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「爆クラは100回なのだクラブ耳クラシック&現代音楽フェス」ソウカツなのだ。

「爆クラは100回なのだクラブ耳クラシック&現代音楽フェス」無事、5/3(火・祝)に大成功のうちに終了しました。渋谷PARCOの屋上とカフェスペースのComMunE、9FのSUPPER DOMMUNEスタジオの3ヶ所、15:30〜23:00、約7時間半の長丁場を泳ぎ切りましたよ!! 昨日、一昨日とさっきまで、マッサージ&酵素風呂&大睡眠で、完全復活したので、4000字の長文、いきまっせー!!!

<爆クラ>主宰・湯山玲子

●イントロ
「湯山さーん、5月で爆クラ100回でしょ? GWにDOMMUNEとPARCOで毎年大型イベントやっているんで、今回はソコに入れといたからさ!」とDOMMUNE尊師である宇川直宏クンに言われたのが、3月半ば。しかし、その段階でこちとら、3/27の東京オペラシティ コンサートホールでの『湯山昭の音楽』直前で何も動けず、着手できたのが4/4頃。つまり、準備期間約1ヶ月を切っている状態だったのです。こういうときに重要なのが、私との関係が深くかつ実力が見えている実行部隊。かつてがっぷり4つに組んだことのある、望月章宏、安藤摂のふたりが出動可能ということでとにかく形にはできる、と踏んだわけです。
現場下見件の打ち合わせ1回、Zoom2回の打ち合わせ、あとは、LINEのグルーブでのやりとりで本番に至るという本当にイマっぽい制作背景は、かつてそれらがなかった時代よりも、格段に効率が良くて質が高かったのでした。そう、ただ今、ニッポンの仕事の実情はコレができる仕事人たちと、未だにフロッピーや判子を使い、大量のプリントを回し、忖度のあまりに複雑&意味不明なコミニュケーションを仕事のノウハウとする人たちに、分断&二分されていくのでしょうね。

●コンテンツ
で、何をやるかですよ。クラシックDJとトークは定例爆クラの骨子なのでそのままの拡大版でやるとしても、この大階段ありのナイスな屋上をどう使うか? 当然、出てくるのが、爆クラ第2の矢、クラシック音楽を野山に放つ「爆クラアースダイバー」でございまして、「5月の渋谷の空に選曲でしょ!!!!」ということで、って言うんで、ひとつ決定。同時に、「このニッポン、楽器に触れるチャンスは学校のみって悲しくない?」を形にする講座というのが浮かんできましたね。そして、もちろん、あの大階段が舞台となる生演奏をいくつか、という全体のプランが出来上がりました。
ボツにしたのは、ダンス×生演奏のコラボ。私自身、近年ダンスについて文章を書くことが多かったので、やってみたい企画ではあったのですが、いかんせん、時間がなさ過ぎる。いやー、形にはすぐなるんですよ。しかし、今までにそういったお手軽なコラボを死ぬほど見てきて、それに対して激怒してきたワタクシとしては、出来具合においてリスクが高すぎる、っていうので、と今回は見送りました。
あと、今までの出演者からの映像メッセージですね。これも、きっと紋切り型のお褒めの言葉の羅列になって、絶対面白くないのでこれもボツ。

●どういうテーマのフェスなのか?
思えば、1回目のワタクシは、クラシックリスナーとしては素人同然。しかし、現在はさすがに100回分のお勉強と、コンサート&録音体験を通して、私なりの批評眼が育ってきている。業界とのお付き合いも含め、ある種発言力もあるわけです。クラシックオタクとも言える、とんでもない鑑賞体験量と見識を持つ、目利きの友人たちも多い。となると、悲しいがな人間、そのクラオタ村に忖度し始めちゃうんですね。そして、もっと深度を深めて「沼」の住人になろうとさえしてしまう。でも、それって、クラシックの新しい聴き方を提案する爆クラとしては、致命傷。だって、「沼」は新しい聴き方何ぞは求めていないのだから。
というわけで、原点回帰として、あえてタイトルに初期に使っていた「クラブ耳」を使ったわけです。クラシック業界の周辺にしっかりと立ち、他の文化ジャンルと社会と時代との交流、クリエイティブ、言論をやっていこうという意思表示のフェス、というのが今回のコンセプト。そして、このテーマは、これ以降、101回目からの爆クラと、その周辺プロジェクトにガッツリ、現れていくと思います。思えばこのコロナ期に、サブカルチャーの一大牽引チャンネルDOMMUNEに本拠地を移したのは、天の采配だったかも。

