見出し画像

BtoB鮮魚仕入れマーケットプレイス立ち上げの振り返り

UUUO(ウーオ)- 業務用鮮魚仕入れアプリのPdMをしている 三京(@t3qyo) です。
今回はいつものテックブログとは違って、プロダクトマネージャーとしての視点から約3年のUUUOというプロダクトの変遷を振り返ってみたいと思います。


自己紹介

2020年にSIerのエンジニアから、自社サービス開発がしたくて、株式会社ウーオに転職しました。

UUUO(ウーオ)アプリとは

全国の100以上の産地、市場から毎日鮮魚が出品され、簡単に産直鮮魚が仕入れられる。業務用の鮮魚発注プラットフォームです。

対象読者

事業開発されている方。プロダクトマネージャーを目指している方、これからスタートアップでやってみようと思っているエンジニアの方。

2020年10月 入社。とにかく我武者羅


2020年10月に2人目エンジニアとして入社しました。
当時は社員数10人前後で、鳥取県の賀露港と網代港に「UUUO Base」という出荷拠点があり、社員も半々ぐらいで分かれていました。
そのUUUO Baseが参加しているセリで競り落として欲しい鮮魚を発注する「UUUO」というアプリをプロダクトチームは運用していました。
この時は「セリ前発注」のみを前提としており、産地が競り落としたものを出品する「在庫出品」はまだありませんでした。
今でこそウーオは全国100以上産地から出品されるプラットフォームですが、当時はUUUO Baseで扱っている2港の出品のみで、購入社数は5社/月ほどでした。

少ないながらもアプリを通じた売上が生まれており、SIerから転職してきた私としては、これだけの人数でプロダクトを作り、すでにそこからの発注、売上がある。という状態は単純にすごいなと思っていました。
発注が来るとSlack通知で連絡が来るのですが、自分たちが作ったアプリケーションが使われている状況をリアルに実感できるのが新鮮でした。
プロダクトのKPIとしては「リクエスト充足率」を追っており、以下のように、スプレッドシートで発注ごとに結果を追い、なぜリクエストに答えられなかったを管理し、どうすればリクエストに対する充足率を高められるか。というのを日々観測していました。

スプレッドシートで充足率を日々観測

私自身としては、水産業はおろか、魚の知識が全くない状況で、
実際にUUUO Baseで働いているメンバーや社長との業界解像度の違いをはっきりと感じていました。
UUUO Baseのメンバーと話したことをプロダクト作りに活かすということが大事だったので、まずは魚の名前を覚えたり、業務オペレーションを把握したりなど、なんとか会話できるような状態にする。というのが最初の課題でした。
業務とサービス間の連携もわかっていなかったので、このように業務フロー図とアプリの関係を図に落とし込んだりしていました。

業務とアプリの関連フロー図


アプリの機能を素早く作ることは比較的得意だったので、その部分で価値を発揮しようと思い、頼まれたものはスピード重視で作って、発信するということを心がけていました。
異業種に挑戦するときに、エンジニアとして何か手が動かせる分野があるというのは心理的にも非常に助かりました。

2021年 何と言っても解像度をあげたい


社内は立ち上げ期の混沌とした雰囲気がありましたが、自分自身としては実物が日々売買されていて手触り感のある水産業という業界の魅力的な商品である魚を扱ったプロダクトを作っていけるということで、新しい知識の吸収とそれを爆速で作り込んでいくということに夢中でした。毎日自分が作っているアプリ上で見たことも味もわからない魚が出品され、購入され、届けられている。ということを考えると、とても魅力的でした。
マーケットプレイスやサービスを作る上で、その商品に興味を持てるかは大事な気がします。
オーナーシップを持って施策を進めていきたかったのですが、自分自身の水産業への解像度、物流への解像度、ユーザーへの解像度が低く、何を作ったらいいのかがわからない状況でした。
待っていても情報は降りてこないので、ビジネス解像度が高い人を見つけては話し込む、ちょっと知ったかぶりして自分の意見をぶつけてみる、魚を買って捌いてみる、ユーザーの声を聴く、会いにいく。ということを意識して行動しました。
築地魚河岸三代目という漫画も買って会社の文庫にしたりもしました。

