映画「モテキ」をカラオケで体験してみた #410
映画を観て、その一場面をやってみたくなること、ありませんか?
街クリ映画部の週一イベント「木曜会 on Netflix Party」で映画「モテキ」を観て以来、わたしにはとてもやってみたいことがありました。
「ひとりカラオケ」を体験したい!
「木曜会 on Netflix Party」とは、わたしも映画コラムを書かせてもらっている「街角のクリエイティブ」が運営するコミュニティ「街クリ映画部」のオンラインイベントです。「Netflix Party」というGoogle Chromeの拡張機能を使って、映画を共同視聴するパーティーなんです。
街クリライターの金子さん(@MondettaYuki)のnoteに、その様子が詳しく紹介されています。
8月の始めに「長澤まさみ美脚祭り」と題して「モテキ」を観た際、麻生久美子さん演じるるみ子が酔っ払ってB'zを熱唱するシーンがとても印象的だったんですよね。もちろんPerfumeも踊りたいし、「こなぁぁゆきぃぃぃ」もやりたい。
せっかくの夏休みだもん。人生初の「ひとりカラオケ」に挑戦してみようじゃないか!!!
というわけで、本日はその様子をレポートします。
映画「モテキ」
人気コミックがTVドラマとなり、その後の物語として映画化された「モテキ」。監督はドラマ版の演出も手がけた大根仁監督です。三十路前のモテない男・藤本幸世に訪れた「モテ期」を、当時話題となったJ-POPと共に描いています。森山未來演じる幸世の前に現われたのは、長澤まさみ、麻生久美子、仲里依紗、真木よう子といった美女軍団。
街クリ映画部の「木曜会 on Netflix Party」で観ていた時には、こんな意見も出ていました。
みんな、言葉になってません。
この映画は在日ファンクやTM NETWORK、ももいろクローバー、星野源といった公開当時人気だった曲がたくさん使われています。バナナマンや杉作J太郎もカメオ出演。Perfumeのダンスシーンもありと、とってもお得な構成なんです。
中でも、麻生久美子さん演じるるみ子が、幸世につれなくされ、ひとりでカラオケに行くシーンがとてもよかった。るみ子のあまりの「重い女」感に、「Netflix Party」でもひとしきり盛り上がったので、できればこれを再現してみたい。みんなに「ホラー」と呼ばれたシーンなのに、なんでそこ?という気もするんですが。
ただ、わたしにはひとつ大きな問題がありました。
カラオケって10年近く行ってない……。
人生初のひとりカラオケへ
数年前まで、わたしはカラオケ雑誌の校正を請け負っておりました。「こんな機能が誕生したんですよ~」という記事の意味がサッパリ分からず戸惑うことばかり。
「ちょっとはカラオケ行って勉強してください!!!」
と、編集部の人に怒られてばかりいました。それでも行かなかったくらい、カラオケって苦手だったんですよね。
体力が持つのか。
おまけにひとりで行くなんて。
どうやって受付するのか分からない。
おまけに夜には大切な会食があります。
絶対に喉をつぶしてはならない。
(やっぱ止めとこうかな……)という気分になりつつ、気分を上げるためにとにかく支度をしました。ほら、遠足って前の日が一番楽しいじゃないですか。
カラオケに行くというのに、この本の多さ。途中で体力が尽きることを見込んでいるのが見え見え。手書きの筆記体を練習しているノートまで持っていくという意味不明な荷物です。重いのにiPadまで持って行くって(これは仕事用)。ええい、除菌スプレーとのど飴も持って、いざ出発!
お店にはまったくこだわりがなかったので、「看板を見た記憶がある」という理由だけで駅前に向かいました。
でも、いざとなると中に入れない……。
夏休み期間中とはいえ、平日の朝っぱらからカラオケに来るなんてヒマなおばさん丸出しです。事実そうなんですけど、やっぱり恥ずかしい。帰りたい。
3回くらい前を通り過ぎてウロウロしていたところ、ひとりのおじさんが、ひとりで入っていきました。
ひとりでカラオケする人がいる!!!
