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「実験店舗」で、買い物をする。

 コンビニの実験店舗、というのを、初めて聞いた気がする。それは、もしかしたら常識なのかもしれないけれど、なんだか不思議で、近未来で、理科室以外での実験という響きは、ディストピアに結びつきそうだから、ちょっと怖くもあった。

コンビニの無印良品

 ファミリーマートに「無印良品」の製品が置いてあって、そんなに頻繁に買わないのだけど、ノートを愛用しているので、時々、あ、忘れてた、というときに、近くで買えるのは、ありがたかった。

 それが、いつの間にか、ファミリーマートでは売らなくなった。そんなに熱心な無印ファンでもないのだけど、なんだか残念だったし、個人的にはファミマと無印のイメージは近かったので、これでコンビニで買えなくなるのは、また時代が変わっていって、なんとなく諸行無常な気持ちになっていた。

 それが、コロナ禍で、コロナのことばかりに気持ちが行ってしまっていた時、なんだか動きがあったらしいけれど、それは知らないままで、最近になって、ローソンで無印の商品を扱う、といったことを、どこかで読んで、検索したら、すぐに出てきた。

・2020年6月より展開中
ローソン久が原一丁目店 (住所:東京都大田区久が原1-12-11)
ローソン新宿若松町店 (住所:東京都新宿区若松町28-25)
ローソン南砂二丁目店 (住所:東京都江東区南砂2-37-1)

 この中の久が原という地名と番地名には見覚えがあった。
 時々、用事があって、行く場所があり、その時、毎回のように視界に入っているローソンのはずだった。

開けた場所

 そのローソンが「選ばれた」ことが、個人的には、すごく意外だった。
 その場所に行くには、最寄りの駅から歩く。久が原という場所は、大田区にも、田園調布のように何ヵ所かある、いわゆる「高級住宅街」で、駅から歩くと、商店街を通り抜けた後、そういう場所が続き、しばらく歩くと、小学校があり、そこから下り坂になる。

 急に視界が広くなるのは、高台という高さから、景色を見るせいもあるし、新幹線の走る線路が見えるせいだと思う。その線路で、その場所が、何か切り取られたような感じにもなって、そこに住宅だけでなく、小さいビルや、駐車場などが目立つようになるから、ここまでの印象とは大きく変わってくる。

 そして、下り坂が降り切るような場所には、宅配便の「佐川急便」と「ヤマト運輸」の施設が、道をはさんで、同じような規模である。たぶん、10台以上は、トラックが止まっている。そこには荷物が集められ、そして、運ばれるような「センター」とか「営業所」というのか分からないのだけど、そんな場所がある。

 道の両側に、宅配便業者の大手の(たぶんライバルでもある)2社のトラックが多く止まっている、というのは、最初に見た時は不思議に思ったし、何度見ても、違和感があるものの、それだけ、ここは、トラックが止まったり、発車したり、運搬するのに、実は便利で、意味がある場所かもしれない、とも思う。

 その近くの交差点には信号がなく、だけど、その道路はバス路線でもあるから、バスが通るし、そんなに交通量がないのに、トラックなど大型の車両を見かけることも多いような気がするから、勝手な感じ方なのだけど、急に、大田区の工業地帯の部分が少し顔を出しているように感じた。

 そのそばに、無印良品が置いてあるはずの、ローソンがある。新幹線のガードのそばだし、何か開けた場所にあるし、そんなに人が使うのだろうか、と思っていたのは、この場所が駅から15分ほど歩いて、自分にとっては、はるばる来た、という印象があるせいだと思う。

経済活動を知っている人の言葉

 あの場所に、無印が置かれる。それも、都内ではローソンのサイトによれば、3店舗だから、選ばれたといってもいい店舗なのだけど、勝手な印象としては「選ばれる」のは、もっと人がたくさんいるような、華やかな場所というか、売り上げが多いような場所で行われるような、そんなことを思っていた。

 だから駅から遠い場所に、急に現れるようなコンビニで、そうした試みがされているのは、不思議だった。


 そんな話を義姉にしたら、答えはすっと返ってきた。
 それは、人がたくさん来るとか、来ないではなくて、実験として行われるのだから、その実験が行いやすい、といったことが重要で、そのために店舗が選ばれているのだと思う。だから、便利な場所にあるなしではない、といったことを教えてくれた。

