新時代に向けた美容メーカーの姿勢とそのビジネスモデル。
プロローグ(前提)
まずはじめに、極論「メーカーのお客様はサロンではない」ということに向き合いましょう。現場で働くスタッフは、与えられた仕事(施術)を真剣に行っています。メーカーは現場のことを考え、販売促進の教育や講習会を提供することもありますが、実際には時間だけが共有されていて、何も残らないこともあります。美容業界の社会情勢や労働環境、条件を考えると、全てではありませんが、そう考えるのが自然です。そして、スタッフの入れ替えが激しく、積み上がり難い環境があります。
厚生労働省の令和4年度賃金構造基本統計調査によると、エステティシャンの平均年収は、35.3歳で323万円ほどとなっています。
・平均年齢:35.3歳
・勤続年数:6.2年
・労働時間/月:166時間/月
・超過労働: 10時間/月
・月額給与:253,500円
・年間賞与:186,000円
・平均年収:3,228,000円
エステティシャンの勤続年数を下げている要因の一つは、給料が低いことです。エステティシャンの平均年収は約320万円、平均月収は26万円、そして平均勤務年数は約6年です。仕事の大変さに見合った給料をもらえていないと感じるエステティシャンは少なくありません。
エステティシャンが仕事を続けにくい理由は、給料が安いだけではありません。他にも仕事がハードなことがあります。エステティシャンは朝から晩まで立ちっぱなしで、痩身マッサージなどは見た目以上に力がいります。そのため、体力的にきつくて辞めてしまう人もいます。
他にも、福利厚生が充実していないことも挙げられます。育児休暇などが取りにくいため、結婚や妊娠出産の時に仕事を辞める人が多いです。さらに、エステサロンによっては毎月必要な仕事量が決まっており、その量を達成するのは厳しいと感じて辞める人もいます。
厚生労働省の調査によると、理・美容師の平均月給は25万5千円で、平均賞与は5万3千円でした。そのため、年収の平均は約311万円と推定されます。平均年齢:31.2歳
平均勤務年数:6.5年
平均の月額給与:255,000円
平均賞与額:53,000円
平均年収([平均の月額×12]+平均賞与額):3,113,000円
一般の会社でも、年齢や性別によって給料が違ってくることがよくあります。美容師の場合も同じでしょうか?さっきの調査結果を見て考えてみましょう。男女の平均給料を年齢ごとに見ると、10代や20代ではほとんど差がありません。しかし、30代前半になると50万円ほどの差が出てきます。
女性は多くの人生の重要なイベント、例えば結婚や出産などを経験します。年齢的にも、出産をする時期に差し掛かることが多いですから、生活スタイルの変化にも関係しているのでしょう。とは言え、美容師として最高になるために、たくさん練習して国家資格を取得しました。でも実際に働き始めると、自分の思い描いた働き方とは違うことに気づくことがあるのかもしれません。
厚生労働省の「令和2年賃金構造基本統計調査」によると、美容師・理容師の平均勤続年数は5.2年です。これは全産業の11.9年に比べて短く、男性は13.4年、女性は9.3年です。つまり、美容師・理容師は他の職業と比べて離職が多い職業です。
離職の理由はいくつかありますが、美容師にとってよくある悩みとしては、職場の人間関係が難しい、賃金が低い、労働時間が長い、スキルアップやキャリアアップが難しい、自分の希望するスタイルと合わない、などがあります。
現場で働くスタッフは、新商品の販売促進のために研修に参加して頑張って聞くものの、なかなか頭や心に残りません。現場スタッフの言葉を私が代弁すると、「お客様対応だけでも大変なのに、まだそれもやらなきゃいけないのか!もっと給与を上げてほしい!」と言いたいのではないでしょうか。ただし、これは全てのスタッフに当てはまる話ではありません。
そして、多くのメーカーが無視しやすいのは、一つのサロンを複数のメーカーが共有していることです。つまり、店舗のスタッフは、一つの企業の商品だけを扱っているわけではなく、複数の企業との関係によって、店舗は成り立っていることを、企業は都合の良い解釈で、その事実に目をそむけていることです。
