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鮮血と夏休みの終わり

おそるべきスピードで大量の血が体から出ていっている。
毎月毎月、本体である私が忘れていても見事に周期きっかりにやってくる私の生理ちゃんは基本的に重め。

よくもまぁ152cmという小さな体からこんなにも大量の血液が出るもんだと感心するほど大量に排出され、その代償もとても大きい。

全身がだるく重いし、めまいはデフォルト、尋常ではない眠気も襲う。
体の表面は冷えているのに病的な量の汗が分泌され、ただでさえ手汗をかきやすい私は、この時期はいつもPCのキーボードをべちゃべちゃにしてしまい、とても不快だ。

そのうえ体はむくみ、顔も脚もパンパン、はちきれんばかりのその皮膚には血が行き届いておらず、時折猛烈なかゆみが襲っては、ついかきむしってしまった場合は生理が終わってからもしばらく跡が残ってしまう。

やれAIだ、Web3.0だ、ブロックチェーンだと言われ、死後も脳をデータ化することで生きつづけられる技術の開発が進められるこの時代に、なんて人間の体は原始的なんだろうと毎度思う。

それでいうとフェムテックの技術もすさまじく進歩していて、ピルで生理のタイミングをコントロールできたり、鎮痛剤で痛みを抑えられたり、ディスクやカップで不快感を軽減させられたり、吸水ショーツやシンクロフィットで服まで到達してしまう“うっかりシミ”を予防できたり、各開発者の方々ありがとう~!とは思うけれど、それでも不便な体だ。

今回は特に重く、1時間もかからない出社ですでに吸水ショーツから数か所染み出るという、うっかりをかましてくれた生理ちゃん。
その分鎮痛剤がよく効いてくれて痛みはほとんど感じないのがせめてもの救いだが、こんなふうにトイレとお友だちになる日は、出社せずに家で仕事をしたいと切に願う。

いやほんとに、会社の方針さえ変わってくれれば、業務内容的にはゴリゴリに家でできるんですけどね。
休むか、デニムにシミを作るかもしれないという不安を抱えて出社するかの2択しか選べないのは本当にナンセンスである。

ふてくされながら金曜日に置いてきてしまったやる気を取り戻しにPCを開いてふと思い出す。
図書館から借りていた本の返却期限を過ぎてしまった。
先週のうちに延長申請しようと思っていたのに、やってしまった。
すでに返却日を迎えた場合は延長できない。

今年は夏休み中に台風が直撃するという予報があったので、その期間は家から一歩も出ずに本を読んで過ごそうと2冊小説を借りた。
元来は読書好きだと思うのだけど、よくある話ではあるが日々のあれこれに気を持っていかれ、ここ数年は一切本というものに触れていなかった。

少しでも昔の感覚を取り戻したく、コンブチャを作る、ボロボロになってしまったダメージデニムを修復する、なにかものづくりをする、といった夏休みの宿題の中に「本を読む」を追加させたのだけど、結局17ページほどでテーブルの上に置かれたままだ。

たしかに5日間あったうち丸々フリーだったのは台風が直撃するといわれていた2日間だけではあったものの、本を読まずになにをしていたのかもはや全然思い出せない。

きっと昼まで寝ていたり、久しぶりにちゃんとかしこまった料理を作って食べたり(1時間)、映画を観たり(2時間)、長風呂したり(1.5時間)、とこまごま時間を使っていった結果、あっという間に過ぎてしまったのだろう。

自分で掲げた宿題だったのに、叶ったのはコンブチャを作るという1項目だけだった。

なにかをやりたいと思ったときに、どれだけ予定どおりに動けるか、これはいわゆるMBTIでいうところの「J:規範型」が強く表出するタイプかそうでないかということなんだろうか。

残念ながら私は「F:柔軟型」で、昔から計画どおりに行動するのが得意ではない。
というか、計画を立てるのが好きではないので、もうつまりそういうことなんだろうな。

本についてはすでに期限を過ぎているので明日には返しに行きたいところではあるが(家で仕事ができたら今日の開館時間内に行けるのになぁ)、登場人物のひとりが殺されてしまったところで物語をリセットするのも惜しい。
けれどこの眠気では、今日家から帰って本を開く気になど到底なれなさそう。

こういう小さなジレンマを抱えると、なんだか生きているなぁと実感する。
そんな悠長なことを言っている暇があればさっさと返せだし、あるいはさっさと読めというところなのだけど笑。

久しぶりに本を読もうと思ったのは、前々から「私には本を読んであれこれ想像したり、共感したり、学んだり、楽しんだりする能力があるのに読んでいないのはもったいない」という気持ちがあったからではあるのだけど、「今だ!」という引き金になったのは、台風とはるちゃんのディズニーランドの思い出を読んだことだったように思う。

その思い出の中に当然ながら私はいなかったはずなのに、なんとなく「わかる~」と思ってしまって、そのまま自分が中高時代の夏休みに日常的にやっていた読書が懐かしくなったのだ。

ちなみに私にとってもっとも鮮明なディズニーランドのエボークトセットともいえる思い出は、高校のころテストの時期が都立の子たちとズレていたために発生したフライングテスト休みにみんなで学割で行って、どのアトラクションも待たずに、パレードまで最前列で座ってフルコースで満喫したという、今では「嘘だろ?そんなことありえなくない?もしかして夢……?」と思うまさしく夢の国的体験。

少し前に友だちが失恋してディズニーシーに行きたいと言うので、会社を休んで行ったことがあったけど、そのときもどのアトラクションも数十分は待たされたので、あの経験は二度とできないんだと思うとやはり切ない。

チケットがどんなに高くなろうと需要も高まるばかりだね、ディズニー……。

同じように私もあのころとは決定的に変わってしまっていて、読書に時間をかけられない体質になってしまったようだ。
忙しいなかでも本の世界を楽しめるということで「オーディオブックもいいよ」と経営者の方とかからおすすめされるけれど、私はまだ自分でページをめくって自分のタイミングで言葉を拾っていくという作業を手放したくない。

つくづくこの体は原始的だよ、まったく。

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