寿司屋

自分の仕事を楽しむ勇気 #157

料理人は、とても大変な仕事だと思います。冬でも手がちぎれそうなくらい冷たい水を使わないといけないし、重い鍋を運ぶので力仕事も多い。

でも、この人は本当にこの仕事が好きなんだなーと感じられるお店で食事をすると、気分がいいですよね。

あるエッセイを読んで、その本の著者がいるお寿司屋さんに行ったことがありました。こじんまりした「町のお寿司屋さん」といった風情で、板前さんもおかみさんも、よけいなおしゃべりはしないのに温かい雰囲気で。ちょっと緊張してしまうお寿司屋さんのカウンターも、そのお店ではゆったりくつろいで食べることができました。

エッセイを書いたのはおかみさんの佐川芳枝さん。「寿司屋のかみさん」シリーズとして、お寿司屋さんの裏話を紹介しています。

マンガ版も出版されていました。

お寿司が好きだからという理由で、寿司職人とお見合いすることになった芳枝さん。カウンターに座り、「せっかくだからお寿司も食べていってよ」と言われてパクパクパクパクパクパク……。

「お嬢さん、寿司は好きですか」
と聞かれて、
「はい、大好きです」
と答える屈託のなさ!

そうしてその板前さんと結婚することが決まります。昭和の時代とはいえ、おおらかに結婚を決めちゃうんですよね。

ご主人は修行を始めた時期が遅かったそうで、修業時代は先輩からイヤミを言われたりもしたのだとか。それでも腐らずに、先輩の仕事を盗んで覚え、教えてもらえないことは本で勉強し、「あいつ、いつ辞めるかな」と言われながらも乗り越えて独立。この時期の体験は技術だけでなく、職人としての心構えを作ってくれていたようです。

本を読んでいて感じるのは、おかみさんは本当にお寿司が好きなこと。お店にも、ご主人の仕事にも誇りを持っていることが伝わってきます。

ライバル店や粋ではないお客さん。客商売ですから楽しいことばかりではありません。それでも「お寿司屋さん」を楽しむことができるのは、仕事にプライドがあるからだと思うのです。

ネタの仕込みとは?
なぜ、同じマグロでも値段が違うのか?
お寿司の値段はどうやって決まるのか?

こうした、ほかでは知ることのできないお寿司屋さんネタも満載のエッセイです。仕事への向き合い方に迷った時は、ぜひ。

読むとお腹すいちゃうけど。

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