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「ファインマン・テクニック」――私の脳を鍛えてくれた方法論

「ファインマン・テクニック」をご存じだろうか。ノーベル物理学賞を受賞した物理学者のリチャード・ファインマンが実践していた学習方法で、セールスマンだった父親から教わったのだという。

Webメディア「Gigazine」によれば、ファインマン・テクニックは、下記のようなプロセスで構成されている。内容は私の理解に応じて要約した。

なお、詳細をご覧になりたい方は次のURLからご参照いただきたい。https://gigazine.net/news/20160627-the-feynman-technique/。なお、こちらのGigazine記事は海外ブログメディア「Farnam Street」の記事をベースに制作されているようだ。同メディアの記事はこちら。https://fs.blog/feynman-technique/

■ファインマン・テクニックのプロセス

▼1:「概念」を選ぶ

自分が学習したいテーマを概念として設定する。例えば「重力」「世界史」など。設定したら、白紙の冒頭に書き付ける。

▼2:その「概念」について「人に教える」

次に、その「概念」について、「誰かに教える」かのように、自分が知っていることを書き出していく。このとき、教える対象は、生徒あるいは子ども(つまりは初学者)を想定する。理由は、初学者に教えるのだと想定することで、「平易な言葉で説明しよう」と意識するためだ。特に成人は概念を説明する際に、得てして専門用語を駆使して済ませようとする。これは概念の明確な理解をあいまいにしてしまうおそれがある。

▼3:教科書(元の資料)に戻る

初学者にその概念を教えるべく、自分が知っていることを書き出していくと、「自分が知っている範囲」が見えてくる。これは、知識の欠如に気付くことを意味する。これこそが、大変価値のある成果だ。その概念について欠如している話題があるとわかったら、改めて、その概念が記述してある元の資料に戻って「再学習」する。そして、追加でわかったことを書き込んでいく。

▼4:再検討と単純化

以上の段階を踏むことで、「概念」と「要点」が書かれたノートが完成した。最後に、このノートを読み返して、自分が専門用語や複雑な用語を使っていないかを再確認する。不明瞭な説明や複雑な記述があれば、さらにそこを再調査する。

ファインマン・テクニックの概要は、以上である。

■駆け出し取材記者のトレーニングはファインマン・テクニックそのもの

振り返ると、私の初期のキャリアであった取材記者は、その業務プロセスがファインマン・テクニックとほぼ同じである。「読者に向けて記事を書くこと」とはすなわち、「読者に教えること」である。良質な記事はおしなべて、読者が苦労せずに「なるほど」と読み進められる文面になっている。

私は20代の頃、取材する前に必死になって取材の予習をしていた。しかし、取材の予習にどんなに時間をかけたとしても、取材で必要な事項を聞ききれず、記事を書く際に苦労することも多かった。

しかし、ある時、気の利いた後輩記者からこんなノウハウを教わった。「取材する前から、事前に分かっている範囲で"想定記事"を作ってしまう。そうすると、取材対象の情報がよく頭に入ってくるし、取材時に記事のために何を聞けば良いのかが見えてくる」と。

なるほどそうかと思って、事前に"想定記事"を書くことを心がけたら、取材の成功率が高まってきた(もちろんこれは諸刃の剣で、想定記事に自分の意識が引っ張られてしまい先入観を拭えないことも意味する。この問題はまた別の機会に考えたい)。

だんだんと回数を重ねていくと、「記事を書き終えたら、対象領域のことがよく理解できるようになった」という経験が増えた。理解が及んでいる対象領域が増えると、対象領域同士の関係性も見えてくる。そうするとますます知識が定着しやすくなり、閣僚期に対する理解も深まる。私の編集者・取材記者としてのスキルは、こうした「理解の積み重ね」に支えられているのかもしれない。

私は20代よりも30代、30代よりも40代、そして50代に突入した今のほうが、物事の理解力は高いと自負している。その理由は、ファインマン・テクニックを、それとは意識せずに、日々の仕事で実践し続けてきたからではないだろうか。

■海馬の神経細胞は大人の脳でも増える

私自身のこうした実感を補強するデータがある。1998年、スウェーデンの研究者と米ソーク研究所の研究者らが、「ヒトの大人の脳でも海馬の神経細胞は増加する」という調査結果を示した(Eriksson PS et al. Neurogenesis in the adult human hippocampus. Nat Neurosci, 1998, 4 : 1313-1317.)

私が子どもの頃は、「脳の成長は10代で伸びるが大人になってからは止まり、あとは衰える一方である」という説が、一般の言論空間を支配していた。そこから考えると、私が20代だった頃に発表されたこの発表は、本来的に考えれば、実にパラダイムシフト的なものだったはずである。

しかし、私の周囲の人々だけかもしれないが、大人になってからの「脳の成長」を重視していない向きが強いように思う。

どういうことだろうか。次の研究資料に、印象深い一文が書かれている。

Santiago Ramon y Cajal(1852-1934)は,1906年に「神経系の構造研究」,でノーベル医学生理学賞を受賞.これは脳がニューロンのネットワークを基盤として機能することを示唆した,記念碑的な仕事として知られる.しかし彼は,神経の再生には否定的であった.1928年の論文で,「成体ほ乳類の中枢神経系は損傷を受けると二度と再生しない」と述べ,以来,“中枢神経の神経細胞は増殖しない”とする説が 70年にわたり維持された.

(出所:「脳は筋肉と同様に変わるのか?:認知機能を高める運動プログラムのあり方を探る」、体力科学 第63巻 第 1 号 40-46(2014)、URLはhttps://www.jstage.jst.go.jp/article/jspfsm/63/1/63_40/_pdf

特に最後の一文――「以来,“中枢神経の神経細胞は増殖しない”とする説が 70年にわたり維持された.」は象徴的だ。

私も含めた多くの壮年世代の人は、この「70年の呪縛」にしばられていないだろうか。

確かに、人は年齢を重ねれば、相応の衰えは否めない。だが、私たち壮年世代が子どもだった頃とは違って、人の可能性を示すデータが次々と出てきている。

こうしたデータをみると、自らの怠惰や失敗について「もう齢だから」との言い訳ができなくなることになる。

だが、心強くもなる。月並みな宣言になってしまうが、年齢のせいにせず、より多くの可能性を追求していきたい。

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