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ZEB(Net Zero Energy Building)とは

Written by 病院建築note

ビルや医療福祉施設で取得が広がっているZEBについて書きます。

■ZEBとは

ZEBは「ゼブ」と読みます。
ZEBとはNet Zero Energy Buildingの略で、計算上エネルギーを使用しない(ゼロ)の省エネルギー、創エネルギーに優れたビルのことを指しています。年間のエネルギー消費量が実質ゼロになるため、CO2排出を削減することができます。

建物には空調、給湯、照明等によりたくさんのエネルギーが使われています。IPCC(気候変動に関する政府間パネル)によると建物は世界のエネルギーの3割を消費していると言われており、建物のZEB化が進むことは大きな効果があります。

建物の機械設備の省エネルギー化だけでは限界があるため、ZEBを取得するには建築設計から考える必要があります。日照や風通しなどの外部負荷を抑えたうえで、機械設備の効率を上げていきます。

例えば建物を東西軸方向に配置し、東西面の開口部を最小限に抑えることで朝日、西日による熱負担を抑制することができます。

ただお金を掛ければ、ZEB認証を受けられるわけではなく、たとえば1,000床以上の高度急性期だと、病院機能を制限することになるので、実質ZEB ready以上の認証は難しいと言われているようです。

ZEBと似た言葉にZEH(Net Zero Energy House)がありますが、こればZEB認証を受けた住宅を指します。

出典:環境省HP
https://www.env.go.jp/earth/zeb/detail/01.html

■ZEBには4種類ある


①ZEB


一番基準が厳しく、基準値に対する1次エネルギー消費量削減率が100%以上
※創出エネルギーが必須。
ここでの基準値とは基準1次エネルギー消費量を指し、所在地域、室用途、導入設備により定められた基準となる建物の標準的な1次エネルギー消費量のことを言います。

②Nearly ZEB


基準値に対する1次エネルギー消費量削減率が75%以上
※創出エネルギーが必須

③ ZEB Ready


基準値に対する1次エネルギー消費量削減率が50%以上
※省エネのみ

初めてZEBに取組む場合に導入し易いのは、省エネのみで対策できるZEB Readyです。
※ZEB及びNearly ZEBを達成するためには、ZEB Readyの基準を満たすことが必要です。

④ZEB Oriented


延床面積10,000㎡以上の建物が対象のZEBです。
基準値に対する1次エネルギー消費量削減率
・オフィス、学校、工場 40%以上
・ホテル、病院、百貨店、飲食店など 30%以上

つまりZEBの基本は省エネルギーで消費エネルギーを削減し、省エネで削減しきれないエネルギーを創出エネルギーで補填する方向性です。

■どうやってZEBを実現するのか


ZEBは新築でも既存建物の改築でも実現することが可能です。
ZEBを実現するには省エネルギー化することが必要です。
そのためには下記ような方法があります。

・地中熱ヒートポンプシステム
年間を通してほぼ一定の地下の温度を利用して、冷暖房の熱源とします。都内でも地中熱を活用できる場合も多く、電気消費量を最大50%削減した事例もあります。

・井戸水
井戸水を熱源に電気消費量を削減します。

輻射(ふくしゃ)冷暖房というシステムがあります。
輻射パネル内部に通した管に冷水・温水を通すことで、熱エネルギーを輻射熱に変換して室内全体を冷暖房する仕組みがあります。 他の空調装置と異なる点として「風を使わずに空調できる」「床から天井まで室温を均等にできる」「高い省エネ性」などが挙げられます。

ほかにも
・高断熱化、高気密化のために断熱材や構造の改修、遮断シートの活用
・照明設備など各種設備を省エネタイプに更換
・高効率な換気システムの導入 

といったものがあるようです。

■ZEBのメリット

①経費削減

地熱や井戸水の活用、高断熱化や空調システムの効率化によりエネルギー消費量を抑え、太陽光発電で電気代を自給自足することで、経費削減することができます。

②快適性・生産性の向上

高断熱の構造や空調設備の導入により、エネルギー消費量を抑えながら、快適性を向上させることができます。

③企業価値の向上

SDGsやサステナビリティなど企業が環境に配慮する姿勢が求められています。ZEBの取得は社会需要とマッチしており、企業価値の向上に繋がります。

④BCP対策による事業継続性の向上

創出エネルギー設備があれば、災害時(地震や水害)でもエネルギーを自給自足することができます。
創出エネルギーがなくても、限られたエネルギーで運営することが可能です。

■ZEBのデメリット

初期投資額が大きいことや、計画段階では「費用対効果が見えにくい」「設備のメンテナンス費用が増す」「費用負担による賃料転化などはテナントに理解してもらいづらい」などがあります。

ただ国ではZEB化に向けて補助金制度などを推進しており、補助金の内容によっては初期費用を50%程度抑えることも可能なようです。

■病院のZEB認証事例

24時間365日稼働でエネルギー消費量の多い病院では難しいとされてきました。病院における事例がいくつか見つかりました。地方自治体によっては公共施設の新築にあたってZEB ready以上を目標にしているところもあります。


https://www.shimz.co.jp/company/about/news-release/2023/2023002.html

https://www.city.kashiwa.lg.jp/documents/33944/paukome.pdf
⇒「柏市公共施設等低炭素化指針(平成30年5月)」及び「柏市役所ゼロカーボンアクションプラン(2023年2月)」において,公共施設等の新築時(既存建物の建替えを含む)には,原則,ZEB化 (ZEBReady以上)をすることとしているため,概算事業費の項目に加えている

https://www.sg-plaza.jp/about/zebka.php

https://www.sg-plaza.jp/about/zebka.php

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hospital architecture note
mail:07jp1080@gmail.com
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