#73 Gregoryのトンボ
「よかったー!無事ね?」
Oliviaにはまだ半透明のトンボが付きまとっていた。
扉の近くにいることで
再びOliviaの顔に向かって激しく羽ばたき、
おかげで私の頭にも何度かぶつかってきた。
「私、パパに見つかって…
あーもう!しつこいわねっ!」
Oliviaはまだ警告するように付きまとっているトンボを
手で振り払いながら話した。
「それで私、慌てて…
海底都市へ行く鍵の話しかしてなかったでしょ?
海底都市では,あなたなら薬がなきゃダメだし、
明かりもないと怖かったでしょ??」
「ちょっとドキドキはしたけど
大丈夫だったよ。大丈夫。」
「帰りのことも何も言ってなかったし…
あ、ちょっと…
カフェに戻りながら話していい?
ホントしつこいトンボが…いてっ!」
激しくぶつかり続けるトンボから逃れるため、
私達は扉から離れてカフェの方へ戻っていった。
扉のある通りからカフェのある広場方面へ曲がると
トンボは大人しくOliviaの肩に留まった。
「ホントごめんね!
カフェの方に戻りながら、
大事なこと、何も伝えてないって気づいたの!
それで急いで戻ったんだけど、もうあなたはいなくて。
鍵屋のおじさんに聞いたら
もう行っちゃったって。
薬のことは教えたって言ってたから、
とりあえず少し待ってようって思ったの。
この子が…」
Oliviaは肩に留まるトンボを恨めしそうに見た。
「あんまり激しくて。
本気で街を出させない感じだったから。
遅かったら、強行突破しようと思ったけど。」
今度は脅すような目でトンボを睨みつけていた。
「あはは。心配してくれてありがとう。
Cedricさんにちゃんとプレゼント渡したよ。
あと、研究所の受付の人魚の人に
海底都市の案内もしてもらった!
またゆっくり行けたらいいなぁ。」
「そっか。なんだか楽しんでたみたいで良かった。」
Oliviaは安心したように大きくニッコリとした。
「そういえば、鍵屋さんの鍵は
一回きりで無くなっちゃうの?
帰りに使ったこの鍵は消えなくて良かった…。」
「そりゃ鍵は使ったら消えるわよ。
それに、もちろんその鍵は消えないわ。
あなたの鍵でしょ?
前にも少し言ったけど
少しずつ色んな所へ、
その鍵1本で行き来できるように変化していくはず。
あなたの興味や関心、経験で
鍵も成長していくはずよ。」
「そっか。それ、たのしみ!」
話してるうちにカフェに着いていた。
Oliviaは少し躊躇したが、店に入った。
カウンター越しに顔を上げたGregoryは
Oliviaを見るなりしかめっ面になった。
それと同時に肩に留まっていたトンボは煙のように消えた。
「街を出ようとしたな?」
「あーうん、そう。ごめんなさい。
どうしても…」
「ちょっとこっちへ来なさい。」
そう言って二人は厨房の暖簾の向こうへ行った。
扉のないドアの枠の向こうで声だけが籠っていた。
「ダメだって言ったろう?
パパがなんでも許すと思ったら大間違いだぞ!
外出禁止は1週間延ばすからな。」
Gregoryは強い口調で言った。
「えぇ!でも、私、街は出てないわ!
ちゃんと約束通り1時間で帰ってきたのに!」
「それはトンボがいたからだろう?
パパの守護動物に見つからなかったら
そのまま扉に言ってたじゃないか!」
「でも、パパ、私、どうしてもCedricに…」
「関係ない!いい加減にしなさい!
他にも手段はあっただろう!
人も巻き込んで。」
Gregoryは私の方をチラッと見た。
私はとても居心地が悪かった。
約束の時間通りには戻ってきたが、
Oliviaが街を出てはいけないのは知っていた。
「部屋に戻って反省しなさい!」
「…はーい。」
Oliviaは落ち込んだ様子で部屋へ上がっていった。
「あの…Gregoryさん。
ごめんなさい。私もちゃんとわかっていたのに。」
「そうだよ。M.ちゃんも良くない。
すなまいが今日はここへは寄らないでくれ。
Oliviaにはしっかり反省してもらいたい。」
「そうですね…。ごめんなさい。」
「いや、大丈夫だよ。
また次に来た時には寄ってやってくれる?」
「はい。もちろんです。
では、また次来た時に。」
私はそのまま自分の部屋へ帰った。
これがGregoryのトンボがいた理由のおはなし。
続きはまた次回に。
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