おじさんに勇気を得て、ついに入店。パックの説明やドリンクの説明をいっぱいされましたが、さっぱり分からないので、言われるままに3時間のコースを選びました。
「105号室になりま~す!」
「え、どこですか?」
日本語の不思議にはそっと目をつぶり、迷いながらようやくお部屋に入りました。ひとりカラオケというと、電話ボックスのような狭い空間に押し込まれるのかと思っていたのですが、こちらは少し広め。これなら3時間くらいがんばれそうです。
除菌マークもしっかり。
いきなりB'zは喉がつぶれる気がしたので、まずは数少ないレパートリーの中からゆっくりウォーミングアップをすることにしました。
この日、わたしが気をつけていたのはこちら。
・マメに消毒する
・腹式呼吸で歌う
・疲れたら止める
なにを当たり前のことをとお思いでしょうが、関西人のつらいところは「元を取らなきゃ!」と考えてしまうところなのですよ。3時間のコースということは、3時間でうま味をしゃぶりつくさなければなりません。
体力<<<元を取る
という思考になりがちな自分を戒めるため、「疲れたら止める」を最初に決めておく。そして喉を守るため、「腹式呼吸で歌う」。元役者として、昔すぎる昔にとった杵柄を手に乗りきるぞ! オーッ!という意気込みで、人生初のひとりカラオケがスタートしました。
「モテキ」をカラオケで堪能したいのに……
そもそもわたしがカラオケにあまり行かない理由は、3つありました。
ひとつは「なぜわたしが機械に合わせなければならんのだ!」と思うからです。単なるワガママ。
2つめは、「他の人と好きな曲が合わない」から。
ええ、わたしはずっと「中島みゆき道」をひた走り続けてきたので、みゆきさんの歌なら歌えます。
でも。
どう考えても、カラオケで盛り上がる曲ではないのですよね。るみ子が「みゆきさんしばり」だったらよかったのに。
また、最近わたしが好きなのは「YB」という韓国のロックバンドなのですが、K-POP全体やアイドルグループについてはよく知らないので、誰にも・誰とも共感してもらえない……。
そんなさみしさが。気遣いが。ひとりカラオケなら。
不要じゃないですか!!!
そんな当たり前のことに気がついてから、みゆきさんの曲を上から順番に歌い、好きな曲は3回歌うというウォーミングアップ。1時間が経過したところで、すっかり喉もあたたまりました。
(でも、すでにちょっとお腹が痛いかも。がんばれ、腹筋)
不安を感じつつ、いよいよカラオケ版「モテキ」のスタートです。満を持してB'z「ultra soul」を入力。
どれだけがんばりゃいい 誰かのためなの?
分かっているのに 決意は揺らぐ
結末ばかりに気を取られ
この瞬間を楽しめない メマイ
「♪...............................................................」
続いてPerfumeの「Baby Crusing Love」を入力。
恋の運命は 愛の証明は
2人の航海と何かが似ているかもね
「♪...............................................................」
わたしがカラオケにあまり行かない理由の3つめ。
ほとんどのJ-POPは、サビしか知らない!!!
まさしく「誰のためにどれだけがんばりゃいい」んだ、「メマイ」がして「決意は揺らぐ」事態です。
なんも歌えねぇーーー!!!
それでも、ももいろクローバーの「走れ!」や、大江千里の「格好悪いふられ方」 のサビだけを熱唱。三木道三の「Lifetime Respect」は大好きな曲なのでなんとか歌える。
でも速すぎる! 口が回らない!
わたしは普段、校正の仕事をしているのですが、この仕事のいいところはひとりで黙々とできるところです。いまは自宅で仕事をしているため、ミーティングのない日は誰とも話さずに終わることもあります。
つまり、喉の筋肉がなまっていた!!!
思わぬ体力の衰えを実感してしまいました。
調子に乗ってひとりカラオケを堪能
竹内まりやの「カムフラージュ」はゆっくりめの曲調なので安心。JUDY AND MARYの「LOVER SOUL」を「フンフンフン♪」と歌ったところで、待ちに待ったレミオロメンの「粉雪」へ!
