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バラ咲き。

 庭を見に行った妻が、うれしそうに教えてくれた。

 去年、咲いていなかったのに、もらったオキザリスがバラ咲きしてた。

 それは、妻が自分の姉にもらったもので、私にとっては、オキザリスも、バラ咲きも、どちらも知らない単語だったのだけど、それが、妻にとっては、とてもうれしい出来事なのは、わかった。


 その感じが気になったので、次の日に庭に出た。

 といっても、洗濯のついでに、コンパクトな庭だから、すぐ見渡せる。

 花がなかった。

 だから、少し歩いて、体を曲げて、庭との距離を縮めて見て、それでも見当たらなくて、もしかしたら、外のことかもと思って、小さい鉄製のギーッという音がする門を開けて、外へ出た。

 最近、プランターも整理したみたいで、鉢植えがいくつかあるくらいだった。

 あれ、ここにもない。

 ちょっとした焦りがわき起こる。

 もしかしたら、昨日、咲いていて、このところ寒いし、夜も寒かったし、もう枯れてしまったのだろうか。

 部屋にあわてて、戻って、妻を呼んだ。

会話

 昨日さ、バラ咲き、って言ってたのが、あったでしょ。

 あ、オキザリス。

 あ、そうそう、そんな名前だけど、あれ、どこに咲いてるの?

 え、なかった?

 そんな会話をして、妻は一緒に、庭まで来てくれた。

バラ咲き

 一緒にサンダルをはいて、庭に出る。

 妻は一直線に、庭の隅の小さく囲われた場所に寄る。

 あ、あるじゃん。これ、これ。ピンクでしょ。

 そこには花があった。

 だけど、高さで5センチ足らず。花の直径は2センチもなかった。
 とても小さかった。

 ほら、ね、中がバラみたいでしょ。

 小さいピンクの花は、花びらが何重にも重なり、確かに、それはバラと同じ構造なのは、わかった。

 そういう花の咲き方をしているのは、全部、バラ咲きというそうだ。

植物視力

 昨日の妻の話しぶりだと、少なくとも1メートル以上はありそうに感じていた。

 それだけ、うれしそうに、とても重大な出来事のように話していて、その気持ちが、こちらに伝わっていたのだろうけど、こんなに小さいとは思わなかった。

 あ、そうか。大きさは言ってなかったけれど、でも、かわいいでしょ。

 そんな言い方を妻はしていた。

 ずっとメガネをかけていて、妻は小さいものは見えないはずなのに、こうした「植物視力」が優れているのを、うっかり忘れていた。

 ただ、あまり色がなくなっている庭の中で、小さいけれど、きれいなピンクだった。

 そして、妻にとっては、大きさはそれほど重大なことでもないのはわかった。

オキザリス

 そういえば、大きさに気持ちを奪われて、オキザリスについては、知らないままだったので、そのあとに聞いたら、妻は、いろんな種類があるよ、と教えてくれた。

 カタバミの一種らしい。

 ただ、この説明でも、私にとっては具体的なイメージと印象を定着させるのは難しかったけれど、妻にとっては、そのことの方が理解できないようだった。

 草花に対しての基礎教養の格差がある、というのは、こういうことなのだろうと思った。



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