9階SUPER DOMMUNEは当日夜の部はクラブとして営業した

●して、その内容は?!
①DJ/コンサート部門
爆クラ×DOMMUNEはDJがウリなので、今までのラインナップから最強の3人、指揮者の坂入健司郎さん、音楽評論家の鈴木淳史さん、元ソニーミュージック/プロデューサーの杉田元一さんの三傑に加え、語り入りDJが凄く面白かった作曲家とくさしけんごさんを加えたメンバーによる「クラシック爆音ディスコティーク!!!」をつくってみました。みなさん、テクノ/ハウスでいうならば、イビサのPACHAのオープニングに近い「これが俺流のサウンドメイクだ」という個性激突キレッキレの競演でした。(みなさん、お互いの出方を絶対意識していたと思います)特に大トリの鈴木さんの時に、ドラアグクィーンのジャスミンとトースティーがパフォーマンスで乱入。ドイツの民謡化した陳腐クラシック!!!(なぜ、彼はそんな音源を持っているのか意味不明!!!)という極まった選曲と相まって、その場は、もはや、「女の都」アンド「81/2」のごとくのフェリーニ映画状態に!!!!!!!

DJ:坂入健司郎(右)、湯山玲子(左)
DJ:鈴木淳史
DJ:杉田元一
DJ:とくさしけんご
DJ:鈴木淳史(中央)、ドラアグクィーンのジャスミン(左)とトースティー(右)

さて、大階段でのコンサートは、以下のごとし。3月の『湯山昭の音楽』コンサートの中でダントツ人気だった2曲、男声合唱曲『ゆうやけの歌』と(まさに渋谷の日没時のオンタイムで演奏)、『マリンバとアルトサクソフォーンのためのディヴェルティメント』を前者はTHE LEGEND、後者は池上英樹(マリンバ)と松下洋(アルトサクソフォーン)で演奏していただきました。そして、渋谷の空に響かせたかった音色はオーボエとギター。世界の一流オケで活躍するオーボエ奏者、吉井瑞穂と秋田勇魚(ギター)による、心に突き刺さる爆クラ的サウンド。吉井さんのテレマンは、渋谷の夜空にヨーロッパ中世の時空が突如出現するような、まるでメタバースのような音楽力(というか、それがクラシックの特徴なのだ)。そして、秋田君はなんと、ラテンの雄、バーデン・パウエルの曲をクラシック縛りに入れてきましたよ。荒井和子さん制作の超ロングスカートがまるで、エクトブラズム状態(蜷川幸雄を狙ったんですがねww)

男声合唱とピアノのための「ゆうやけの歌」(詞:川崎洋/曲:湯山昭)
男声オペラユニット「THE LEGEND」、西尾周祐(ピアノ)
『マリンバとアルトサクソフォーンのためのディヴェルティメント』(湯山昭)
池上英樹(マリンバ、右)×松下洋(アルトサクソフォーン、左)
『12のファンタジー 第8番』(テレマン)
吉井瑞穂(オーボエ)
秋田勇魚(ギター)

②爆クラアースダイバーvol.4 「5月の空に自分を溶かしてみるクラシック劇場」とトークショー2発と楽器に触れる講座
昼間のメニューはふたつ。ひとつは、ワタクシ湯山DJによる爆クラアースダイバー渋谷の空篇。刻々と変わる雲の様子をただ見つめて欲しくて、ヨガマット12枚をご用(選曲リストはこの後上げときます)。午後5時の時報を取り入れた、細井美裕+松丸契『5時の鐘 《渋谷》』のコラボレーションの引力も凄かったです。この若きふたり、必ずや世界的に活躍するアーティストになる!!! こういった、音響系のエレクトリックサウンドは、我が爆クラアースダイバー、石黒謙下の最高のサウンドシステムとの相性は抜群でしたね。

