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『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』 #290

日本独特の小説の形態と呼ばれる「私小説」。「自伝的小説」と何が違うねん?という気がしますが、区別はあいまいなようです。

作者自身の経験や心理を語るため、客観描写よりも内面的な描写となる小説、ということなのかな。

東京にある本屋さんの店長である花田菜々子さん2冊目の本には、「実録私小説」と書かれていました。「家族とはなにか」について、花田さん自身の経験や考えを綴った本。読んで衝撃、その後にじんわりといろんなことを考えさせられた小説『シングルファーザーの年下彼氏の子ども2人と格闘しまくって考えた「家族とは何なのか問題」のこと』をご紹介します。

タイトルが長い(笑)ので、Twitterでは「#シン家族」のハッシュタグが付いています。

これとは違いますよ。「シン・ゴジラ」。

シンゴジラ1

勤め先の本屋さんへの想い、働くということ、本屋仲間との夜。花田さんの日々を激変させたのは、ゴジラではなく、年下の男性トンとの出会いでした。

「付き合ってください」

真面目な顔をして交際を申し込んできたトンには、息子がふたり。付き合うってなんだろう? おまけに子どもとの付き合い方って? シングルファーザーの悩みって? 花田さんは、迷った時には本に聞け!を実践してきたらしいのですが、「そんな本ないよー!!!」という事態に陥ります。

気分としてはこんな感じだったのでは。

シンゴジラ2

考えるよりも先に現実がやってきているので、脊髄反射で乗り越えていくしかない。「子育てに正解はない」と頭では分かっていても、彼らの生活に突然現れた「おばさん」としての自分と、これだけは守りたいと思うポリシーと、仕事と生活。

中でも、上の男の子が学校の友だちを連れてきた時、「うちの子はなんてかわいいの!!!」と思ってしまうシーンが好きでした。いえ、まだ結婚はされていないし、一緒に暮らしていたわけでもなかったそうなのですが、この感じ。いいなぁ。

「実録私小説」なだけあって、仕事のことにも触れられています。

花田さんは、「ヴィレッジヴァンガード」を辞められた頃の実録私小説『出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと』を出されています。

この本のラストで転職した「パン屋の本屋」を起ち上げた頃のこと、そして現在の勤め先である「HMV&BOOKS HIBIYACOTTAGE」の棚を一から作った時のお話。どちらのお店にも行ったことがあるだけに、ちょっとニヤニヤしながら読みました。

だって、売り場はめっちゃ広いのに、あまりにも何も決まってなかったんです。それがいまはこうなってるのかーと思うと、店舗づくり醍醐味を味わえる気がします。

もっと、理念とかじゃなくて、行ったらただ楽しくて、女子的なテンションが上がって、「こういう店は女友達と来るに限るよねー」みたいな、なんだろうな、そういうの、何っぽさといえばいいのだろう、と毎日のように寝ても覚めてもぐるぐる考え続けて、結局「ルミネ的」「ディズニーランド的」というワードが近いのかなあとぼんやり思う。

仕事の場合は数字目標やミッションなどがきっちり決まっていますが、それを一から作る作業は、自分が求める家族の形を反映していたのではないかなと思うのです。

「HMV&BOOKS HIBIYACOTTAGE」の統一されていないようでコントロールされている「きれいなごった煮」感は、本の中の「シン家族」と似ている気がするから。

こんな感じでしょうか。違うか。

シンゴジラ3

家族の形や、働き方がゆっくりと変わりつつあったところに発生した新型コロナウイルス感染症。変化の速度が倍加して、これからは「普通」のあり方も変わっていくのだと思います。

コレもありなら、アレもあり。「当たり前」が変わっていく様子をリアルで体験できるなんて、そうないことです。存在不明のなにかに不安をつのらせるより、自分が機嫌良くいられるようにしたい。


(※画像は映画.comより)


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