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#72 帰りの鍵

Helenaの店には
タツノオトシゴのシルエットが浮かぶ
カリブの海馬以外にも

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様々な海の生き物たちのシルエットの浮かぶ
宝石が並んでいた。

顔を上げて店の全体を見ると
大きなサンゴや貝を使った大きな宝飾品などもあった。

店の奥の隅には
大きな宝箱が口をぱっくり開けて置いてあったが
その上には【海底のガラクタ。掘り出し物があるかも。】
という表示があった。

「あれは落とし物よ。
沈没船とかから拾ってきたものなの。」

中を見ようと近付いた時、
Cherlotteがハッと声を上げた。

「あ!戻らないといけないみたい!
ラボにお客様だって。」

Cherlotteに向かって小さな魚がゆらゆらと
何かを伝えたようだった。

「ごめんね、もう戻らなきゃ。
街の扉までは一本道だけど
暗いし危険もあるから、一応一緒に戻りましょ。」

「あ、はい。
Helenaさん、ありがとうございます。
またゆっくり見に来ます。」

「えぇ、いつでも待ってるわ。」

そうして私達は店を出て研究所へ向かった。


「ごめんね、来客なんてほとんどないのに
今日は2人も来るなんて!」

「いえいえ!素敵なお店を紹介してくださって
ありがとうございました!
付き添いは研究所までで大丈夫ですよ。」

「あら、ほんと?大丈夫??」

「暗いのにもだいぶ慣れてきたし、
研究所から扉までもすぐだし。」

「そうね。だけど、たまに暗闇から
大きい生き物が現れることがあるから
ぶつからないように気を付けてね。
ほとんど襲ってくるようなことはないけど。」

「そうなんですか!?
でも、まぁ、襲われないなら大丈夫…かな。」

「そう。じゃ、ここまでね。
また来た時は是非ラボにも寄ってね!
Cedricはきっとラボの中を案内してくれるわよ。」

「はい!ありがとうございます!」

そう言って研究所の前に着いたCherlotteは
尾びれを大きく振って
研究所へ戻って行った。

その尾びれの動きに合わせて
突風のような感覚が私の全身に伝わった。


街の扉へ向かって研究所を離れていくと
また街灯の頼りない灯りだけになった。

扉のすぐ近くまでたどり着いたころ、
ふと気が付いた。

私は帰りの鍵を持っていなかった。
来た時に使った海底都市への扉の鍵
開けたときに消えていた。

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扉のすぐ横には
鍵屋と書かれた看板がある建物があるが
看板も建物も藻やヒビだらけで真っ暗だった。

開いているのかもわからず
なかなか入る勇気が出なかった。

私の持っている鍵は
いつも私の部屋からOliviaの街に繋がっているが
果たしてここからでも
Oliviaの街に繋がっているのだろうか。

私は心の中でOliviaの街…Oliviaの街…
と唱えながら鍵を挿した。

すると、カチャッという開錠の音が鈍く聞こえた。
今度は、鍵は消えずに残っていた。

写真 2020-04-15 16 01 57

扉を開けるととても眩しかった。
もしかしたら、自分の部屋に戻ってしまったのかも
と思いながら足を踏み入れた。

眩しい中で鍵を取って後ろ手に扉を閉めた。
徐々に街の景色が見えてきたと同時に
誰かが勢いよく私に飛び込んできた。

Oliviaだった。



これが帰りの鍵の不思議なおはなし。
続きはまた次回に。


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