#53 ドラゴンエッグストーン
Gretaたちと分かれて進んだすぐ先から
周りの岩の色がかなり青みがかっていた。
また、これまで以上に
通路の高さと幅が広くなっていった。
温度も少し下がって、気候が変わったような感覚だった。
Alexはさらにペースを落とし
ほとんど立ち止まりながら言った。
「この辺りから、ドラゴンの痕跡を感じるわ。
ここまでは通路だったけど、
少し前から空間が大きくなったでしょ?
それに、岩もドラゴンが好む岩だわ。
この青い岩は、ちょうどドラゴンが快適に感じる
湿度や温度を保つ機能があるの。」
空間全体を大きく見渡しながら
前方を見てみると
何やら白い文字のような記号のようなものが
壁に書かれているのが見えた。
「あの印は、前回の事前調査で
ドラゴンブラッドを採掘した場所よ。
きっとまだ埋まってると思うから、
これからしっかり採掘するわ。
今回は、もう少し先まで行くわね。
これほど大きな規模の棲み処なら
もしかすると、卵の何かがあるかも…」
そう言うとまた、慎重に奥へ進み出した。
もう少し進むと、さらに大きな空間が広がっていた。
私達はそこで足を止めた。
それぞれ気になるところを観察しながら
少しずつ離れていた。
天井は、もう暗くて全く見えないくらい高かった。
TonyやNoahが時折、光の玉を高く飛ばし
天井の様子を観察しているようだった。
その光の玉は天井付近まで飛んだかと思うと
弾けるように広がり、全体を明るく照らして
細かくなってゆっくりと消えていった。
数頭の巨大なドラゴンが過ごしていても
窮屈にはならなさそうなこの空間の中で
少しくぼんだような場所があった。
Alexはその辺りを調べていた。
「あったわ!」
つぶやくような声でもその声は全員に届いた。
みんながそこに集まった。
Alexの拾い上げたのは
ウズラの卵ほどのとても小さな白い卵だった。
「卵だわ。」
「え、それが…
ドラゴンの…たまご!?」
「そうよ。」
「じゃあ、それって、
何とかしたら孵るんですか?」
私がそう言うと、みんなが笑った。
笑い声がよく反響していた。
「残念ながら。化石よ。
いくつかあるわね。」
Alexが拾い上げた辺りをよく見ると
岩の隙間の小石に混ざって
砂に埋もれるようにいくつかの卵があった。
さらに小さいのや、少し大きめのもの、
サイズもまちまちで
その真っ白な表面にはヒビが入っていた。
「このクラックを見て。
綺麗じゃない?」
Alexについていたランタンが
グッと寄ってきて卵を照らした。
「ホントだ…」
「なんだか金色に光ってる?」
私とOliviaはまじまじと観察した。
「このクラックは
シルクのような白の輝きと金または銀に
輝くのが特徴よ。美しいでしょ?」
「確かに、大理石とかそういう
クラックの入った天然石みたいに
高級感がありますね!」
少し観察した後、Alexがチームに指示をした。
「簡単に採れる分は採っちゃって
一旦出ましょう。
どれくらいの年代のものかとかも
少し調べたいし。ちょうどお昼にいい時間だし。」
チームのみんなはササッと表面に見えた卵を採取し、
私達は来た通路を戻っていった。
途中で分かれてゴブリンの秘密の鉱石コレクションを
採取していた仲間も合流し、
入り口で待機していたDanも一緒に
ダイニングルームに向かった。
これがドラゴンエッグストーンを
見つけた時のおはなし。
続きはまた次回に。
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