坂城誓優

見えないもの。聞こえない声。それは生まれるのを待つ大きな魂の叫びです。範疇の際を設けず…

坂城誓優

見えないもの。聞こえない声。それは生まれるのを待つ大きな魂の叫びです。範疇の際を設けず、そのときの叫びに忠実でありたいと思っています。それが小説になるのか、詩や短歌になるのか、はたまた映像になるのか、わかりません。動き出すもの、得体のしれないことに忠実にありたいと思っています。

最近の記事

気になるササクレ⑥

「気に障る小声」カフェで本を読んだり、パソコンをしていると隣りの会話が気になるときがある。 声が大きい、小さいに関係なく気になるというか、気に障る声がある。 そんな気に障る声ほど、聞き耳をたて集中してしまう。結果、胸の中は憤怒とも苛立ちとも言えないものが渦巻いてしまう。 聞きたくないのに、耳がダンボになる。 この件をじっくり考えてみた(そんな大層なことではないけれど) まず声の音量に関係ないこと。声の質というか、具体的には聞きやすいとかキレイな声かどうかと言うことも

    • 気になるササクレ⑤

      「魂を込めて売っています」広告会社に長年勤めていると様々な業種とぶち当たる。世の中に出回っている色々な商品と遭遇する。 できの悪い社員だったぼくはその度に気持ちが立ち止まり思考が停止していた。 ほとんどのクライアントの社員が自社の商品を褒めちぎり、あたかも自分の分身のようにトークを連発する。 その度にその会話についていけない自分がいて、どのように処理したらよいか腐心していた。 その最大の理由は何故、そこまで商品の利点や性能や社会価値的なものにのめり込めるのか?それほど

      • 気になるササクレ ④

        日常と「反日常」「反日常」って? 「非日常」じゃないのっていうわけですが、実はそうではないのです。 渋谷の街がハロウィーンで管理状態におかれました。「渋谷に来ないでください!」「渋谷はハロウィーンのステージではありませ〜ん」てね。 渋谷はハロウィーンでもワールドカップでも、騒ぐ材料があれば何でも騒ぎます。乱痴気騒ぎになります。 クリスマスでも正月でも騒ぐ場所を求めて彷徨い歩きます。サラリーマンがかこつけて忘年会を何度もやるのと一緒です。 子供の頃世間が騒がしくて、機

        • 気になるササクレ ③

          「大丈夫で〜〜す」「大丈夫で〜〜す」って聞こえてくる。いつ頃から多くなってからきたのだろう。 10年近く海外に棲んでいて、帰ってきたらこの奇妙な言葉が街にまん延していた。 「持ち帰りの袋いりますか?」 「大丈夫で〜〜す」 はっあ? 女子高校生も年金生活者も同じトーンで無害で快く耳に入っていく言葉を発音します。 そこは「いりませ〜ん」じゃないの。 どう大丈夫なの?そこはNoかYesです。  理屈ぽいですか?そうでしょね、多分。 「大丈夫で〜〜す」の親戚に「大丈夫ですか

        気になるササクレ⑥

          気になるササクレ ②

           「花沢さんとその人間関係」  花沢さんの声優が変更になるという。  花沢さんは「サザエさん」のキャスティングの構成上カツオの同級生ということで、さして重要ではない気もするが妙に気になっていた。  この「花沢花子」なる人物の名前を聞くと小学校時代のM月くんのことを思い出す。何の脈略なのか。どうしてもM月くんの顔が浮かんでくる。  M月くんは今、演歌歌手の追っかけをやっていて、賃貸しているビルの窓ガラスにその歌手の着物姿のポスターが貼ってある。あれれ、と思ってその歌手の容姿を

          気になるササクレ ②

            気になるササクレ ①

              「あっという間の1年でした」  10月も終わり11月がやってくる頃、毎年恒例の「もうすぐ師走症候群」が国民の声となり聞こえてくる。「もう12月か、1年間ははやいな」知り合いとの会話やテレビのコメンテーターが正月の挨拶みたいに繰り返す。  わたしも何度かこころの中ではそう思ったのだが、口には出さなかった。なぜだろう。なぜだろうと問いかける自分の心理には確実に毎年同じことを繰り返す輩への反発があることに気がつく。 「もう12月か、1年は早いな」に続くのは、おおかた「こな

            気になるササクレ ①

          デウスの誓い    Part-3 (了)

              3 木梨 蓮二                       蓮二は、自分のタイムカードを取り、タイムレコーダーに挿入し、出勤時刻が刻印されると制服に着替えてからバンが停車している駐車場に向かう。毎日決められたことを繰り返す。 何の目的もなく大学に入学し、卒業できる単位を適当にとり、そのほかの時間は危なげなく遊び、将来の希望もなく、ただぼんやりと過ごしてきた。就職の季節がきて、面接した会社はすべて不合格になった。引越し会社のバイトの運転の経験から、その会社の社長がうちで

          デウスの誓い    Part-3 (了)

          デウスの誓い  Part2

          2 木梨孝司                           孝司の大学は、自宅から電車を乗り継いで一時間ほどかかり、郊外の小高い山の中腹にあった。 最寄りの駅からスクールバスがでていて、駅から徒歩で行くと三十分ほどかかった。 駅の周辺は、大学が移転する前は人口が少ない過疎地域で、サラリーマンが棲むようなニュータウンもなく、畑や水田があちこちにあった。 大学が移転し、地元商店が大学生向きの飲食店などに商売替えをし、大手資本のチェーン店もこぞって進出してきた。駅

          デウスの誓い  Part2

          「デウスの誓い」 Part-1

          1. 木梨 泰造  アルバイトの面接の日、東京の北部にある井戸掘り会社を泰造は正午を少し過ぎに訪問した。事務所の扉がだらしなく半開きになっている。簡易な鉄骨に安直に壁や床を嵌めたような二階建ての建物だった。扉の蝶番のとなりに「有限会社イズミ井戸掘り事業社」という看板がかかっていた。扉の間から顔だけ事務所のなかにいれると、中年の男がスチール机にコンビニ弁当をおいて、箸で乱暴に口のなかにごはんをかき込んでいた。 「アルバイト希望の木梨くん?」  男は上目遣いで泰造を睨む

          「デウスの誓い」 Part-1