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「ブームの十分な振り返り」は、必要ではないだろうか。

 コンビニにいたら、まだ小学校に入っていないくらいの小さい女の子が入ってきて、「たんじろうだー」と小走りになって、商品棚の方へ、ほとんど転びそうになりながら、向かっていった。

 あんなに小さい子供でも名前を覚えて、一瞬、我を忘れるほどに魅力があるのは、やっぱりすごいのかもしれない、と思ったけれど、その時は、自分があまり「鬼滅の刃」を知らなかった。

 ただ、新しいアニメのシリーズが始まり、私自身も見るようになって、これだけの長い時間、バトルを繰り返しながら、激しさが増しながらも飽きさせず、回想シーンも織り込んで、視聴者の気持ちの距離も近くするのはすごいとも思いながら、でも、同時に思っていた。

 他にも優れた作品はあったはずだけれど、どうして、この「鬼滅の刃」が、この2020年代に、こんなにヒットしているのだろうか。

「鬼滅の刃」がヒットした理由

 こうしたブログでは、マーケティングの視点から分析もされているが、アニメファンだけでなく、こうした広い層にまで伝わり、分析させてしまうのが、本当にヒットした作品にはありがちなことだと思う。

 それほど情報に強くない私も、そのヒットの理由については、特定の誰が言ったということではなく、さらに、いろいろと目にしたり、耳にも入ってきた。

 その中でも複数回聞いたのが、小学生をがっちりファンにしたことが大きい、という言葉だったが、それについては、これまで、様々なヒット商品の理由を語る時にも接してきたから、明らかに既視感があった。

 ヒットしたことが、さらにヒットを生む、というような言い方もされていたが、どうして「鬼滅の刃」という作品がこれだけ注目されたのか、といった決定的な理由にはならないように思えた。

人間の癖

 全く別の作品が、大ヒットしたとしても、おそらくは同じような理由や分析がされるような気がするから、結局のところは、作品の持つ運のような、偶然の要素が積み重なっただけのような気がする。

 それは、大げさに言えば、地球上で生物が人類まで進化してきたのは、おそらくは信じられないくらいの偶然の積み重ねだと思うのだけど、その人類の進化という現在から見てしまうと、何かしらの意志や意味を見てしまうことと似ているのではないか、と思うことがある。

 もしくは、大ヒットという大きな現象に対して、実は理由なんてないのだけど、理由があると思えた方が安心できるから、その理由をどうしても探してしまう、という人間の癖なのかもしれない。

「およげ!たいやきくん」がヒットした時代

 「マツコの知らない世界」で、たい焼きを取り上げていて、その時にたい焼きマニアの口から、「およげ!たいやきくん」の影響が語られていた。

 1970年代の大ヒット曲「およげ!たいやきくん」の歌詞の中に、たい焼きが鉄板で焼かれて、というような言葉もあったし、あとはヒットによって大量に売れるようになったことで、それまでは、一つ一つ焼くようなスタイルだったのが、型が多く並ぶ鉄板で焼くようになった。

 たい焼きマニアの出演者は、従来の一つずつ焼くスタイル「天然物」と名づけ、それが、「およげ!たいやきくん」のヒットで減ったと残念そうに語っていた。

 何かの大ヒットは、その後にさまざまな影響を与えるが、この時(1975年)のヒットも、その理由を探ろうと、さまざまな分析がされていた。

 その中でも、やはり、当時の小学生に特に人気があった、という言葉はあった。さらに、歌詞の最後に、たい焼きは食べられてしまうのだけど、その最後まで曲がかからずに、途中で終わると、子供に評判が悪い、といった事実から、その時に人称の転換が行われているのではないか、といった分析もされていた。

 あとは、大量生産されるたい焼きが、今の管理社会を表しているから、そこから逃げていくたい焼きに共感しているのではないか、という視点も提供されていた。

 だけど、この時も、何しろレコードの売り上げが400万枚を超えていたから、何か理由を分かりたくなるのだろうけど、おそらくは偶然の積み重ねだと思う。

「だんご3兄弟」がヒットした頃

 20世紀の終盤、子供からヒットが始まった、と言われていたことを覚えているのは、「だんご3兄弟」だった。それは、1999年のことになるのだけど、その時も、さまざまな分析がされていたし、その後も語られている。

 そして、「だんご3兄弟」の頃は、マーケティングという概念が、一般的な視点の一つとなっていたせいもあり、このヒットは狙っていた、という言葉とともに、さらに分析的な言葉が書かれていた記憶がある。

 だけど、おそらくは、その理由はよく分からないのだと思う。

 そして、その大ヒットの理由は不明のままだとしても、その影響は良くも悪くも具体的な影響は与える。だからこそ、その影響を受けた人たちは、そのヒットの理由を、知りたくなってしまうのかもしれない。

「ブームの理由」の振り返り

「鬼滅の刃」、「およげ!たいやきくん」、「だんご3兄弟」という大ヒットした作品に共通するのは、その当時の子供たち、特に小学生にウケた、と分析されていたことだと思う。

 その理由については、その当時の大人がいろいろと語っていたような記憶もあるし、「鬼滅の刃」に関しては、しばらく分析が続くはずだ。

 だけど、「およげ!たいやきくん」と「だんご3兄弟」に関しては、子供がとても好んだから、とは言われていたけれど、その理由は、子供本人ではなく、当時の大人が(推測して)語っていた。

 だけど、その時の小学生などが大人になって、どこまで覚えているかどうかは個人差はあるにしても、どうして、子供の時に、あんなに、あの作品に夢中になったのか、については、語れるようになる人も少なくないと思う。

 だから、大ヒットの渦中にいた「こども」が、どうして、それほど好きだったのかを、ある程度の年月がたてば、その当時の子供が大人になることによって、少なくとも、より正確な調査はできるような気がする。

 それが、手間をかければ可能であるにも関わらず、大ヒットやブームの理由に関して、何年か経ってから、そうした、正確な振り返りがされたという事実を聞いたことがない。

 それは、私自身が無知のために知らないだけかもしれないけれど、その調査によって、もしかしたら、大げさかもしれないけれど、たとえば、人間が危険な熱狂をしないための、少しでもファシズムに行かないための、思いがけない事実がわかる可能性はないだろうか。


 「鬼滅の刃」は、子供から始まったブームと言われている。

 だから、あと何年も経って、たとえば、私がコンビニで見かけた「たんじろうー」と叫んで、転びそうに小走りしていた女の子が、自分の過去の気持ちに対して、冷静に言葉にできるほど「大人」になった時に、そのブームの理由の振り返りはしてほしいし、それができるような環境があればいいのに、と思っている。




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