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「森の中のピアノ 坂本龍一の音楽とともに」宮崎県・諸塚村×爆クラアースダイバー ご報告です。


「森の中のピアノ 坂本龍一の音楽とともに」宮崎県・諸塚村×爆クラアースダイバー、先の日曜日、無事終了しました(帰ってから、別件が団子状態でやっと今、ご報告できるナリ。ゆえに長文ご容赦)。クラシック音楽を自然の中に放つというコンセプトの爆クラアースダイバーですが、コロナ禍の雌伏を経た第5回目にして、やっと完成形に近い形ができた、という実感あり。やっばり、物事には時間と経験が必要ですねぇ。ちなみに、このノウハウだけで、新書一冊は書けるね。そうそう、日藝や家政の授業でやっとこうかな。

天気にも恵まれ、宮崎、熊本から車で3時間というとてつもない遠路にもかかわらず、県内外から240名以上の来場があって、チケットは事前に完売。森の斜面には座席はなく、廃材を使った丸太小椅子に座っていただくというスタイルで、長尺の全4時間でしたが、席を立つ人はほとんどなく、その表情を伺う限り、音楽とその環境を楽しんでいられた様子。

選曲は坂本作品以外に、生演奏もDJもライヒ、ケージ、メシアン、武満徹などの現代音楽から、ラモー等の中世音楽、マーラーそしてもちろんドビュッシーなどの一般には親しみやすくはない選曲も、こういう特別な環境下では、コンサートになんぞに言ったことの無い人々でもドハマりさせることがでくることを実証しました。

木々のざわめきとウグイスやカラスのご唱和、そして、濃厚な森林の匂い(これ重要!)と音楽と、耳から入る音と遊ぶ自身の「心のおもしろさ」を今回、フルに感じていただいたことと思います。

さて、森の中のグランドピアノというイメージは、すでに一色まことの漫画『ピアノの森』でお馴染みですが、これを現実化するのはなかなかに難しい。まずはピアノを置く場所ですが、これには、事前打ち合わせで喧々諤々の話し合いがあり、お任せしたものの大丈夫なのか? と思いきや、素晴らしい白木の舞台が出来ていてびっくり。盛り土土台の上につくってあるので、ステージ自体がスピーカーのように響くところがミソ。

私たちの仕事環境のアルアルでは、ブレゼンテーションはポジティヴに「盛る」方向が基本です。しかし、村のそれは「盛らない&控え目」方向。本当に大丈夫なのか?! という想いは、予想以外の当日各所に驚きました。前述の廃材丸太椅子も表目を削ってイイ感じの木目をプラスで出してくれてている(これ、持ち帰りオッケーのお土産にしました)。考えてみれば、こういう控え目と謙遜は、いにしえの日本人の美徳のひとつでしたよね。

ピアニストのロー磨秀さんは、付点音符のリズム感にキレが良く、ピアノを求道的ではなく、俯瞰的な表現として捉えられるセンスがある人で、こういったアウェイを愉しめるハートを持っていると見込んでの起用。坂本龍一作品とメシアン、武満徹を交互にしたプログラムの妙と坂本即品が持っているフランス音楽的なセンスを見事に引き出してくれました。戦メリはもちろんのこと、『エナジーフロウ』の中庸感が今回のワタクシ的ハイライトでしたね。キャッチーなメロティが特徴的な曲ですが、全体の印象はといえば、情感が無いプラトー世界。そう、キャッチーの先がねじれて奥深い。この奥行きが坂本音楽の魅力でもありることを再発見しました。

パーカッションアンサンブル、リズムアンド人生(湯山命名!)の、神戸光徳、髙藤摩紀、大塚祥子各氏のマリンバは、もうその倍音が森の空気を震わせることすさまじくて、諸塚の森が一瞬にして、ニニギノミコトが降臨する神代の森(諸塚村周辺は神話の色濃厚なり)に変わっていくがごとくのダイナミズムに溢れていました。

スティーヴ・ライヒの『ナゴヤマリンバ』は、高藤さんのお母様(母娘三代がマリンバ奏者!)がライヒに委嘱した作品で。そのループのレゾナンスは、バリのガムランを髣髴。諸塚の森が、ウブドの森に突然平行移動。この記憶と呼応するパラレルワールド感もまた、今回のコンサートの醍醐味だったですねぇ。

演奏家や業界人が必ず野外コンサートについて言う「PAつけなきゃ、ダメなんじゃないの?」という意見は、今回も完全無視。ワタクシ、南仏のラロックダンデロンの音楽祭に行ったときに、野外での生音の可能性を実感しているので、その紋切り型発言は却下なのです。ワタクシのDJにつきましてはもちろんスピーカーを使いますが、その耳の一方で、楽器の生音を捕まえに行く耳はチューニングできる。もっと言うと、脳が音楽を聞き分けていくわけで、耳は感性に基づして、変化させることが出来るのです。「意思があると、耳が変わる」とこれ、クラシックをはじめ、音楽を聴き込むときの金言ですね。

