー)をしてもプラマイゼロで許されると無意識に考えるというのはなんとも非道徳的だなと思った。笑
また、道徳的な振る舞いは同じ集団(身内)に対してのみ行われて、他の集団に対しては道徳的なふるまいをしているつもりがしていないことなどもあるのだろう。
PartⅤでは人のトラウマなどについて書かれていた。
全体的に問題や状況について簡潔に記載されているが、結論のようなものはあまりないような気がした。
読んで自分で調べて考える必要があるようだ。
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