今年は病院にとってどんなになるのか「医療機能再編の集大成が見えてくる年」
Written by 病院建築note@医療機器出身のゼネコン社員
今回はこれまでnoteに書いた記事のまとめとして、今年の病院市況について書きました。
■はじめに
2024年は医療計画、診療報酬改定などの同時改定を控えています。
今年はオンライン資格確認(マイナ保険証)への対応がありますが、特に大きなイベントはありません。
しかし現行の第7次医療計画最後の年であり、これまでの施策を総括しながら、今後の医療再編の方向性が見えてくる重要な年になります。
■医療施設を取り巻く状況
■物価上昇
例えば食品メーカーであれば、物価上昇分を価格に転嫁できるので、利益を確保することができます。
そのため、需要がある製品の工場であれば、物価上昇局面でも価格転嫁できるためドンドン設備投資や業務改革ができます。
新しい工場を作ったり、効率化のために設備の改修ができます。
しかし、病院の収入は公定価格といって一律に決まっているため、価格転嫁することができません。
そのため利益を確保することが難しい状況です。
■日本の医師不足
日本の医師の数は他の先進諸国に比べて少ない状況です。
そのため、長時間労働せざる得ない状況になっています。
また高齢化も進んでいます。
医師は命に関わる仕事なので、常に100%の仕事を求められます。
体力的にも非常に過酷な労働環境です。
■医師の残業時間規制
2024年からは医師の残業時間規制がスタートします。
元々医師の数も少ないので、「医療を提供するリソース」はより不足します。
働き方改革は待ったなしの状況です。
■コロナ補助金の打ち切り
現在日本の公立病院は7割が赤字です。
しかし、コロナの補助金により、2021年度は平均7億円の黒字になっています。
コロナの補助金は1年後を目途に打ち切りが決まっているため、患者の数が戻らなければ、より深刻な赤字状態になります。
■施策動向のポイント
施策の中でも特に重要な「医療計画」と「診療報酬改定」について扱います。
その前提として、2025年問題と2040年問題について触れておきます。
■2025年問題と2040年問題
施策の目指すところは、増大する社会保障費の削減、ひいては医療費削減です。
■「医療計画」と「診療報酬改定」
医療計画のポイントは「地域医療構想」です。
https://note.com/365days_tensyoku/n/n8eec14fdb0a4
診療報酬改定のポイントは「病床機能分化」「外来機能分化」「働き方会改革・ICTの活用」です。
■地域医療構想とは
病床機能を「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」4つに分けて、2025年における適切な医療提供体制を策定します。
医療機能を見える化するして、数の是正を図ることを目的に平成26年にスタートしました。
都道府県が作成する医療計画において。地域医療構想の記載は必須になっています。
また直近の第8次医療計画における検討会においても「地域医療構想は着実に推進する」とされています。
つまり、病院の再編、統廃合は第8次医療計画でも継続されます。
■診療報酬改定
地域医療構想に基づく機能分化の流れで本来の機能を果たしていない急性期病院は減収になります。
回復期、慢性期も同様です。
■外来機能分化
地域医療における役割の明確化が図られます。
かかりつけ医制度の実装により、「紹介する病院」と「紹介される病院」が明確になるような仕組みになっていきます。
https://note.com/365days_tensyoku/n/n5662f2f5ff95
■働き方改革・ICT
機能分化による効率化とダウンサイジングと並行して、医療従事者の働き方改革をおこないます。
■まとめ 病院営業に与える影響
病院は限られた厳しい予算でしか設備投資できないため、病院コンサルの病院コンサルの重要性が一層高まると思います。
単に建物というハードの提供に留まらず、運営改善から建物を考えないといけません。
病院で働く方々は「いまある建物からできることを考える」ので「建物は全ての前提です」
その前提を良い方向に覆えすことで、いままでできなかったことができるようになったり、
いままで考えもしなかったことができるような「場づくり」が病院建築ではできると思います。
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hospital architecture note
mail:07jp1080@gmail.com
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