外は30度を超えてますが、わたしの心は白く染められました。大満足。
すっかり調子に乗ってきたので、大根版「SUNNY 強い気持ち・強い愛」の挿入歌にも手を広げることに。音楽プロデューサーとして小室哲哉さんが参加しているだけあって、90年代のJ-POP満載の映画です。
久保田利伸「LA・LA・LA LOVE SONG」、trf「survival dAnce~no no cry more~」、 PUFFY「これが私の生きる道」なんて、なつかしー!と思いながら熱唱。もちろんサビだけ。主題歌の小沢健二「強い気持ち・強い愛」を歌っていたらラストシーンが目に浮かびました。
ここまで来たら韓国版「サニー 永遠の仲間たち」も歌わないと。Cyndi Lauper「Time after Time」、Boney M「Sunny」。
やっぱり「エヴァンゲリオン」もいっとかないと。
楽しい!!!
ついに踊りながら歌うという技までできるようになりました。
どんどん予約していた時に、ふと「Foreign songs」というアイコンを発見。押してみると、韓国の曲も入っているではないですか。わたしの好きな韓国のロックバンド「YB」もある! 上から順番に3周しました。
驚いたのは、韓国ミュージックの動画はちゃんと韓国の街角を映していたこと。ホームの看板がハングルなのが見えますかね?
そうしてやってきた、「終了10分前ですー」のコール。
カラオケって、ここからが大事ですよね。終了時間ぴったりに終わらせられるか。タイミングをはかりながら、どの曲をトリにするか。
「モテキ」を歌いに来たはずなのに、気分はすっかり「SUNNY」だったので安室ちゃんを歌いたい。でもきっとサビしか歌えなくて不完全燃焼になる。
どうする!?
そこで、まずは安室奈美恵「SWEET 19 BLUES」を歌い、最後はやっぱりみゆきさんで締めることに。選んだのは名曲「ファイト!」です。
勝つか負けるかそれはわからない
それでもとにかく闘いの
出場通知を抱きしめて
あいつは海になりました
ファイト! 闘う君の唄を
闘わない奴らが笑うだろう
ファイト! 冷たい水の中を
ふるえながらのぼってゆけ
この時、なぜか自分の中で、何かが爆発し、それがグググググーッと込み上げて来ました。ヤバい。
わたしはいま、闘いの出場通知を熱く抱きしめているゾー!
闘うわたしの唄を、闘わない奴らが笑っているやんかー!
チクショー! それでもふるえながらのぼってみせるで!
ファイトだー!!!
泣きながら全力で歌うわたし。なんと最後の最後に。
るみ子感満載やないか!!
結局、一度も持参した本を手に取ることなく、仕事のチャットも無視。3時間で54曲を歌い、人生初のひとりカラオケは幕を閉じたのでした。
ひとりカラオケのススメ
わたしは出不精の面倒くさがりなため、よほどの用事がなければ外出しようと思わないタイプです。なのにひとりでカラオケに行こうと思ってしまうなんて、えらいことを思いついてしまったと、人生初の体験におびえていました。
それでも、やってみたらなんとかなった。誰かの目を気にしなくてもいいので、下手でも平気。気を使う必要もないので、好きな歌の好きな一節だけ歌うというワガママもできる。この自由さ。
ひとりカラオケ最高やん!
今回、「モテキ」というひたすら楽しい映画を観て、しかも「木曜会 on Netflix Party」という映画好きの仲間と盛り上がったおかげで、人生初の体験をしてみようという“勢い”をもらいました。
映画公開時に劇場で観てはいましたが、そしてその時も十分楽しみましたが、やっぱり他の人と一緒に観ると違うんですよね。観ようと思っていたのに見逃した映画や、自分では選ばないような映画との出会いもありますし。
そんな「木曜会 on Netflix Party」がちょっとでも気になったら、ぜひポチッとしてみてください。
今回のわたしのように、映画のOSTをまとめて歌いたい!という需要は多いんではないかと思います。でも、アニメの項目はあったものの、「モテキ」のような音楽映画の曲があまりにも少ない。ちと悲しい。カラオケ業界の方、これ作ってくださいー!
最後に、人生初のひとりカラオケで得た教訓はふたつ。
・事前に曲を勉強していくこと
・体力をつけておくこと
喉はつぶさずに済みましたが、疲れ切ってしまってひたすら眠い。それでも、なんてさわやかな疲れ!
あんなに苦手だったカラオケですが、またやりたいと思えました。今朝は全身がどんよりと筋肉痛ですけど。充実した「あたいの夏休み」でした。
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