言葉では語られない心の機微を読む 『蒼龍』 #201
時代小説を読んでいると強く感じることがあります。
なんでこんなに説明しないんだろう。
商いが舞台なら主人と奉公人、武家のお話なら殿さまと家来、それ以外にも長屋のまとめ役、お隣さんなど、小説の中ではさまざまな人たちとの交流が描かれますが、「行動の理由」を言葉で説明しない登場人物が多いんですよね。
物語の最後になって「あぁ、そういうことだったのか」と感じるものもありますが、想像するしかないものもあります。「慮る」能力は、時代小説の方が鍛えられるのかもしれない。
山本一力さ