特にエステティック業界は、年々需要が減っている傾向があります。サロンのオーナーたちは、スタッフがやりがいを感じられるよう努力していますが、実際には困難な状況に直面しています。
メーカーは真剣にこの問題に向き合い、サロンオーナーやスタッフの代わりに解決策を見つける方法を考える必要があります。具体的な問題を把握し、一緒に取り組むのではなく、メーカー自身が犠牲を払いながら現場と向き合う姿勢が重要です。
これらを考慮して、新しい時代におけるメーカーのビジネスモデルについて、分かりやすく解説し、多くのメーカーの発展に貢献できることを強く望みます。
新時代における美容メーカー像
”メーカーである事を忘れ、常に相手の立場になって考える”
時代とともに変化する市場の動きや顧客のニーズ、個々の顧客に合わせた対応など、複雑化した市場で成功するためには、持続可能性を高めるための重要なポイントを押さえておく必要があります。以下にそのポイントをまとめます。
誰の利益に貢献するのか?(経営方針)
商品を販売する場合は、経済的な利益と生活の質の向上の両方を考慮する必要があります。エステティック業や理美容業などの専門市場では、必ず店舗や従業員に経済的な利益をもたらす必要があります。
この考え方から外れると、メーカーとしての立場がはっきりしなくなり、社員や顧客からの支持を得にくい状況になります。時には、メーカーは即時の利益を諦めて、業界に特化した姿勢を貫く必要があります。
ここでは、エステティック業を例に話を進めます。エステティックサロンには経済的な利益を提供し、お客様には生活の質を高めることを目指して経営判断していく必要があります。
”商品以外に”何を提供するのか?
商品をわかりやすく伝えるためには、キャッチコピーを考えることが必要です。しかし、逆により深い情報を提供することも重要です。今までお客様に伝える必要がないと考えられていた成分の役割や、効果については、薬事法に触れない範囲で、マニアックに情報を発信することも重要になってきました。
お客様自身が考える美しさを提供する為に、商品だけでなく、その知識や情報も提供する事が、今求められています。
たくさんの化粧品や美容グッズがたくさんあります。店頭の広告や雑誌の言葉、人からのおすすめ、SNS上の口コミなど、たくさんの情報があります。メーカー各社は目を引くために努力しています。その結果、商品の効果を超えた言葉に引かれて、何度も異なる商品を試すことになりました。結果、美容難民を生み出しているように感じます。
目で見る情報だけでなく、聞いて分かる情報も同時に伝える必要があります。印象で選ぶのではなく、理解して選ばれる努力がメーカーに求められています。パッケージでは伝えられない、開発の経緯や過程、思いなど、より深いメッセージを知りたいお客様が増えています。
お客様にご満足頂けるための知識を、思う存分提供する事が、これからの時代必要です。
どのように商品を提供するのか?(営業方針)
前述の通り、現場スタッフはお客様に施術を提供することに集中しているため、メーカーは代わりに、商品の良さや利用することで得られる利点をお客様にわかりやすく説明するコンテンツが必要です。
如何にして営業効率を高められるのかを考え、戦略化する必要があります。
1.核となるターゲットを決める。
私たちの業界では、長い間肌の悩みや理想の自分像を追求しているお客様が必要とされています。彼ら彼女達は、様々なサロンでサービスを受け、肌や体に関する知識や経験を積んでいます。特に情報に敏感なお客様は、自分で美容についての情報を学び、若いスタッフよりも詳しい知識を持っていることもあります。
その様なお客様層を、ハイブロー層と言います。
極端に裕福ではないけれども、普通以上のお金を稼ぎ、学習への興味が高いお客様を主な対象にすることで、営業範囲を広げることができると考えています。
ハイブロー層を主な対象とするべき理由については、下記の投稿を参照下さい。
2.現場のコスパを向上させる流通
今日まで美容に従事するメーカーは、原則卸販売業により業を成してきました。一定の仕入れ条件を設け、次回発注は1個からでも取引がし易い様に工夫を行っております。しかし、お客様の平均来店年数も年々短くなってきているため、サロンも新規客に依存する体質が目立ってきているように思います。
