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お風呂が復活するまでの5日間。

 妻の表情で、よくないことが起きたのは、分かった。

「お風呂のことで、話があるんだけど」

 声の響きも不安があふれていた。
 
「なんか、水がポタポタして止まらなくて」

 これ以上ないほど、困った顔をしていた。

止まらない水滴

 その日の夜は、ズームでの講義で午後7時から、いつもよりも長く午後10時30分まで続いた。その後に、妻に、その話を振られたけれど、明日は珍しく仕事以外での外出予定があって、どうして、このタイミングで、という気持ちになった。

 お風呂の火を止めて、ダイヤルが「0」になっているのに、カランから水がちょっとずつ垂れて、水滴が止まらない。シャワーの方にスイッチを切り替えても、そこから、しばらくたつとあふれてくる。

 妻は、カランの下に空の2リットルのペットボトルを立ててくれていて、そこに随分と溜まっていた。

 なんだか焦る。

 そろそろ妻は就寝の時間だけど、しばらく一緒に見てくれて、少しあれこれといじって、少し外せるものは外して、だけど、何が原因かも分からなかった。

 ついていないなー、意地悪なタイミングだなー。

 そんなことを言葉にしてしまったから、妻には申し訳なかったのだけど、この20年以上、不運なことが多かったので、ついそんなふうに思ってしまった。

 それでも、遅くなるとリズムが崩れるから、妻には寝てもらった。

ガス機器

 それから、ドライバーを使って、外せるところは外してみたのだけど、何しろガス機器だから、怖かった。

 おそらくすでに少数になっていると思うのだけど、家の台所には湯沸かし器があって、風呂場には風呂釜があって、それぞれダイヤルを回して、その場で燃焼させて、お湯を出す古いシステムのままだった。

 コンパクトな風呂おけの隣に、風呂がまがあって、そこのダイヤルを回すと、火がついて、ダイヤルの回し方によってシャワーを使えたり、お風呂を沸かしたりできる。

 だけど、入浴してダイヤルを「0」に戻しても、そのカランから水が少しずつ漏れるように垂れて止まらない。

 さらに少しいじって、部品も外して、だけど、無理だと思って、戻す。

 それから、その原因が分からないと、やっぱり怖さがあるので、風呂がまのガスの元栓を止めることにする。広くない風呂場にあるので、すき間に腕を入れて、伸ばして、やっと止めた。

 水滴は止まらないので、家の裏にある水道の元栓自体を、止めた。

 そのことをメモをして、元栓を止める前に、なべややかんに水を溜めて、そして寝た。

 気になっていたせいか、眠りは浅かった。

電話

 翌日、昨年の夏に水道管を直してもらったご近所の方にみてもらった。すると、これは専門家にみてもらった方が、という話になって、ガス会社に電話をした。

 水が止まらない話をしたら、比較的冷静に聞いてくれたものの、途中で厳しめの口調にもなり、少し怖かったが、何しろ、故障ではあるけれど、危険はないということで、安心はできた。

 とにかく、来てくれるだけで、約4000円がかかることは仕方ないのだけど、今日は出かけるので、ガスと水道の元栓も開けて、明日、修理に来てもらうことになった。

 まずは風呂おけを洗って、カランからしたたる水滴で、お風呂の水を貯めようと思った。

 予定通り出かけることができて、ありがたかった。帰ってきて、風呂おけを見たら、溜まっているけれど、ほんのわずかな高さまで水が来ていて、あまりにも溜まっていなくて、今度は風呂おけが漏れているのではないか、という新しい心配まで加わる。

確認

 翌日、午後1時から午後3時の枠での修理をお願いしていたら、午後1時過ぎに、電話をもらってから、若い男性が来てくれた。

 風呂場に行き、困っている点を伝える。

 持ってきた道具を使い、風呂がまの前の部分を開けている。見ていると、大丈夫だろうか、というような力を入れているが、かなり頑丈に止まっていたり、また、ほぼ初めて風呂がまの前の部分が開いたところを見ると、その中はいろいろと詰まっていたり、線があちこちにあり、どうなっているか分からず、一度でも開けてみようと思ったことを思い出し、やっぱり無理だと確認もする。

 しばらく経って、修理にきてくれたスタッフに言われる。

 温度調節に関連する部品に不具合が生じているので、それを替える必要があり、それには約3万円かかることを伝えられる。

 お金がかかることは、やっぱりちょっとショックでもあったけれど、お願いした時点で覚悟をしていたし、あとは頼むしかなかったのだけど、その部品が入荷しだい、なので、直るのは次の機会以降になった。

 故障が分かってから、3日目だった。
 だけど、危険はないようだし、風呂は普通に使っていいと言われたので、かなりほっとはした。

 ただ、修理のスタッフが帰ってから、妻が言ったことで、微妙にケンカになってしまった。

部品

 さらにその翌日。故障が分かってから4日目の午後に電話があった。

 部品が入荷したので、よかったら、これから伺えますと言われ、今日は無理なので、明日にしてもらえますか、と伝えたが、思ったよりも早く直してもらえそうだと思う。

 そして、次の日に、ほぼ約束の時刻に来てくれる。

 何か音がすると思ったら、どうやらジャッケットから聞こえてきて、それは小さい扇風機がついているようだった。暑そうなので、作業の時は、風呂場も含めて、その近辺の窓をなるべく開ける。

 修理に来てくれたスタッフの人が、お風呂場のガスの元栓を閉めた。さらに水道の元栓を閉めてほしいと依頼されたので、家の裏に行って、閉めた。風呂場に戻ってきたら、いない。変だと思っていたら、妻が元栓を閉めたけど、と言ってきて、どうやら私のすぐ後に、修理のスタッフの人と一緒に家の裏へ行って、元栓を回してきたそうだ。

 あれ、そうなると、今は閉まっていない。

 また家の裏へ行き、やっぱり開いている状態だったので、再び締める。

 どうして、こんなすれ違いが起こったか分からず、しばらくモヤモヤしていた。

修理

 風呂おけの水を、もしかしたらガスをつけたりするかもと思い、かなり溜めていたが、抜いてほしいと言われて、水を減らす。

 それから、修理を始めてもらうが、あれこれ作業も多そうで、思ったより大変そうで、風呂がまの中は、この前見たよりも、ぎっしりといろいろなものが詰まっていて、だから、何かを外したりするのが、とても難しそうだった。

 なんだか、怖くて、なるべくそばにいたのだけど、思ったより時間がかかりそうだった。それでも、時々、道具などを少し離れたパーキングに取りに行ったりもして、少しずつ進んでいるようだった。

 ただ、1時間くらい経ったあたりで、終わらないのではないか、と思ったくらい、苦戦しているように見えた。途中で、ピーという音が聞こえ、大丈夫だろうかという気持ちにもなる。

 それでも、作業を始めてからだいたい1時間半くらい。
 午後5時前には、作業が終わった。

 妻が気にしていた温度調節に関しても、確認してもらい、異常はないという。さらには、交換した部品以外も、あちこちのパッキンが劣化していて、それも変えてくれたようだ。

 ほっとした。

 支払いもして、さらには作業スタッフの人にスマホを手渡され、今回の修理に関するアンケートに答え、途中に文章を入力する作業があったけれど、携帯もスマホも持っていなかったので、少しチャレンジして無理とわかり、だから、私が話をして作業スタッフの人に入力をしてもらった。

 最近は、アンケートも、こうしてタッチパネルで行うことを改めて知る。

 それで、支払いもして、やっと終わった。

 故障が分かってから、5日目。また日常が戻ってくる、と思う。




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おちまこと
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