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手の夜

こんばんは。今日もお疲れさまでした。

私の好きな映画監督の一人にウォン・カーウァイ氏がいます。いつももの悲しく、エロスを漂わせる彼の作品をただうっとりと眺めるのが好きなのです。

彼の短編作品に「エロスの純愛〜若き仕立屋の恋」という話があります。高級娼婦の服を仕立てにきた仕立て屋の見習いの若者が、この娼婦に恋をする物語です。彼女は片手だけで彼を虜にします。

彼を片手でからかって、「ふふふ」と微笑みながら、服を仕立てさせるのです。彼は、そんな彼女の服を仕立てながら、いつの間にか立派なひとりの職人として独立するまでになるのです。

彼女はというと、今までの一番金銭的に頼れた男性に振られてしまい、年齢も伴って、少しずつ没落していきます。もう仕立て屋を呼ぶ事などとてもできません。彼女は明日生きれるかどうかというところまで来ているのです。

仕立て屋の男性は、そんな彼女を知っています。それでも、彼女にぴったりと合う服を仕立てています。言葉を交わす訳でも、体に触れることがある訳でもありません。それでも彼は仕立て続けます。彼女に内緒で何年も何年も。

彼女はとうとう病に倒れ、寝台から起き上がることもできなくなります。彼は、そんな彼女の家賃も光熱費も陰ながら払い続けます。そして、何十年振りかに彼女に会いに行くのです。直接服を届けるためです。彼女は彼を覚えていました。彼女はもう体を合わせる事もできません。手で彼に触れることが精一杯です。

そして、彼の涙を浴びながら、彼女は動かなくなっていくのです。

キスもした事のない男性の純愛の話です。彼の恋は彼女だけのものなのです。

私はこの短編映画が好きで、何度も何度も映画館に通っていました。

この間、ボーイフレンドの一人が手を忘れられない人がいるという話をしていて、この話を思い出しました。彼は、その彼女に嘘をつかれるので、会うことに躊躇しているのです。

彼らは、手の夜を心に抱えて日々を過ごして行くのです。彼らにとって彼女たちのては誰にも変えられない特別なものです。手の夜が特別なものに感じるのは私が女性だからでしょうか?手の夜を想像し、うっとりしながら、眠りにつきます。おやすみなさい。

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