これはあるコンサルティングサービスを行っている方から、貴重な意見を聞いたので共有致します。
現に、残念にも下記のようなデータが存在する。
皆さんは、今日まで何店舗のサロンを利用した事があるでしょうか?今まで1店舗しか利用した事がないという人は少ないのではないでしょうか?今の時代、10代、20代だと約3年で別の店舗に移動するという統計データがあります。
通っている店舗を離れるお客様の理由は幾通りも存在しますが、主には下記の理由により失客が多いようです。
これらの事実を受け入れ、メーカーは、既存のサロン様に商品を取扱いし易い条件で営業を行い、販売推進のお手伝いをするだけでなく、失客する事によって生まれる、サロン失客顧客から売上保全策を講じる必要が出てきました。
サロンでは、お得な情報やスタッフがお勧めする商品を手軽に購入できる方法を新たに併用したシステムを活用する必要があります。このことで、店舗に商品陳列されていないにも関わらず、長年の営業経験から、施術の売上よりも商品の売上が安定します。また、お客様はサロンのコンテンツを通じて、気に入って利用しているメーカーのお話を直接聞くことや、スタッフのオススメの理由を楽しく知ることができます。さらに、ストレスを感じることなくホームトリートメント商品を手に入れたり、サロン周辺の地域サービスを知ることができる満足度の高いサービスを開始する事ができます。
S2Cシステムは最近では珍しくありませんが、私のオススメは、株式会社ビューティガレージの”Salon.EC”が大変お勧めです。この仕組みの大きな特徴としては、以下の通りです。
株式会社ビューティガレージが必要な分商品を仕入れてくれる
併用販売を認めてくれる
特定条件を設け誰でも購入出来ない仕組みがある
ブランド保持に務めてくれる
システム利用サロンへ広告を行ってくれる
失客顧客の注文を継続的に獲得し続けてくれる
以外にも利点は沢山存在しますが、東証上場企業の特色を生かし、導入サロン、利用メーカーに対して、新規登録、月額費用を無料にするだけでなく、その手数料も安い事です。
美容業界は、人とのコミュニケーションを大切にする業界です。その習わしを尊重しながらも、デジタル技術を用いた空中戦を追加する事で、メーカーが今まで獲得しきれなかったお客様を継続的に、ご利用頂ける環境を整備し、メーカー営業マンのみながらず、サロン現場の営業努力を無駄にしないやり方を提供する事が可能になります。
3.現場を支援するコンテンツを開発
❶「あなたがいないと困る」という現象と作り出す
代理店に限らず、現場のサロンでは、日々の業務に追われ、大切な年間計画に沿った販売や施術キャンペーン等の戦略を構築出来ないまま、一年に追われしまい、「来年こそは」と思いながら、また同じ年を過ごすというのが関の山です。
そこで、メーカーは、代理店であれ、サロンであれ、年間のイベントに沿う計画書を、一緒に作成する事で、営業の道しるべを示す事にあります。しかしこれは、メーカーが主体的に販売推進したい内容を、季節性の特質を生かした仕入れと販売計画表のようなもので、これを一緒に考えている内に、これを提案し、一緒に考えてくれる人が無くてはならない営業マンに成長する一つの戦略となります。
誰しも、”戦略”と聞くと、お金儲けと直ぐに誤った誤解をする人もいますが、この計画によりこの先の1年間、何をすべきで、何を取り入れる事が必要であるのかを鮮明にするだけでなく、年間の目標や行動を指し示す大きな役割を担います。
よって、営業マンは、ある種のコンサルタントという立ち位置につき、必要不可欠な存在になる事が重要である。
❷メーカーのお客様は、消費者である事を認識した配信サービスの強化
以前「過去に成功したことが成長や進化を妨げている」というテーマで、最近はエステや美容クリニックに通う人の中に、信用していない人がいる背景を紹介しましたが、このことが時代の変化と共に積み重なってきたもので、美容関係の仕事に就く人以上に高学識を求めるお客さんが増え、未来では需要が高まると想定されています。
その為、美容従事者は、今よりももっと勉学に励む時間が必要とされます。そして、その時間確保を支援するカタチで、施術商材やホームトリートメント用に商品を供給するメーカー各社は、WEB上でより詳しい説明や商品を紹介する動画配信が当たり前になります。
