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おまえ うまそうだな/You Look Yummy!


出会い

友人が気になるって言っていたのをきっかけに借りてみました。
作者は宮西達也氏、日本語が原版でしょうけれど偶々英語版を発見したためそちらを。
表紙は肉食を思わせる恐竜がダイナミックに描かれていて、背景には山頂が尖った山々と白い空。
地は黄色く荒廃していて、遥か太古の恐竜のお話かな?何て想起する。
空が白いのは何故か検討がつかないです。
使われている色も、ちょっと男の子テイストというか、イラストとテーマに力強さを感じます。
自分の直感じゃ選ばないタイプの絵本だって思いますね。

 本を読んでいると縁って人との出会いだけに留まらないなあと感じます。私が専門書以外の本を選ぶ経緯は大概が勧められたり、目に留まったりする、直感で選ぶことが大半なので。
「袖振り合うも多少の縁」とは本にも通じるものがあったりして、なんて感じます。

あらすじ

 A long long time ago---と、定番の枕詞から始まる昔話。
昔々あるところに。
この言葉って、それだけで物語の世界に引き込ませてくれる究極魔法だと思う。身に纏っている常識とか道徳観念の衣を引き剥がして丸裸にしてくれそう。
「遠い昔のことだからお前には知る由もないだろう、この先どんなミラクル、不条理が起こっても飲み込めよ」っていう意を感じる。私だけか。
 脱線。話の舞台は火山や地震が頻発する遥か太古の地球で、広大な地でアンキロサウルス(草食タイプ)の赤ちゃんが一匹生まれます。
この孤独なアンキロサウルスの赤ちゃんを偶然見つけたのがティラノサウルス(肉食タイプ)の成獣、しかも腹ペコ。
そんな状態のティラのサウルスが放った第一声「You look yummy」がタイトルになっていますね。
この二匹の出会いと、関係の変化がストーリーとして描かれています。
何も知らない分からない赤ちゃん恐竜は、このティラノサウルスを父親だと思い込むのです。
そこで情が湧いてしまった一匹と健気な赤ちゃんの可愛らしいお話。

感想

父性、がテーマの一つかな、などと思いました。
子を慈しみ、守ろうとする心が母性とするなら、その対極にあるような情。そんな情を、ティラノサウルスは赤ちゃんアンキロサウルスに抱いていくのです。
峻厳にして、子の未来を思う父親の愛情。言葉で上手く表現できないのがもどかしいけれど可愛い子には旅をさせよ、って感覚にちょっと似てるかも。
物語の中で親のいない赤ちゃん恐竜にティラノサウルスは色々教えます。
尻尾の使い方とか、吠え方とか、頭突きとか。
およそ草食タイプには真似できないようなことを、いつかは父のように出来ると信じて健気に真似する赤ちゃんがいじらしい。
そして、全てを教え尽くしたティラノ父のセリフ
「I taught you everything I could」
意思を固めた男のセリフとして格好良く映ります。
自分にできることは全て尽くしたと断言する、自分の役割は終わったと言い切る。
ある意味突き放すよう冷たさは父親の持つ愛情の側面なのかな、なんて思います。
絵本に収まる短いストーリーながらに、二匹にばりばりに感情移入してしまって読んでいて思わず涙が滲みました。
見開き2ページ分にはセリフやナレーターの説明がなく、読者の想像力に委ねられています。
ストーリーの展開があった後のこの2ページと最後のページに感動が詰め込まれています。今見返しても鼻水が出るわ。

知らない語句

最後にこの絵本の中に出て来た知らなかった単語を纏めておきます。どなたかの英語学習の参考になれば・・・

gurgle 自動詞 水などがごぼごぼ流れる音。ガーグルベースンのガーグルか。
rumble 自動詞 雷・砲声・腹などが低くごろごろ鳴る音
hatch 自他動詞 卵などが孵化する
trudge 自動詞 てくてく・とぼとぼ歩く
drool 自動詞 よだれを垂らす
pounce 自動詞 (〜に)急に飛びかかる、(〜を)急襲する 
(pounceって他動詞に見える自動詞ですね。自動詞は前置詞が後に続きます。あとに目的語が続く他動詞と異なり、自動詞は補語や前置詞を伴うことが多いです。)
stun 他動詞 (驚きや嬉しさなどで)呆然とさせる。
be excited 〜のように受け身で使うことのある感情表現です。
blurt 他動詞 うっかり口を滑らす、秘密をもらす
blank look 無表情 空ろな目つき
mumble 他動詞 (口の中で)もごもご言う。低くてはっきりしない言葉音
thwack ぴしゃりと打つこと
munch 他動詞 顎を動かしてむしゃむしゃ食べること 



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