器の小さな男が思い知る力の源泉 映画「いつか家族に」 #617
ちっさいオトコだなー!と、映画を観ながら何度も叫んでいました。
ハ・ジョンウの監督作2作目であり、自ら主演した映画「いつか家族に」は、過去にとらわれ、どんどんと心が狭くなっていく男にイライラ。だけど、家族が家族となっていく姿に、思わずホロリとしてしまう映画でした。
<あらすじ>
朝鮮戦争終戦直後の1953年。現場仕事でなんとか食いつないでいるサムグァンは、ポップコーン売りの美しい女性オンナンに一目ぼれする。オンナンには羽振りのよい恋人の存在があったが、サムグァンは血を売って資金をつくり、オンナンにプロポーズ。結婚して、3人の子どもを授かるが、長男のイルラクが元カレの子だと判明し……。
「神と共に」シリーズなどで「1億俳優」の仲間入りを果たしたハ・ジョンウ。この映画では、情けないほどだらしなく、器の小さい父親を演じています。
それくらい、妻を愛していたともいえるし、長男を愛していたともいえるのだけれど。“家族”で外食しようとなった時、長男だけは親戚のおじさんの家に行くように行ったり、自分のことを「お父さん」と呼ぶなと言ったり。
ちっせーなー!!!
と、笑ってしまうほどです。父の意地悪にもめげない長男がいじらしい。
原作は、中国のベストセラー作家・余 華の『血を売る男』です。
タイトル通り、結婚資金をつくるために血を売り、生活がたちいかなくなった時に血を売り、極貧の中を生き抜く庶民の姿を描いています。
食べ物がなく、夜中に「お腹空いたよー」と泣く三男のため、父が餃子を作ってくれるシーンがあります。もちろん、想像で。野菜を刻み、皮で包み、蒸籠に入れて蒸す。「何個食べる?」なんてディテールにも凝りつつ、手際よく餃子を仕上げるサムグァンのやさしさ。思わずみんなでゴクンとなってしまうのですが、わたしもゴクンとなりました。
「モクパン」として知られるハ・ジョンウだからこそ、このシーンが活きてきます。
「モクパン」とは韓国語で「グルメ番組」のことで、ハ・ジョンウは「哀しき獣」の役柄がとにかく食べまくる役だったため、出演作ごとに話題になるのは「食べるシーン」になってしまうのだとか。
そんなお父ちゃんだけど、どうしても長男のことが受け入れられないのです。そこへ訪れる、家族の危機。
ちっせー男は、立ち上がることができるのか。
サムグァンという男にとって、家族は守るべきものでありつつ、力の源泉でもありました。分かりやすい展開なのに、思わず胸が熱くなる。「家族になりたい」と願う思いに引きつけられました。
サムグァンの仕事仲間には、名優もたくさん出演しています。小ネタがいっぱいなのでご注目ください。
現在、NetflixとAmazonレンタルで配信されています。
https://www.netflix.com/title/80186643
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