水産知識のバイブル「築地魚河岸三代目」を会社の文庫に
魚を捌いてみる

開発するばかりでなく、直接ユーザーの声を聴く、発注を受ける。といったCS的な業務もやってみると今までとは違って新鮮で面白く、作ったものの感想が直で聞けるので開発モチベーションを保つことができました。実際に仕入れてくれた店舗に行って、売り場をみてみると、今まで何気なくみていたスーパーの売り場がこんなにもこだわってつくられているのかと気づかされ、気づいたらスーパーの売り場を観察するようになっていました。

仕入れてくれたスーパーの売り場を観察

個人的には、会社の名前と人の名前とかを覚えたりするのが好きだったので、「〇〇会社が買ってくれました!なんでこんなに買ってくれるんですかね?」みたいなことをセールスメンバーに話したりすると割と向こうからも「わかってんな」という感じで色々話してくれたりするので、取引先の会社名やその会社の業態を気にしておくと解像度があがりやすいのに加え、あの会社の人ならこのアプリをどう使うだろうか。仕入れた商品をどう使うのだろうかというユーザーストーリーを考えやすくなるのでおすすめです。
あと、 Slackでいろんなチャンネルに参加するとか、いろんなところにとりあえず顔を出すようにしておくのもおすすめです。

2021年2月 「ウーオ市場」を構想、今のUUUOの原型ができはじめる

当時プロダクトの中心にしていた、セリ前発注というスタイルでは「鮮度は良いものが届くが、セリ落とせなかった時に明日何が届くのかわからないのが使いづらい」という課題がありました。
その課題に対して、現場で実際にセリ前発注の対応をしていたUUUO Baseのメンバーから、確定した在庫を買ってもらうスタイル(在庫出品)も検証してみれば良いのでは?という提案をいただき、仕様の策定から運用検討、開発まで全て私がオーナーシップをもって進める機会を得ました。

ホワイトボードで在庫出品の大枠を擦り合わせる

個人的には、セリ前発注以外に単純にもっとアプリ上で展開できる商品が増えるのが楽しみだったので、当時は正社員エンジニアも土谷と私の2名でしたが、2週間ほどで仕様策定、デザイン、開発、β版リリースまで行いました。今のUUUOアプリの原型の誕生でした。

今見るてみると、プロトタイプながら割といけてる?!

この「ウーオ市場」の試みがUUUOアプリにとって一つの転換点となりました。当時、スーパーマーケットのバイヤーが産地で出品された水揚げ直後の商品画像を確認して、アプリでポチッと購入し、その商品が翌日届く。という体験はなかなか珍しかったのではと思います。
ロットがある大衆魚しか選べなかったセリ前出品に対し、「ウーオ市場」ではロットの少ない魚種や、色物と呼ばれる「鮮魚BOX」も購入できるというのもポイントでした。

当初は、出品アプリは作らずに、UUUO BaseメンバーからLINEで商品を連携してもらい、プロダクトメンバーが商品を登録するという形でスタートしました。

LINEでセリ落とした商品を共有してもらい出品する

2021年3月 出品者側のアプリを爆速で作る

在庫出品のユーザーへのウケは良い。ということがわかってきて、もっと出品を増やさねばということで、もともと産地出品者用の在庫管理アプリとして開発していたFlutterアプリをベースに開発し、こちらも2週間ほどでプロトタイプのリリースをしました。
Flutterである程度のベースがあると、使いまわしてiOSとAndroidのアプリを作るのにスピード感が出て良いです。プロダクトチームのバリューの一つ「小さな投資で、大きな学びを得よう」に繋がっていると思います。
内容は自慢できたものではないかもしれませんが、何を作るかを決めてから作って試すまでが早くできる。というところはフロント&バックエンド両方のエンジニア経験があってよかったなと思っています。

爆速で作った出品アプリ

エンジニアという枠にとらわれずなんでもやる

利用しているユーザーの反応は良いものの、鳥取の漁港のみでは安定して供給できるわけではなく、自社の出品だけでは限界が見えており、この「ウーオ市場」は、継続するのかどうか怪しい境地に立たされました。
また、社内的にも出品して出荷時間ギリギリまで売れるか売れないのかわからないのに待つ、売れ残った場合にどうするかなどのフィードバックも上がってました。

