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映画 『キッズ・リターン』 …… とても怖く響く「親孝行」。

 怖い映画でもある、と思う。

 リターン、というタイトルがついているけれど、彼らが戻ってこられることは、ほとんど無理ではないか、というような残酷な転落をしている。

 そして、劇中、「親孝行」という言葉が繰り返し出てくるが、これもとても怖い意味を持つことになる。


(※ここからネタバレも含みます。映画未見で、これから鑑賞される方は、ご注意してくだされば、幸いです)。



親孝行

 主人公である青年二人のうち、一人は反社会的組織に入ることになるのだけど、その組長がよく行くラーメン屋がある。

 組長は、支払いを札でして、そのお釣りを、そこで働くラーメン屋の息子に小遣いとして与えている。その度に、組長が繰り返すのが「親孝行してっか」という言葉だった。

 その姿は、映画の途中までは、心温まる光景として見ることもできた。

身代わり

 その意味合いが急速に変わるのが、そのラーメン屋の息子がいつの間にか反社会的組織の組員になってからだった。

 そして、当然のように殺しの場面もあり、その時に、自分は関わっていなのだけど、ラーメン屋の息子が、その殺しの身代わりにされてしまう。

 そうなったら、ほぼ人生は終わるのだけど、この時のために「親孝行してっか」があったのかと思えたくらいだった。

「親孝行」という言葉

 近い将来、親不孝の極地とも言えるような運命が待っているかもしれないのだから、今、できるうちに、親孝行はしておいた方がいい。そんな残酷な親切心から出ていた言葉にも思えてしまった。

 それは、この映画の中で、小遣い銭をもらいながら、笑顔で「親孝行してっか」と組長に声をかけられ、嬉しそうに、照れ笑いをしていた、そのラーメン屋の息子の、ついさっきの過去の光景の意味合いまでが変わってしまうことだった。

 この殺しの身代わりをさせるための言葉だったのか。

 そんなことを思うと、親孝行という言葉がとても怖く思えてくる。

 メインのストーリーではないのかもしれないけれど、若者の終わってしまう未来まで、こうして鮮やかに描かれている凄い映画なのだと思う。





(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでもらえたら、うれしいです)。



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