特に、動画配信における大きな変化は、これまでお客様に難しい成分やメカニズムについて触れず、即購買に繋がるプロモーション的動画しか用意していなかった時代から、より専門性の高い説明動画の提供を必要に求められるようになります。
「自分の肌は自分で守る」というお客様への需要に応える事、現場で勉学とお客様への施術対応に時間を費やす美容従事者に代わって、販売や説明を補う役割が必要となっているのです。
商品は売るだけでなく、紹介することも仕事になる
購入方法を伝える事が仕事になる
ストレスのない営業コミュニケーションスキルを習得している
ITリテラシーが高くS2Cシステムが、失客予防策となる
スタッフ一人ひとりがライバー的存在になる
システムを活用した地域産業の共存が行われている
❸メーカーが、サロンに通われるお客様に販売出来ないと成り立たない時代
私もメーカー出身です。故に、私たちのお客様はサロンであると決めつけがちです。しかし、自分達の商品は、営業先のサロンオーナーやスタッフに、まずは愛される、必要とされることが重要です。
しかしそのことばかりに目を向けすぎて、ビジネストークに力を入れがちです。これからの時代、サロンのオーナーやスタッフの手本となれるよう、メーカーでありながら、一般消費者に商品説明やクロージング、基質疑応答力がなければ、意味を成しません。
よって、お客様にとって営業コミュニケーションスキルを高める、技術教育マニュアルを持っていない商品は、”ただの物売り”になってしまい。サロンに指示選択され続けなるのがオチです。
自ら、現場と向き合い、スタッフの苦悩や課題を抽出し、それを解決する方法が必要になります。その為、スタッフらと共に、販売促進を目的としたイベントを一緒に行える企画を開発し、それらを全ての営業に従事する者が出来なければなりません。
一般消費者は、美容のプロが考える程、浅はかではありません。場合によっては私達よりも知識を豊富に持っている事もあります。そうした高学識な方々も満足頂ける付加価値サービスを持つ必要があります。
❹メーカースタッフ一人ひとりが、講師級サービスを展開。
会社の理念やコンセプトに照らし合わせ、組織を優先し、売上と顧客満足を創る事は、当然のように当たり前の事です。しかし、令和に入り、個の個性を生かす事にフォーカス出来る時代だからこそ、組織に属する一人ひとりの個性が生きるサービスを開発出来る時代になったと考えています。
例えば、Aさんは、即売コミュニケーションが得意。Bさんは、SNSにより集客が得意。Cさんは、現場の働く欲求(モチベーション)を高める事が得意。Dさんは、商品の成分も含めてマニアックな教育を行うのが得意とした場合。どれを優先するのではなく、大学のカリキュラムの様に、その個々の得意とする分野をLIVEによる教育は勿論、メーカーの取引メリットの一つとして、動画コンテンツを提供する事はすごく素敵な事だと思います。
お客様が拝見される注文サイトや、ホームページの会員ログイン内で、そのカリキュラムを発信し、個々のファンを見つけてもらうような、学びと気づきの場を提供する事も、大切な付加価値として、これからの未来期待されるはずです。
最後に
「よく理念やコンセプトを制定すると、変更してはならい」と考える経営者が多い様に思います。私は、10年単位で理念やビジョンを見直しても良いと考えています。
その理由として「常に時間は動き、トレンドが書き換えされているから」というのが理由です。時に、「理念やコンセプトは変更してもよい!」と自分に許可してあげて欲しいです。
そうでなければ、お客様満足は基、会社の方向性を見失う可能性があるからです。これからの時代、どれだけの柔軟性が求められるのかが、長く経営する為のコツの様になると思います。
これまでの、大人たちが作ってきた経験は、リスペクトに値いしますが、それが本当に今の時代、正しいのかという事については、私は甚だ疑問です。遺産的概念を打ち破り、新時代発想をどれだけ実行できるかによって、未来は大きく変化すると、私は考えます。
失敗したって命までは取られません。
挑戦を恐れず、チャレンジして頂きたいです。
S2C.Lab(エスツーシ・ラボ)
主宰 高山大樹
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