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夜中にアルバイトで、浜名湖へ連れていかれた記憶。

 今も、街を歩いていると、小さなイスに座って、季節が寒くなってくるとヒザに毛布のようなものをかけて、道路のすみでカウンターで、数をかぞえている人がいる。

 それを見ると、すぐに「交通量調査」という言葉が浮かぶのは、昔だけど、そのアルバイトをしていたからだと思う。

浜名湖

 学生の頃、人並みに、アルバイトをしていた。その中で、不定期だけど、体は楽で、それなりにお金がもらえるバイトとして「交通量調査」があった。だけど、いつ仕事があるか分からず、不定期で、短期で、そんなに数多くできるわけでもなかった。

 仕事は12時間か、24時間。
 自分の経験だと、2時間働いて1時間休みくらいのペース。
 自動車の種類や、歩行者が、どれだけ通り過ぎていくかを数える。

 とてもシンプルな仕事で、時給換算をすれば、他のバイトと比べると、割高だったので、募集がかかると、すぐにうまることが多かった。

 まだケイタイもスマホもない頃だったので、アルバイト情報誌などで見つけて、電話をして申し込む、というスタイルだったから、妙な競争のようになっていた。

 あるとき、友人と一緒に、そのバイトをすることになった。
 たぶん、誘ったのは私の方で、それは、休憩時間を一人だと持て余し、近所の公園か何かで座って、空を眺める、みたいなことをしていると、思った以上に気持ちが下がっていたからで、その時間を誰かと一緒だったら、少しでも楽しくなると思ったからだった。

 今は記憶がはっきりしないが、夜中に東京都心の、どこかの駅のそばにある事務所のような場所に集合し、そこから、8人くらい乗れるバンに乗り込み、出発した。明確に知っていたのは、働く時間で、次の日の早朝から、さらに2日後の早朝までの24時間バイトだった。

 朝早く起きなくていいので、そのバイトに申し込んだこともあったのだけど、そのバンは走り続けた。東京都内を抜けて、途中で眠ってしまったので、よく分からないうちに、とても遠いところに向かって走っていた。もしかしたら、告げられていたのかもしれないが、私自身は、どこに行くのか分かっていなかった。

 なんだか不安になって、だけど、友人も一緒だし、それほど言葉を交わしていないけれど、似たような若い男性も何人も乗っているから、何かあっても大丈夫だろうと根拠の薄い安心感を作り出すと、また眠った。

 着いたのは、湖のそばだった。

 そこに浜名湖が広がっていた。

交通量調査

 浜名湖を渡る橋があって、そこを通る時に料金が発生する。だから、料金の受け渡しが必要になる。そこにボックスの部屋のような場所があり、料金の受け渡しをするスタッフがいて、その後ろで、その道路を通るクルマの種類と、数をカウントする。

 それが、私たちの仕事だった。

 確か、その場所にいるためにヘルメットも、かぶっていたと思う。

 単調な作業をして、休憩時間は、道路の間のスペースがあって、そこには、芝のような植物も生えていたから、寝転がって、友人と話をしながら時間が過ぎた。時々、少し眠ったと思う。

 何か、普段は話さないようなことも話したような気がするが、詳細までは覚えていない。とにかく、一人で来なくてよかった、と思ったことは確かだった。

 そうしているうちに時間は、ただ過ぎていって、ただ数を数え、次の朝を迎える頃に、そのアルバイトの元締めのような人が告げたのは、24時間から、さらに2時間の延長だった。その分、お金は出るし、浜名湖から帰れるわけもないので、了承するしかなかった。

 それでも何が起こるわけでもなく、さらに時間が過ぎて、バイトは終わった。

 そこから、またバンに乗り込み、高速道路を通って、それなりに長い時間が過ぎて、東京都内の元の場所に戻ってきた。

 やっといつもの日常に帰ってきた気はして、アルバイト代を現金でもらって、そして、家に帰っていった。

 それから、社会人になって、フリーのライターになって、仕事が少ない頃、また、このアルバイトをすることになるのだけど、その時のことは、また違う印象と出来事があった。

 だけど、あんなに遠いところまで連れて行かれたことは、それ以来は経験していない。

 今思い出すと、不思議な気持ちになる。




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