実際の現場メンバーからのフィードバック

ただ、個人的には、一定数使ってくれているユーザーもいるし、「ウーオ市場」を絶対に終わらせたくなかったので、私もとにかくなんでもやろうと、なりふり構わず、CSや売り込みなどをやっていました。

セールスメンバーにしつこく案内Slackを送りつける

2021年6月 初めて他社の出品者に UUUO Sellersを使ってもらい自社の当たり前との違いを発見する

このように私のしつこい「ウーオ市場」のゴリ押しの甲斐あってか?
さらに出品を増やそうと、初めて自社以外の出品者に出品してもらうため、出品アプリの「UUUO Sellers」を携えて島根の漁港を訪問することになりました。出品アプリを実際に触ってもらったのですが、最初に自社での業務オペレーションを回していたことが功を奏し、産地の出品者側の受け入れも比較的早かったように思います。
ただ、実際に使われ始めてみると、出品開始時刻や、出荷締切時間、出品する規格、魚種など、自社のオペレーションでは当たり前と思っていた部分が同じ産地仲買いといえど違うことも多く、社内としてもとても勉強になりました。新しい出品者に合わせて出品側のUIも大きくリニューアルしました。
複数社に使われることで、ある程度自分達の検証が間違っていないということと、自分たちが当たり前だと思っていたことが他の会社には当てはまらない。ということを実感でき、早めに2社目に行くことは大事だと思いました。
このあたりから、エンジニアメンバーも徐々に増え、自分がプロダクトをマネジメントする。(次に何をするか決める)感じで動いていくようになりました。
といってもまずは、他のプラットフォームで最低限できること、それがなければ商品が売りづらい。売れないものなど、割とマストでやっていかなければならない機能ばかりだったので、とにかく目の前の課題を潰すという感じでした。

社内でのプロダクトの優先順位をあげたい

こうして、徐々に軌道に乗り始めた「ウーオ市場」とそのプロダクト開発でしたが、社内的にはまだまだ課題が山積みでした。
「ウーオ市場」のユーザーは増えていく一方で、会社的にはアプリを使わずにLINEや電話で案内して卸売をした方が大口注文が出やすいので、売上がKPIであるセールスメンバー的にプロダクトの優先順位が上がらないという状況がありました。
今となっては卸売もある程度は必要であることもわかってきたのですが、当時はなんとかセールスメンバーをもっと「ウーオ市場」に振り向かせたい。プロダクトを中心とした組織にしていきたい。という思いがありました。
そこでまずは、普段やってもらっている卸売の業務をなんとかアプリを使ってやってもらいたいと、アプリに出品されている商品を売る時は、そのアプリ上に、売り先の会社の代理ユーザーとしてログインして購入することで売上を立ててもらう、「代理発注」という機能を作りました。
この機能を使った方が、出品者としては売れたという感覚が持ちやすくなり、セールスメンバーもよりUUUOアプリを開いてくれるようになるため、改善提案なども出てきやすくなりました。
その後、時間はかかりましたがアプリに出品されていない商品を卸売した際の入力システムも UUUO Sellers上に作っていくなどして、ようやく卸売も含めた全データがUUUO Sellersで確認できるようになりました。
こうすることで、社内のメンバーが、UUUO SellersとUUUOのアプリを使わない日がなくなり、社内でのドッグフーディングによるフィードバックループが回り始めるとともに、セールスチームの販売に関わる業務負担を徐々に軽減し、より本質的な、「UUUO」というマーケットプレイスをどう発展させていくか。という議論ができるようになっていきました。

プロダクト中心に移行していくときの事業サイドの言葉

プロダクトチームとしても、個人的にも、自分たちが機能を作るだけでなく、それをセールスチームと一丸となってどう売っていくか、それによりセールスチームにどういう負担がかかるか。という意識を持てる、会話できるようになってきたのは大事なポイントだったように思います。
プロダクトチームValuesでは、「越境し、巻き込み合おう」という言葉になっています。

