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読書感想 「令和GALSの社会学」  『考え続けることのカッコ良さ』。

 薄々感じていたのだけど、20代や30代(という区分けが粗いとしても)は、相当に真面目で優秀な人が一定数いるのではないか、と思うようになった。

 それは、ポジティブな理由だけではなく、この国全体が沈んでいく途中で、そこに生きていって、その後、ここにいるか、それとも外へ出ていくかも含めて、どうするか?を真剣に考えるのであれば、そうならざるを得ない、というような切羽詰まった結果ではないか、とも思っていた。

 最近、読んだ本で、そのことが確認できたように感じた。

「令和GALSの社会学」 あっこゴリラ・長井優希乃・三原勇希

「令和GALS」は、3人。 

あっこゴリラ。ラッパー/ドラマー/ラジオパーソナリティー。
長井優希乃。1991年生まれ。ヘナ・アーティスト、芸術教育アドバイザー、中高社会科教員。
三原勇希 1990年生まれ。大阪府出身。タレント/ラジオDJ。


 この3人が話をして、それをまとめたもので、普段はテレビやラジオなどで遠くから見ているような人たちで、しかも、30代前後の女性で、タイトルの「令和GALS」と、表紙の感じから見ても、キラキラし過ぎていて、縁遠さを感じる。

 それでも、読み始めると、「社会学」の方に主軸が移ってくるのも分かるし、その見立ての正確さと冷静さの方が目立ってくるように思う。

優希乃 自己責任論がすごいよね、日本って。
あっこ ヤバいよね。
優希乃 今の日本って沈没しかけてる船みたいな感じがする。死ぬまでみんないっしょだよ!みたいな。
あっこ みんなでいっしょに我慢しよう!って感じじゃん。私はそのシステムに対して中指を立ててる。 

変わらない課題

 自分自身が、大人になってからの時間が長くなり、男性でもあったのだから、そのぶん、有利な部分もありながら、何もできなかった無力さを思うのは、この本で語られていることの問題や課題は、もう随分と昔から語られ続けているからだ。

 それは、個人の問題ではなく、社会の責任なので、偽善的な感覚かもしれないが、年長世代としては、社会を変えられなかった申し訳なさも感じたりはする。

 例えば、年齢を重ねた女性のロールモデルについて。

あっこ  達観した立場で言いたいわけではなくて、絶対にメディアの洗脳はあったと思う。ロールモデルがいない、もしくはいてもごく少なくて、夏木マリと黒木瞳と椎名林檎とかYUKIちゃんとかCHARAとか。そのへんの人たちが年齢にとらわれずに自分の規範の美学とかスタイルを提示しつづけてくれるわけじゃん。YUKIちゃんなんて今何歳かわかんないけど、ミニスカートとか余裕でやるじゃん。 

 例えば、男女平等が今も進んでいないことについて。

あっこ  人権に目覚めたら意識が高いってわけじゃなくて、日常に転がってるそういうことが、人権に目覚まさすんだよっていう。フェミニズムをたたく、みたいな風潮あるじゃん。はれものとか。でも、そういうのが転がってるから。
優希乃  なりたくてなったんじゃないっていう。

さらに若い「Z世代」のこと

 そこから、さらに話が広がっていくのは、新しい話し手も登場するからだった。最近、ラジオなどでよく名前を聞くS KY―HI。彼女たちよリも、少し上の世代になるけれど、話しぶりや、内容はすごく冷静で、老成までも感じていたし、自分の見た目すら、それは仕事で利用できれば利用するが、そんなことは関係ない、といったような冷静な態度も気になっていた。

 S KY―HIが30代半ば、「令和GALS」が30代前後、さらに、10年以上下の「Z世代」の話題にも言及している。

 もっと上の世代から見たら、「Z世代」までは、直接の理解は届きにくいと最初から諦めがちだとしても、彼ら、彼女らの見方を通すと、わずかとはいえ、理解に近づけるような気もしてくる。

あっこ Z世代とのコミュニケーションって、どうすか?
S KY―HI ラクだけど。
あっこ ラクだけどさ、たまにびっくりしない?
S KY―HI え、なんでなんで?
あっこ マジでしっかりしてるから。
S KY―HI あ〜確かに!

考え続けるカッコ良さ 

 読み進め、読み終わって印象に残るのは、3人の真面目さだった。

 この「令和GALS」の3人が、友人のような距離感であり、よく知っている上で信頼があるからこそ、こうして普段とは少し違う場所を設定することによって、かなり掘り下げて話もでき、そのことで、お互いに新たな発見もあり、新鮮な視点を獲得していく。

 対談といったシステムの中でも、その誠実さと、真剣さで、そうした変化を実現しているから、新しい形の「三人よれば、文殊の知恵」のドキュメンタリーのようにも感じる。

 もう「真面目がカッコ悪い」などと言っているような余裕も、愚かさもなくなってきていて、それは、状況が切羽詰まっている、ということなのだろうと思うけれど、それでも、ここには「考え続けるカッコ良さ」があるようにも思えた。

あっこ  私は常に言ってるんだけど、思考を促してるだけのつもり。「私みたいになりな」なんて言ったこと絶対にないし、思ったこともないし。そういうの今までもいっぱいあったけど、いつも「自分で決めな」って言ってきた。 


 今、現在の若い世代には、もちろんですが、若い世代(大雑把な括りですが)のことが分からない、と思っている先行世代には、さらに、強めにオススメできる書籍だと思いました。



(他にも、いろいろと書いています↓。よろしかったら、読んでいただけると、うれしいです)。


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