 なんだか、すごく納得ができたし、こうした経済活動に関して、自分がいかに無知で、考えが及びにくいのか、つまりは苦手なことを改めて知った。

 そして、やはり、経済活動に関しては、ずっと現役で、長く実績を重ねている人の視点と、その反応の速さは違うと思い、そのことを教えてくれたことで、義姉にお礼を言った。

「実験店舗」という言葉

 3度目の緊急事態宣言で、いつも駅ビルで無印良品の店に行き、買い物をしたりもするのだけど、そこも休業になっていることもあり、近くに行く用事があるので、久が原一丁目のローソンで、買い物をしようと思った。

 天気がいい。

 空が広く、視界も広く、その中で、トラックの走行音や、新幹線が通り過ぎる独特の音が響くと、やっぱり、何か違う場所に来た感じはするが、初めて、そのローソンに入ったら、思った以上に広かった。

 無印良品の商品も、食品はレトルトが並んでいるし、自分の目的の文房具もかなり揃っているし、さらには下着類も充実している。そして、お客は、思ったよりも多かった。

 近くの宅配便会社で働く人たちは、自分が見ている範囲に限られるけれど、午後5時過ぎに店舗に入ったら、ひっきりなしに来る感じがするし、学生も目立つ。そういえば、小学校や、高校、幼稚園もそばにある。

 それに駅から遠いから街の外れ、といった自分の勝手なイメージに引っ張られているのだけど、ここには商店が少ないのだから、コンビニがあれば、そこに来るのは当たり前だから、この時刻でもレジに列ができているのも、少し考えたら、自然なことだった。

 私も、レジの列に並んだ。客層も、年齢も広そうだった。

 購入した後に、ダメで元々で、聞いてみた。


 無印良品は、いつまでおいてあるのか?
 どうして、この店舗にあるのか。

 そうしたら、若い男性店員が、業務に直接関係ないはずなのに、親切にスムーズに答えてくれた。

 無印の商品は、期間限定でなく、ずっとあります。
 それに、こういう店舗は都内で、確か4店舗くらいはあると思います。ここは、実験店舗なので、他にもクスリを置いたりしてます。

 そんな答えだった。
 確かに、薬も置いてあるし、外には電気自動車の充電器まであった。


「実験店舗」という単語を、そこで働く人から直接、聞くのは、不思議だった。

 自分としては、どうしても実験と聞くと、実験動物、といった単語が浮かんでしまって、ちょっと嫌な気持ちにもなるが、見方を変えれば、都内にも数多くあるローソンの中でも、選ばれた数店だけが、「無印良品」を置いてあるし、他ではやらない試みに、最初に取り組むのだから、ここが経済の最前線、と考えれば、どこか誇れることにもつながるのかもしれない。

 そんなことを思うような、爽やかで自然な話し方だった。
 仕事中に、そうしたことまで普通に簡潔に分かりやすく、教えてくれて、ありがたかった。

「経済を回す」という表現


 この1年で、経済を回す、みたいな感じは、実際には、ピンと来なかったかのだけど、こういう「実験」を、昨年の6月、すでにコロナ禍という言葉が定着している頃から始めているのだから、なんだかすごいと思った。

 考えたら、「実験店舗」が可能になるのは、「本部」の意向にスムーズに素早く添える、ということだから、いわゆる繁盛店で、しかも確かフランチャイズ、の形式だったら、今、うまく行っていたら、そこのオーナーは変化を拒みそうだし、だから、実験店舗は、単純に直営店なのか。もしくは、現在、困窮していて、何か新しいことを試みやすくなっている場所か、どちらかなのではないか、と思ったりもした。

 ただ、そういうことは、ビジネスの現場で働いている人の常識なのかもしれない、と想像すると、自分が何も知らないだけなのかも、とも思った。

 もしかしたら、ここを「実験店舗」としている理由は、客層の安定のように、実ははっきりとあって、それこそが語られないことかもしれないが、考えたら、最初から、人が来ないコンビニは考えにくいし、何かを「実験」したことで、売り上げの変化がきちんと分かればいいのだから、ある意味では、どこでもいいのかもしれない。

 他にも、私には分からない「〇〇の法則」といったマーケティングの戦略的な意図が少し見えた気がして、なんだか、ちょっと怖くもなったのは、自分が経済活動にうまく参加できていなくて、それだけ貧乏だから、そうした経済活動の意図を感じただけで、自分は、そこから弾き飛ばされるような気がしたせいもあるのだと思う。



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