「おうちに帰るまでは『りんね』です」
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第36話.燻製ニシンの虚偽【Original Sin】
「……こういうのって、お金が入っているんじゃないの?」
地面に落ちた香典袋をしゃがんで拾い集める八足(やたり)の背を、定まらない視界の中、見つめている鏡花。渡したら即座に立ち去るつもりだった八足は、黒と白の水引を直視して、溜息を吐く。
「……葬式で渡すものじゃん」
受け取りを拒まれた袋を集め終えて立ち上がる八足。鏡花は動きにつられて上を向いて、しかし顔を強張らせ、動けない。
「昔からなんだよ。
第41話.Image of God【Original Sin】
それから千景は運転席側のドアを開ける。ケータイを耳に当て、呼び出し音を聴くものの応答は無い。
遠くから響く音で目を覚ます、りんね。突き当りには白い壁。身体を起こし、逆さまになったウーパールーパーのぬいぐるみを抱き締める。シルクのパジャマを着たりんねはぬいぐるみを抱いたまま、寝室と居間の間の小部屋から、複数の音がするキッチンを覗く。
正面を向き直すと見慣れたローソファの背凭れ。黒いテーブルの上
第43話.シミュレーション仮説【Original Sin】
警察署内の廊下を歩く梶と刑事の小松。
「朝から訪ねてきて、一体何なんですか?」
「警察って24時間いつでも来て良いんじゃないの?」
「大体、何ですか? あの時の部屋って」
立ち止まる梶を振り返る小松。
「小松が協力的なのは分かるよ? 結果的に怜莉を傷付けたの気にしてるんだろ? 他はどうよ?」
「他? 民間人に協力してもらえる範囲なんて限られています」
「そうじゃなくてさ。同じ場所に同じ人が居て