ワタクシのDJ(語り入り)では、数々の坂本作品をプレイし、『Amore』とコルンゴルドのヴァイオリン協奏曲の官能性、『Solari』の対比はバッハでなくて、ドビュッシーの夜想曲「雲」、などのセットアップで行きましたが、手応えがあったのは、『ラストエンペラー』からの、冨田勲の『新日本紀行』、一中節という、日本とアジアの響きのパートですかね。思いっきり異質な、浄瑠璃の一種である一中節は、まさに諸塚村の村、つまり日本の風土が生んだ音楽だったわけで、プレイした途端、それこそ、森自体が今までクラシック音楽とのフィット感と別世界のとば口が開く。それを、異形と捉えるか、もしくは、安らぎや同質感を感じるのか……。これこそが、坂本さんとよく話していた、「日本のクラシック作曲家の引き裂かれたルーツ問題」でして、その根拠をガッツリ提示できたと思います。

それにしても、映画音楽における坂本さんのオーケストラ曲は、調性音楽の枠の中で思いっきり、メロディーと和声を遊ばせ、「感動」というクリシェを肯定する膂力と官能性がありますよね。フランス音楽を感じさせるその音楽性は、父・湯山昭と本当に似ている。 

今回、DJの方のサウンドシステムのスピーカーにJBL PRX ONEをシステム担当相澤誠嘉さんの尽力で初投入しましたが、これが良いんですよ!! 加えて、モニターのiLoud Micro Monitorも秀逸で、自分がいい音で聴くと、解説トーク力もバリバリ上がるというコトを実感(そりゃそうだ)。これ、自分用に買っとこうっと!! クラシックは中音の豊かさがキモなのですが、そこが細かく華やかに出る。成立からして音楽DNAが強い会社だけのことはありますね。もちろん、その下支えにアコースティックリヴァイヴ製の至宝ケーブルがあってこそなのですが。

今回、そもそも諸塚村との出逢いをつくってくれた嶋啓祐さんは(諸塚村のコンサルとして、食とツーリズムに関わっていらっしゃる)、かつてビストロを経営していたほどの料理達人でして、今回は専属シェフとして、スタッフのまかないとアフターの晩餐会料理を作っていただきました。

これやってみたかったんですよ!! 月夜の下の着席ホワイトリネンテーブルでの晩餐会。と、これも「坂本さんのオゴリで、湯山セレクトの店に行って対談する」というゲーテの連載『男女口論』のオマージュです。こういう演出、坂本さんお好きだったろうな、と。

最初は施設の中での立食パーティースタイルだったのですが、そういうお手軽が嫌でして、広い芝生の部分もあることだし、と、無理な申し出をしたら「その手があったわ」と嶋さんのクリエイティヴ心に火がついちゃったwww。爆クラアースダイバーは、地方に足を運んでいただけるように、地方の食材を楽しむグルメ機会もビルトインしますが、このオリジナルなスタイルが完成しました。

ちなみにパーカッションアンサンブル《リズムアンド人生》のスタイリング、ヘアメイクはワタクシ、自らが行っています。普段、あれだけクラシック演奏家の衣装をこき下ろしているだけに、自分のところに悪口を言われないように、張り切らせていただきました。私物コムデギャルソンコレクションからの、素敵なラインナップ。あ、ちなみにワタクシのスパンコールのトップスは、自然との異化効果。解剖台上のミシンと傘byロートレアモン、と思って下さいましwww。カラスよけにも効果大。案山子かっつーの。

お客さんながら、なんとワタクシまわりのアテンドを買って出てくれた、元ジャパンアーツの重要人物、伊藤亜紀子さんにも感謝。彼女も志を同じくするクラシック音楽界の仲間なので、フリーになられた今後、いろいろとご一緒したいです。

クラシック音楽のフェスは、続けてやることで定着します。来年度もここで開催できれば嬉しいですね。

そして、これ山河があれば、どこでも開催したいので、イイ感じの滝壺、刈り取った後の田んぼ、河原、浜辺や湖畔、雪中広場などなど、出張しますのでお声がけ下さい。

ちなみに、以下の報道が出ています。宮崎放送では夕方1分間の尺をいただいたみたいで、感謝。

MRT宮崎放送
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/mrt/510764
TBS
https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/510764
Yahoo! ニュース
https://news.yahoo.co.jp/.../a5db04ba3579eb517edc8ca6929c...
dmenuニュース(docomo)
https://topics.smt.docomo.ne.jp/art.../mrt/region/mrt-510764

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