「爆クラアースダイバー」(右から モモ、トースティー、湯山玲子)

ゲストにエリイ(Chim↑Pom from Smappa! Group)を迎えたトークは、個人的に非常に面白いものでした。彼女が表現の中心軸に据えている「自由」と現実、そして彼女のにとって血肉化されているキリスト教モラルとの共存と葛藤、そして、クラシック音楽の不自由さから到達する崇高感覚。そして、彼女の「Chim↑Pomはその先を見ている」という発言は、やり尽くされたクラシックの王道曲たちに挑む、演奏家たちにしても同じなのです。そして、フェミニズム方面からは、紅一点問題。母でも、女王でも、マスコットやマネージャーでもない彼女の確固たる立ち位置と組織バランスは、本当に謎でありまして、今度是非、別枠できっちり話してみたい。

トーク・セッション「クラシック音楽の明日はどっちだ?!」
(右から エリイ(Chim↑Pom from Smappa! Group)、湯山玲子)

もうひとつの座談会は、バンドのスピッツ論が話題となった伏見瞬、バンクシーの希少なインタビュアーとしても知られる鈴木沓子、猫町倶楽部の山本多津也で語る「クラシック明日はどっちだ」。対話の中で浮き彫りになったのは、「クラシックコンサートは、もしもそれがカッコ良いのならば、私たちは足を運ぶ!!」というもの。さて、時代と切り結ぶ「カッコ良さ」という教養センスを、ほんの一部を除いて絶望的に持ち合わせていない(というか、内部事情では全く必要されていない)ニッポンのクラシック演奏家と業界にとっては不都合な真実が浮き彫りになりましたよ。

トーク・セッション「クラシック音楽の明日はどっちだ?!」
(右から 山本多津也、鈴木沓子、伏見瞬、湯山玲子)

「楽器と声楽0→1ゼロイチ体験講座」は、ミヤタコーヘイ(チェロ)、大谷舞(ヴァイオリン)、秋田勇魚(ギター)、THE LEGEND(声楽)の面々が、10分500円で楽器と声楽の事始めをご教授。こちらは、さすがにGWの昼間ということで大盛況。子供よりも、大人がトライしているのを見て、クラシックのブルーオーシャンを見つけたり!!! こういった手習いは、SNS時代、どんどんBtoCで広がっていくと思います。

「楽器と声楽0→1ゼロイチ体験講座」
ヴァイオリニスト:大谷舞(右)

●観客たち
「知っている曲もないし、演奏者も知らない」というスタイルが、今回のフェス。要するに「推シ」つまりファンだから、というとっかかりが無いとイマイチ食指が動かない日本のエンタメ客に対しては、非常に分が悪い設定にも関わらず、多くの人が、現代音楽やツウっぽいクラシック音楽の選曲のDJやコンサートを最後まで楽しんでくれたことに驚きました。(関係者だけしか残らない、という予想だったので!)そして、「あのDJ、あの演奏に持って行かれた」と感想を述べてくれたのです。この人たちがじゃあ、オケの定期演奏会に足を運ぶかといえば、それは全く確約できない。しかし、爆クラという「乗り物」があるならば、可能性はある、と思いましたね。

●てなわけで……。
爆クラ101回目は、新たな気持ちで6月スタート。是非、現場の渋谷PARCO9FのDOMMUNEスタジオにお運び下され。ストリーミングも良いけれど、是非、現場の熱気を浴びに来て下さい。
あっ、素晴らしいお写真を取っていただいたのは、元マッキンゼーの敏腕コンサルなのに、写真家でもあり、クラバーでもある池末浩規さん。長丁場、本当にお疲れさまでした。このタフさは一体何なんだ〜!!!

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