2021年12月 プロダクトの価値を集中させる意思決定

徐々に「UUUO」は「ウーオ市場」を中心としたマーケットプレイスとして進化していきつつありましたが、プロダクト開発として、従来の方式である「セリ前発注」機能も並行して開発しており、「ウーオ市場」の開発に今一つアクセルを踏みづらいという状況がありました。
セリ前発注によって産地は在庫リスクなく売上を立てられるという「産地ファースト」の思いから、この機能をメンテナンスし続けていました。
私としてはなんとかこれをうまく行かせたいという思いもあり、発注を自動化するなど、注力していたのですが、データモデルが複雑化し、新しいメンバーが理解しづらい、何か一つの価値にリソースを集中させた方がいい。などの議論から、「セリ前発注」は退役させることとなりました。
結果的に、この「セリ前発注」の方式や考え方は、「ウーオ市場」に「セリ前出品」として引き継がれ、新しい形で産地の在庫リスクを下げれるにつながっており、プロダクトの価値を研ぎ澄ますために、思い切って引き算をするというのは、局面次第ではありますが、大事な行動指針なのかなと思います。
個人的には、1年以上やってきた機能で、まだまだやれると思っており当時は悔しかったのを覚えています。
逆にこれで、私がゼロから携わってきた「ウーオ市場」で結果を出さないとまずいという状況にもなり、ヒリヒリする感覚もありました。
この後、「ウーオ市場」は、2022年4月に別で作っていた水揚げ情報アプリ「Maehama cloud」と統合させ、新「UUUO」としてリリースしました。その件についてはこちらが参考になります。

2022年以降

2022年以降は新「UUUO」と、そこから受発注機能を切り出して「atohama」を立ち上げて、2つのプロダクトを展開してきました。
「atohama」も現在多くの荷受様、仲卸様にご活用いただいております。

また、UUUOとUUUO Sellersももより実際の水産市場での売買に近い、わくわくする、直感的な売買体験ができるよう、機能のアップデートをし続けています。

まとめ

このようにして、2021年3月から始まった「ウーオ市場」は、業務用鮮魚仕入れのマーケットプレイスとして形になっていき、2024年10月現在、多くの小売様、仲卸様、飲食店様の鮮魚仕入れに日々活用されています。
私自身もエンジニアとして入社して、ゴリゴリ実装して価値を届けるというスタイルから、徐々に何を作るかについて悩んで答えを出していくというプロダクトマネジメント部分に責任を持つようになってきました。(もちろん今でも開発はしています!w)

振り返ってみるといくつか意思決定のターニングポイントはあったように思いますが、やはり会社というチームでプロダクト開発をしていくので、「社内の全員がプロダクトを中心として会話できるようにしていく」ことが何よりやってよかったことのように思います。
普通プロダクト作ってる組織ならみんなそうなってるんじゃないの?と思うかもしれませんが、弊社がそうでなかったように、セールスが強い事業だったりするとそうでないこともあるかと思います。
プロダクトを中心に会話できる組織にしていくためには、以下2点が大事だと思いました。
プロダクトを開発するメンバーが業務解像度を上げ、表に立っているセールスチームと対等に会話できること
ユーザー価値だけでなく、社内のオペレーションがうまくいく仕組みを考え、その施策の優先順位を上げる。
②については、工数がかかることも多く、直近の優先度としては下がりがちな部分もあるかと思いますが、「プロダクト中心の組織にする」という点においては、時には思い切って優先順位を上げてみる。というのもアリだと思っています。UUUOで言うと具体的には、卸売の代理発注機能、卸売をUUUO Sellersで入力可能し、納品書連携しやすくする。などの施策があてはまるかと思います。

今後もこれらのことを大事にしながら、さらに鮮魚仕入れの課題を解決できるよう、爆速で価値提供していければと思います。
このようなプロダクト開発にご興味がある方はぜひ、一緒に働きましょう!


最後に、最近筋子を買って作ったイクラがとても美味しかったので載せておきます。

筋子からイクラを作ってイクラ軍艦を作りました。

飲食店の皆様!筋子の仕入れはこちらから(※現在個人でのウーオのご利用はできません)

では。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?